著者
加藤 貴彦 藤原 悠基 中下 千尋 盧 渓 久田 文 宮崎 航 東 賢一 谷川 真理 内山 巌雄 欅田 尚樹
出版者
一般社団法人日本衛生学会
雑誌
日本衛生学雑誌 (ISSN:00215082)
巻号頁・発行日
vol.71, no.1, pp.94-99, 2016 (Released:2016-01-30)
参考文献数
10
被引用文献数
1 3

Multiple chemical sensitivity (MCS) is an acquired chronic disorder characterized by nonspecific symptoms in multiple organ systems associated with exposure to low-level chemicals. Diagnosis of MCS can be difficult because of the inability to assess the causal relationship between exposure and symptoms. No standardized objective measures for the identification of MCS and no precise definition of this disorder have been established. Recent technological advances in mass spectrometry have significantly improved our capacity to obtain more data from each biological sample. Metabolomics comprises the methods and techniques that are used to determine the small-level molecules in biofluids and tissues. The metabolomic profile—the metabolome—has multiple applications in many biological sciences, including the development of new diagnostic tools for medicine. We performed metabolomics to detect the difference between 9 patients with MCS and 9 controls. We identified 183 substances whose levels were beyond the normal detection limit. The most prominent differences included significant increases in the levels of both hexanoic acid and pelargonic acid, and also a significant decrease in the level of acetylcarnitine in patients with MCS. In conclusion, using metabolomics analysis, we uncovered a hitherto unrecognized alteration in the levels of metabolites in MCS. These changes may have important biological implications and may have a significant potential for use as biomarkers.
著者
谷川 真理 内山 巌雄 野瀬 三佳 東 賢一
出版者
公益財団法人ルイ・パストゥール医学研究センター
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2017-04-01

本研究では化学物質過敏症(MCS:Multiple chemical sensitivity)患者と健常者の多項目免疫機能検査を測定し、比較検討した。MCS患者群と対照群から採血し、一般検査、リンパ球サブセット解析と12種のサイトカイン産生能を測定した。結果はMCSでIFN-γ産生能が有意の低下を認め、他項目では差がなかった。IFN-γは、自然免疫系と獲得免疫系の両方に関与するTh1系サイトカインで、MCSではTh1系の反応に、なんらかの不全がある可能性が示唆された。血中IgE, コーチゾールは異常なく、Th2系サイトカイン産生能にも差がないことから、MCSはアレルギーを介さない病態と考える。
著者
東 賢一
出版者
一般社団法人 室内環境学会
雑誌
室内環境 (ISSN:18820395)
巻号頁・発行日
vol.21, no.2, pp.113-120, 2018 (Released:2018-08-01)
参考文献数
35
被引用文献数
3 1

1970年に制定された建築物衛生法の二酸化炭素の環境衛生管理基準は,1000 ppmを超えると倦怠感,頭痛,耳鳴り,息苦しさ等の症状が増加することや,疲労度が著しく上昇することに基づき定められたものである。二酸化炭素に関する近年の複数のエビデンスが,500~5000 ppmの範囲における二酸化炭素濃度の上昇と生理学的変化(血液中の二酸化炭素分圧や心拍数の上昇等)を確認している。また,1000 ppm程度の低濃度域におけるシックビルディング症候群(SBS)関連症状については,多くの疫学研究で報告されている。ヒトにおける生理学的変化は二酸化炭素によるものと考えられるが,低濃度域におけるSBS症状については,他の汚染物質との混合曝露による影響の可能性が高いと考えられる。近年,1000 ppm程度の二酸化炭素に短時間曝露した際の二酸化炭素そのものによる生産性(意思決定能力や問題解決能力等)への影響が示唆されており,このような影響は社会経済への影響が懸念されることから,慎重な対応が必要であると考えられる。建物内の二酸化炭素の室内濃度を1000 ppm以下に抑えることで,SBS症状や生産性への影響を防止できる。大気中の二酸化炭素濃度が上昇し続けているが,地球温暖化のみならず,室内の二酸化炭素濃度の維持管理のためにも大気中二酸化炭素濃度の低減に関する早急な対策が必要である。
著者
柳 宇 鍵 直樹 東 賢一 鎌倉 良太 杉山 順一 大澤 元毅
出版者
公益社団法人 空気調和・衛生工学会
雑誌
空気調和・衛生工学会 論文集 (ISSN:0385275X)
巻号頁・発行日
vol.41, no.229, pp.15-22, 2016-04-05 (Released:2017-05-01)
参考文献数
19

