著者
中島 小乃美
出版者
佛教大学宗教文化ミュージアム
雑誌
佛教大学宗教文化ミュージアム研究紀要 (ISSN:13498444)
巻号頁・発行日
no.15, pp.47-64, 2019-03-30

チベットの宗教文化が捉える命と、病と、治療を概観し、そこからホリスティックということについて考察した。『大日経』では、悟りに至りその業寿を滅したあとも再び生を与えて衆生済度に赴くことを説いている。そしてA字(阿字)という種字を観想し、身体に布置することで命をもつ我が身を空じ、仏となると捉えることから、仏教における命とは仏果を得て、衆生済度に向かうその連続性としての命であり、仏の寿命である。またチベット医学が病と命に向き合い、さらに鬼神による病に対応するためにシャーマンや占星術なども含めて命を脅かす存在と向きあっている様子から、現在、ホリスティックと言われる全体性とは、この文化においてマンダラの宇宙観や、悟りを得て仏となり衆生済度に向かう存在としての命と、鬼神の調伏までを含む一つの世界観で貫かれている。このような営みの中で命をとらえることがホリスティック(全体性)なのではないかと考察した。チベット仏教ラダックホリスティックケア伝統医療
著者
門田 誠一
出版者
佛教大学宗教文化ミュージアム
雑誌
佛教大学宗教文化ミュージアム研究紀要 (ISSN:13498444)
巻号頁・発行日
no.13, pp.1-44, 2017-03-30

魏志倭人伝には倭人社会の宗教的側面を示す記事があり、そのなかには卑弥呼の用いたという鬼道がある。鬼道に関しては、多くの言及があるが、本論では基本的な方法に立ち戻って、近来の中国における考古学的知見と中国史書・文献の用例と用法を参照し、『三国志』編纂時点での鬼道の認識を検討した。その結果、中国の鬼道としての五斗米道そのものかあるいは同時期に中国で展開した呪術的習俗をともなう信仰が実修されていた考古学的痕跡は顕著ではないが、伝統的な礼制による儒教的体制に対して鬼道の語が用いられていることから、鬼道が中華世界の礼俗とは相いれない祭祀習俗であり、とくに統治する者にとっては、自己の存立を否定するものとされていたという同時代的認識を示した。
著者
渡邊 忠司
出版者
佛教大学宗教文化ミュージアム
雑誌
佛教大学宗教文化ミュージアム研究紀要 (ISSN:13498444)
巻号頁・発行日
no.15, pp.1-20, 2019

近世の町と村は一般的には生産地と消費地の関係にあり、村が奉公人・弟子などの出身地、町がその受入地、また商業や流通構造の展開に伴う人・物の流入・移入も村から町への一方的な流れとして見られるが、むしろ相互補完的であった。特に市域の拡大が町続在方(領)を創出し、在と町の相互的な構造変化を促したことを、百姓の町方への転居と帰村、大工や小売商人らの町・在間での生活記録等を用いて改めて検証する。町続在方(領)近在請酒商人畑場八ヶ村大坂大工
著者
網島 聖
出版者
佛教大学宗教文化ミュージアム
雑誌
佛教大学宗教文化ミュージアム研究紀要 (ISSN:13498444)
巻号頁・発行日
no.15, pp.1-26, 2019

本稿では『善光寺道名所図会』を取り上げ、その取材・収集に協力したと考えられる書肆高美甚左衛門を中心とする地域文人ネットワークに注目して、信州松本町と一体となった周辺地域の地誌記述を検討し、松本町と周辺地域とを結びつけた地域認識について考察した。その結果、松本地域文人の人脈が城下町松本町を拠点とした街道に沿って周囲と結ばれており、その性質も流通に関する問題に規定されていることが判明した。『善光寺道名所図会』に記載される範囲としては、北は信濃大町周辺まで、東は千曲川西岸稲荷宿まで、西は橋場までの範囲となっていることを示した。地誌松本町地域文人善光寺道名所図会高美甚左衛門
著者
長谷川 奨悟
出版者
佛教大学宗教文化ミュージアム
雑誌
佛教大学宗教文化ミュージアム研究紀要 (ISSN:13498444)
巻号頁・発行日
no.15, pp.65-82, 2019

本稿では、現在の三木市(三木市民)にとって顕彰すべき「過去の物語」とみなされている義民伝承について、現在の「義民祭」を通じた顕彰行為の実践に対する様子を報告した。そして、地域誌としての義民伝承の歴史的経過への考察をおこない、現在のように語られるようになった地域的背景について明らかにした。そのうえで、三木の義民伝承がになってきた役割について検討している。三木市義民伝承過去の物語義民祭義民碑