著者
長光 太志
出版者
佛教大学総合研究所
雑誌
佛教大学総合研究所紀要 (ISSN:13405942)
巻号頁・発行日
vol.25, pp.49-55, 2018-03-25

本研究ノートでは,日本の大学においてALが推進される経緯を,「大学の大衆化」と「能力観のポスト近代化」という大学を取り巻く 2 つの変化に注目して整理する。そこから見えて来るのは,ALという教育手法が,これらの変化への対応策であることを期待された教育手法だったという事である。ただし,ALの発祥の地であるアメリカと同様の社会現象である「大学の大衆化」と,日本独特の文脈を色濃く持つ「能力観のポスト近代化」とでは,ALへの期待が微妙に異なる。特に後者の期待には,ALに対する幾つかの仮定が差し込まれており,この仮定の真偽を巡る研究が,日本では,まだ進んでいない。本研究ノートは,こうした現状を指摘するものである。アクティブラーニング大学の大衆化能力観のポスト近代化大学生のトランジション
著者
武内 一 佐藤 洋一 山口 英里 和田 浩
出版者
佛教大学総合研究所
雑誌
佛教大学総合研究所共同研究成果報告論文集 (ISSN:21896607)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.173-207, 2017-03-25

われわれは,2014年度に 3 つの多施設共同研究をおこなった。1つは新生児をもつ家族の生活実態調査である。貧困層群の特徴として,(1)妊娠中では,貧血・糖尿傾向・性感染症・喫煙が有意に目立っていた。(2) 1か月健診時には,育児不慣れ・精神疾患の合併・パートナーからの DV の比率などによる問題が際立っていた。(3)妊婦の背景には,10代での妊娠・人工妊娠中絶・一部屋での生活など狭い住居環境・非正規就労・高校中退などの低学歴・妊娠判明後の喫煙といった特徴が明らかとなった。 さらに,11医療機関における入院児を対象とした調査と,54医療機関に外来受診した小・中学生を対象とした調査を実施した。これら 3 つの調査を併せてみると,(1)世帯収入の中央値でみた場合,両親がいる世帯の所得が400-500万円台であるのに対して,母子世帯では200-250万円台とその半分に過ぎない。(2)年間所得が200万円未満世帯の子どもの数は一人が過半数で,生活が苦しいと 2人目以降は安心して育てられない現実がある。(3)年間所得150万円未満世帯はすべて生活保護基準未満での生活だと推測され,この収入以下から一部屋での生活の比率が急上昇する。しかし,(4)実際生活保護受給の割合は 2 割にも満たない,こうした事実が明らかとなった。また,(5)年間所得200万円未満の貧困世帯の3分の1は,自分たちの生活は「ふつう(あるいはそれ以上)」だと感じている事実も明らかとなった。