第1報では,高齢者福祉施設内の微生物汚染実態を詳細に調査し,多数の人が集まるデイルーム内の浮遊細菌濃度と浮遊真菌濃度の1日の変動幅が2〜3桁に達しており,Staphylococcus hominis, S. epidermidis, Serratia marcescens, Corynebacterium xerosis, C.freneyi, Acinetobacter baumannii, A. calcoaceticus, Stenotrophomonas maltophiliaなど多種の日和見感染菌が低くない割合で検出された。本報では,高齢者福祉施設内の環境を詳細に把握するために,第1報と同じ調査対象における温湿度,二酸化炭素(CO2)濃度の長期間連続測定を行った。また,高齢者福祉施設の環境管理について,これまでのアンケート調査結果を検討した。本研究より,次の事柄が明らかになった。①室内温度は総じて良好であったが,室内温度が急激に低下する居室があり,窓開け換気を行う時間帯に対する配慮が必要である。②相対湿度は,1施設の食堂(KT)と居室(HF)を除いた6室が冬に向けて低下しつつあり,その中央値が12月または1月に入ってから40%を下回った高齢者福祉施設における加湿設備の充実と適正な管理が必要である。③CO2濃度については,その中央値が総じて良好であったが,全ての対象室の最大値が1000ppmを大きく上回った。多数の人が集まるデイルーム等においては換気量の確保が必要である。④環境管理については,加湿設備の充実,必要換気量の確保,および適正な換気運転が必要で,そのためにも管理体制,とりわけ設備管理技術者による適正な管理が必要である。
著者
内山 巌雄 吉川 敏一 高野 裕久 谷川 真理 東 賢一 村山 留美子 東 実千代 萬羽 郁子
出版者
財団法人ルイ・パストゥール医学研究センター
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

医療法人社団医聖会百万遍クリニック・シックハウス外来の化学物質過敏症患者を対象に、居住環境調査、免疫機能評価、臭い物質による嗅覚負荷評価を実施した。その結果、症例群では自然免疫系の機能が高めであるにも関わらず、Th2優位の傾向はみられなかった。居住環境調査の結果、症例群では室内空気中の化学物質濃度が抑制されており、清浄な室内環境で日常生活を行うよう心掛けていることがうかがえた。嗅覚負荷評価では、症例群は前頭前皮質において臭い刺激に対して脳の活動が活発化した。化学物質過敏症患者では、臭い刺激に対して嗅神経系が過剰に反応しやすくなっていること、免疫機能に変化がみられることなどの特徴を明らかにした。
著者
金 勲 柳 宇 鍵 直樹 東 賢一 長谷川 兼一 林 基哉 大澤 元毅 志摩 輝治
出版者
公益社団法人 空気調和・衛生工学会
雑誌
空気調和・衛生工学会大会 学術講演論文集 平成30年度大会(名古屋)学術講演論文集 第7巻 空気質 編 (ISSN:18803806)
巻号頁・発行日
pp.1-4, 2018 (Released:2019-10-30)

普及が急速に進んでいる家庭用超音波式加湿器による室内空気の微生物汚染が懸念されることから、微生物汚染の経時変化を実験を通じて調べた。 加湿空気と加湿水中ET濃度は3日目までは緩やかな上昇を示すが、4〜5日目から指数関数的に急増し、急速な汚染が進行することが観察された。加湿器の洗浄や加湿水交換を毎日行っても細菌濃度が上昇することがあり、これはET及び浮遊細菌の測定結果から確認できた。
著者
谷川 真理 東 賢一 宇野 賀津子 東 実千代 萬羽 郁子 高野 裕久 内山 巌雄 吉川 敏一
出版者
日本臨床免疫学会
雑誌
日本臨床免疫学会会誌 (ISSN:09114300)
巻号頁・発行日
vol.36, no.5, pp.414a-414a, 2013 (Released:2013-10-31)
被引用文献数
1

