著者
長光 太志
出版者
佛教大学総合研究所
雑誌
佛教大学総合研究所紀要 (ISSN:13405942)
巻号頁・発行日
vol.25, pp.49-55, 2018-03-25

本研究ノートでは,日本の大学においてALが推進される経緯を,「大学の大衆化」と「能力観のポスト近代化」という大学を取り巻く 2 つの変化に注目して整理する。そこから見えて来るのは,ALという教育手法が,これらの変化への対応策であることを期待された教育手法だったという事である。ただし,ALの発祥の地であるアメリカと同様の社会現象である「大学の大衆化」と,日本独特の文脈を色濃く持つ「能力観のポスト近代化」とでは,ALへの期待が微妙に異なる。特に後者の期待には,ALに対する幾つかの仮定が差し込まれており,この仮定の真偽を巡る研究が,日本では,まだ進んでいない。本研究ノートは,こうした現状を指摘するものである。アクティブラーニング大学の大衆化能力観のポスト近代化大学生のトランジション
著者
長光 太志
出版者
佛教大学社会学研究会
雑誌
佛大社会学 = Studies in sociology (ISSN:03859592)
巻号頁・発行日
no.41, pp.17-29, 2017

本研究では,私立大学社会学部の卒業生を対象としたアンケート調査を実施して,就活サイトを活用する学生の実態を検討する。具体的には,従属変数に就活サイトの活用の度合を測る変数を用い,独立変数に「就活取組」「就職先の選択基準」「就活姿勢」「属性」といったカテゴリーに対応する変数を用意する。分析に用いる主たる手法は,重回帰分析と階層的重回帰分析である。分析の結果,「就職活動全般に積極的に取り組む学生」や「就職先の選択基準が自己利益のみで構成されている学生」あるいは「自己PRや志望動機を割増しして表現する学生」が就活サイトを活用する傾向があることが示された。本論では,ここから,現在の就活サイトが,採用活動を行う立場から見た場合に,順機能と逆機能が併存する矛盾した構成になっている可能性を指摘した。就活サイト順機能逆機能
著者
大束 貢生 長光 太志 井上 未来
出版者
佛教大学
雑誌
社会学部論集 (ISSN:09189424)
巻号頁・発行日
vol.41, pp.75-88, 2005-09-01

この小論の目的は,近年重要と考えられているボランティア活動やNPO・NGO活動などの自主的な市民活動の可能性を探るために,「子育てサークル」Aを事例として検討することにある。Aの設立者と参加者に自由記述およびインタビュー調査を行った結果,活動内容(理念),運営手段(場所の確保・毎回の参加・掲示板・勧誘・連絡係)双方とも,設立者の役割は大きいと考えられる。しかし,参加者はサークルの活動内容(理念)に共感しており,運営についても消極的な姿勢だけではないところが見受けられる。
著者
山本 奈生 長光 太志
出版者
佛教大学
雑誌
社会学部論集 (ISSN:09189424)
巻号頁・発行日
vol.60, pp.61-75, 2015-03-01

本稿では個々の大学生が就職活動の経験を経てどのように内定先を決定し,その進路を受容しているのかを問題とする。すなわち就職活動の厳しさや「自己分析」の必要が語られる昨今の状況を,大学生諸個人はどのように経験し,最終的な進路へと至っているのかを分析した。ここで用いるデータは私立大学の卒業生に対するインタビュー・データである。本研究では社会学的な就職活動研究における,個人的な範疇の社会関係資本に関する議論や,就職活動過程の研究を踏まえながら,インフォーマントらは自身の進路をどのような合理性をもって選び取ったのかを明らかにする。本研究の含意としては社会関係資本の多様性が,就職活動の私的経験を相対化する作用を持つ可能性が示唆されたことや,それほど「自己分析」に拘泥せずに,過去の労働経験など具体的な経緯から内定先を決定する学生の範型が示されたことにある。