著者
谷川 真理 内山 巌雄 野瀬 三佳 東 賢一
出版者
公益財団法人ルイ・パストゥール医学研究センター
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2017-04-01

本研究では化学物質過敏症(MCS:Multiple chemical sensitivity)患者と健常者の多項目免疫機能検査を測定し、比較検討した。MCS患者群と対照群から採血し、一般検査、リンパ球サブセット解析と12種のサイトカイン産生能を測定した。結果はMCSでIFN-γ産生能が有意の低下を認め、他項目では差がなかった。IFN-γは、自然免疫系と獲得免疫系の両方に関与するTh1系サイトカインで、MCSではTh1系の反応に、なんらかの不全がある可能性が示唆された。血中IgE, コーチゾールは異常なく、Th2系サイトカイン産生能にも差がないことから、MCSはアレルギーを介さない病態と考える。
著者
内山 巌雄 谷川 真理 東 賢一 東 実千代 青野 明子 萬羽 郁子
出版者
公益財団法人ルイ・パストゥール医学研究センター
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2020-04-01

化学物質に対する過敏状態の解明は、臭い負荷による脳機能イメージング研究によって、外的ストレスに対する大脳辺縁系を介した作用機序に焦点があてられてきた。本研究では、随意的な眼球運動に関与する大脳の領域が前頭前皮質の前頭眼窩野にもあり、サルの実験では嫌悪刺激への応答がみられることに着目し、臭い負荷による脳機能イメージング研究で得られた知見をもとに、臭い負荷による滑動性追従眼球運動(SPEM)検査との関係を把握する。SPEM検査は簡易であることから、簡易検査法の開発に寄与する基礎データを得る。また、認知(行動)療法や運動療法等を含む介入効果についても臭い負荷SPEM検査法で客観的に検証する。
著者
内山 巌雄 谷川 真理 東 賢一 東 実千代 萬羽 郁子
出版者
公益財団法人ルイ・パストゥール医学研究センター
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2016-04-01

ベースライン調査として、化学物質過敏症の患者群10名および性別と年齢を患者群と一致させた健常者群9名に対し、においスティックによる臭い負荷を行い、負荷時および負荷前後の前頭前皮質の脳血流状態を近赤外光脳機能イメージング装置で計測した。また上記検査と同時に末梢動脈血酸素飽和度、自律神経状態をモニタリングして計測データを得た。その後の1年間のうちの約2ヶ月半、これらの患者群のうち6名に対してLカルニチンを投与、1名は酸素療法を試み、3名は非介入群とし、同様の嗅覚負荷検査等を実施した。その結果、総じて化学物質過敏状態について、明白な改善はみられなかったが、比較的症状が重い一部では改善傾向がみられた。