【背景と目的】いわゆる化学物質過敏症(Multiple chemical sensitivity : MCS)は現代の環境がひきおこした後天的疾患である.日常的にさまざまな化学物資に曝されることに反応して神経系,免疫系,内分泌系をはじめ全身の多様な症状が起こり,通常の社会生活にも支障をきたすようになる.しかしその病態の詳細は解明されておらずMCS有訴者は診断を受けることも困難な状況に置かれている.MCSの病態解明を目的として免疫学的機能検査を実施し解析した. 【方法】2009年10月以来百万遍クリニックのシックハウス外来に通院するいわゆる化学物質過敏症の有訴者(患者)の協力を得て,一般的な血液検査と多種の免疫機能検査を測定し解析した. 【結果】18人のMCS有訴者と17人の健常成人の比較の結果,MCSではNK活性が統計学的有意に高かった.リンパ球サブセットではMCSではNKT細胞の割合が高く,CD3とCD4が低かった.多種のサイトカイン産生能の測定ではIL-2,IL-4,IL-13,GM-CSFが有意に低かった. 【結論】MCS患者では自然免疫系が高めに保持されている一方,Th2型サイトカインが低い傾向で,アレルギーとは異なる病態と考えられる.
著者
長谷川 兼一 石山 智 大澤 元毅 柳 宇 鍵 直樹 東 賢一 高木 理恵
出版者
一般社団法人 日本建築学会
雑誌
日本建築学会技術報告集 (ISSN:13419463)
巻号頁・発行日
vol.21, no.49, pp.1117-1120, 2015-10-20 (Released:2015-10-20)
参考文献数
2
被引用文献数
1 2

In order to clarify indoor climate in a crawl space after flooding, long-term experiment using a test house was performed. A second-story test house was constructed in a campus of Akita Prefectural University in 2003. In this experiment two rooms on the first floor of the test house and crawl spaces were used. Tap-water was supplied to 100mm depth on a crawl space in each room, and after 72 hours it drained. In this paper, indoor humidity and water contents of wood and concrete in a crawl space were analyzed from the view point of moisture balance in a crawl space after flooding.
著者
萬羽 郁子 東 賢一 東 実千代 谷川 真理 内山 巌雄
出版者
公益社団法人におい・かおり環境協会
雑誌
におい・かおり環境学会誌 (ISSN:13482904)
巻号頁・発行日
vol.50, no.1, pp.27-39, 2019-01-25 (Released:2021-11-03)
参考文献数
30
被引用文献数
2

本研究は,化学物質過敏症(MCS;Multiple Chemical Sensitivity)患者の嗅覚知覚特性を明らかにすることを目的とした.MCS患者群と対照群に,T&Tオルファクトメータの5臭(β-フェニルエチルアルコール[A],メチルシクロペンテノロン[B],イソ吉草酸[C],γ-ウンデカラクトン[D],スカトール[E])を用いた閾値検査,においスティックの4種(みかん,ひのき,香水,無臭)を用いた嗅覚同定能力検査,各においの強度および快・不快度評価を行った. MCS患者群は対照群に比べて,基準臭Dの検知閾値,5基準臭の平均検知閾値および認知閾値が有意に低かったが,同定能力に群間の有意差はなかった.また,一部のにおいに対する強度や不快度は,対照群よりMCS患者群の方が有意に高かった.本研究では被験者数やにおいの種類が限られており,今後さらにデータを蓄積して検討していく必要がある.
著者
谷川 真理 東 賢一 宇野 賀津子 東 実千代 萬羽 郁子 高野 裕久 内山 巌雄 吉川 敏一
出版者
The Japan Society for Clinical Immunology
雑誌
日本臨床免疫学会会誌 (ISSN:09114300)
巻号頁・発行日
vol.36, no.5, pp.414a-414a, 2013
被引用文献数
1

