- 著者
-
杉本 光公
- 出版者
- 信州大学人文社会科学研究会
- 雑誌
- 信州大学人文社会科学研究 (ISSN:18817858)
- 巻号頁・発行日
- no.3, pp.34-43, 2009-03
近年,大学生の運動不足と,メタボリックシンドロームが深刻化してきている.特に大学生の体力低下が危惧されている.これらに対しては運動を定期的に行うことが有効であると考えられる.しかし運動を習慣化することは容易ではなく,その方策に苦慮しているのが現状ある.そこで本研究は, 運動をより楽しく,また,手軽でかっこ良く運動を行えるiPod nano およびNike Sports kit を用いたジョギングアンドウォークの授業が,学生の運動習慣獲得にどのような影響を与えるかを明らかにし,その有効性を検証した.被験者は平成20年度のジョギングアンドウォークの授業の受講者28名(男子15名,女子13名)であった.期間は平成20年4月〜7月の3ヶ月間.授業回数は15回であるが.最初のガイダンス,iPod の使用方法の説明で2回講義を行っているので,実技回数は13回であった.また,最初に実技の授業にシャトルランテスト,体重,体脂肪を測定し,最後の授業で,同じくシャトルランテスト,体重,体脂肪を測定した.授業前後の検定は対応のあるt 検定を用いた.男女の特徴をみるために,男女別でも比較した.有意水準はすべて5%とした.また,学生の意識を調査するために授業の期間中にアンケート調査を行った.これらの結果から,ジョギングアンドウォークの授業で,体重,体脂肪が有意に減少し,全身持久力が向上した.また運動習慣獲得の効果に関しては,非常に多く学生が,運動を週に1回以上行うようになり,高い効果を示した.さらに音楽を聴きながら運動を行うことで,運動のもつ「しんどい」や「面倒くさい」といったマイナスのイメージが払拭され,学生の運動習慣獲得のためのハードルを下げることが示唆された.さらにインターネットを使った情報共有機能が,学生のモチベーションを高め,運動習慣獲得にプラスに働いていることが示唆された.今後の課題としては,さらに多くの学生を対象に効果を検証すること,また高学年まで運動習慣が持続するか調査することが必要であると考えられる.いずれにせよ,大学生の運動習慣を改善することは急務であり,カリキュラム,教育組織,運動施設を含めた総合的な取り組みが必要であると考えられる.