【背景と目的】いわゆる化学物質過敏症(Multiple chemical sensitivity : MCS)は現代の環境がひきおこした後天的疾患である.日常的にさまざまな化学物資に曝されることに反応して神経系,免疫系,内分泌系をはじめ全身の多様な症状が起こり,通常の社会生活にも支障をきたすようになる.しかしその病態の詳細は解明されておらずMCS有訴者は診断を受けることも困難な状況に置かれている.MCSの病態解明を目的として免疫学的機能検査を実施し解析した.<br> 【方法】2009年10月以来百万遍クリニックのシックハウス外来に通院するいわゆる化学物質過敏症の有訴者(患者)の協力を得て,一般的な血液検査と多種の免疫機能検査を測定し解析した.<br> 【結果】18人のMCS有訴者と17人の健常成人の比較の結果,MCSではNK活性が統計学的有意に高かった.リンパ球サブセットではMCSではNKT細胞の割合が高く,CD3とCD4が低かった.多種のサイトカイン産生能の測定ではIL-2,IL-4,IL-13,GM-CSFが有意に低かった.<br> 【結論】MCS患者では自然免疫系が高めに保持されている一方,Th2型サイトカインが低い傾向で,アレルギーとは異なる病態と考えられる.<br>
著者
内山 巌雄 谷川 真理 東 賢一 東 実千代 青野 明子 萬羽 郁子
出版者
公益財団法人ルイ・パストゥール医学研究センター
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2020-04-01

化学物質に対する過敏状態の解明は、臭い負荷による脳機能イメージング研究によって、外的ストレスに対する大脳辺縁系を介した作用機序に焦点があてられてきた。本研究では、随意的な眼球運動に関与する大脳の領域が前頭前皮質の前頭眼窩野にもあり、サルの実験では嫌悪刺激への応答がみられることに着目し、臭い負荷による脳機能イメージング研究で得られた知見をもとに、臭い負荷による滑動性追従眼球運動(SPEM)検査との関係を把握する。SPEM検査は簡易であることから、簡易検査法の開発に寄与する基礎データを得る。また、認知(行動)療法や運動療法等を含む介入効果についても臭い負荷SPEM検査法で客観的に検証する。
著者
岸 玲子 吉野 博 荒木 敦子 西條 泰明 東 賢一 河合 俊夫 大和 浩 大澤 元毅 柴田 英治 田中 正敏 増地 あゆみ 湊屋 街子 アイツバマイ ゆふ
出版者
一般社団法人日本衛生学会
雑誌
日本衛生学雑誌 (ISSN:00215082)
巻号頁・発行日
vol.73, no.2, pp.116-129, 2018 (Released:2018-05-31)
参考文献数
28
被引用文献数
2 5

Recently, we have published a book containing evidence-based public health guidelines and a practical manual for the prevention of sick house syndrome. The manual is available through the homepage of the Ministry of Health, Labour and Welfare (http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11130500-Shokuhinanzenbu/0000155147.pdf). It is an almost completely revised version of the 2009 version. The coauthors are 13 specialists in environmental epidemiology, exposure sciences, architecture, and risk communication. Since the 1970s, health problems caused by indoor chemicals, biological pollution, poor temperature control, humidity, and others in office buildings have been recognized as sick building syndrome (SBS) in Western countries, but in Japan it was not until the 1990s that people living in new or renovated homes started to describe a variety of nonspecific subjective symptoms such as eye, nose, and throat irritation, headache, and general fatigue. These symptoms resembled SBS and were designated “sick house syndrome (SHS).” To determine the strategy for prevention of SHS, we conducted a nationwide epidemiological study in six cities from 2003–2013 by randomly sampling 5,709 newly built houses. As a result 1,479 residents in 425 households agreed to environmental monitoring for indoor aldehydes and volatile organic compounds (VOCs). After adjustment for possible risk factors, some VOCs and formaldehyde were dose-dependently shown to be significant risk factors. We also studied the dampness of the houses, fungi, allergies, and others. This book is fully based on the scientific evidence collected through these studies and other newly obtained information, especially from the aspect of architectural engineering. In addition to SHS, we included chapters on recent information about “multi-chemical sensitivity.”
著者
東 賢一
出版者
一般社団法人 室内環境学会
雑誌
室内環境 (ISSN:18820395)
巻号頁・発行日
vol.22, no.2, pp.203-208, 2019 (Released:2019-08-01)
参考文献数
22

化学物質過敏症において, どのような宿主要因, 外部環境要因, 行動に関わる要因が発症や症状の増悪に関与しているかを把握することは, 化学物質過敏症の予防において重要であり, 筆者は脳機能イメージングを用いた臨床研究やアンケートによる疫学研究を行ってこれらの要因を調査してきた。脳機能イメージング研究からは, 臭い負荷時の前頭前皮質領域における活性化状況から, 外的ストレスに対する刺激の認識や記憶と大脳辺縁系を介した作用機序が関与している可能性が考えられた。 また, 5年にわたる追跡研究からは, イライラ感, 疲労感, 不安感, 抑うつ感などの悪化した心身の状態が, 化学物質に対する感受性を増悪させる強い要因になること, 適度な運動や規則正しい生活が化学物質高感受性の改善に寄与することなどを示唆してきた。外的環境要因については, 化学物質過敏症の発症のきっかけとなった曝露イベントが化学物質過敏症患者によって異なり, 特に曝露イベント時の曝露濃度に関する知見が乏しいことなどから, 対応策の検討が困難となっている。 しかしながら, 化学物質の有害性に関する既存の科学的知見をもとに, 大多数の人たちが健康への有害な影響を受けないであろうと判断される健康リスクレベルを評価し, 私たちを取り巻く外的環境に対する指針値や基準値を策定していくことは, 化学物質過敏症の発症に対する1つの重要な予防策になると考えられる。
著者
水越 厚史 北條 祥子 黒岩 義之 東 賢一 中間 千香子 奥村 二郎
出版者
日本自律神経学会
雑誌
自律神経 (ISSN:02889250)
巻号頁・発行日
vol.59, no.1, pp.28-36, 2022 (Released:2022-04-23)
参考文献数
42

環境過敏症は,健常人では問題にならない僅かなレベルの化学物質への曝露や物理的影響などの環境因子により,全身の様々な症状が生じる病態である.その病因や症候の底流となる機序を解明し,予防や発症,治療法に関する環境・医学的対策情報を得ることが急務と考える.そのためには,問診票により患者から訴えの実態を把握し,その発症や症状発現の誘因となりそうな環境因子を明らかにする必要がある.本報では,環境過敏症の疫学調査のために世界的に使われてきた国際共通問診票の特徴を整理し,疫学調査に必要な質問項目について検討した.国際共通問診票の特徴は,様々な種類の環境因子や症状発現について網羅的に質問している点にある.近年の環境の変遷速度を考慮すると,新たな環境因子を継続的に探索できる問診票の出現が望まれる.調査結果をフィードバックし,問診票をアップデートしつつ,環境過敏症の課題解決に向けて努力していきたい.
著者
内山 巌雄 谷川 真理 東 賢一 東 実千代 萬羽 郁子
出版者
公益財団法人ルイ・パストゥール医学研究センター
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2016-04-01

ベースライン調査として、化学物質過敏症の患者群10名および性別と年齢を患者群と一致させた健常者群9名に対し、においスティックによる臭い負荷を行い、負荷時および負荷前後の前頭前皮質の脳血流状態を近赤外光脳機能イメージング装置で計測した。また上記検査と同時に末梢動脈血酸素飽和度、自律神経状態をモニタリングして計測データを得た。その後の1年間のうちの約2ヶ月半、これらの患者群のうち6名に対してLカルニチンを投与、1名は酸素療法を試み、3名は非介入群とし、同様の嗅覚負荷検査等を実施した。その結果、総じて化学物質過敏状態について、明白な改善はみられなかったが、比較的症状が重い一部では改善傾向がみられた。
著者
林 基哉 金 勲 開原 典子 小林 健一 鍵 直樹 柳 宇 東 賢一
出版者
日本建築学会
雑誌
日本建築学会環境系論文集 (ISSN:13480685)
巻号頁・発行日
vol.84, no.765, pp.1011-1018, 2019 (Released:2019-11-30)
参考文献数
14
被引用文献数
1 2

The state of the increase in the nonconformity rates of air environment in specific buildings was investigated using local government survey reports. The factors in the increase of carbon dioxide concentration were analyzed in consideration of the increase of ambient concentration, the characteristics of indoor concentrations and the characteristics of the government reports. The results were as follows. 1 The nonconformity rates of humidity, temperature and carbon dioxide concentration have increased with the number of specific buildings since 1999. And reports made by the owners of specific buildings are substituted for inspections by government officials in most prefectures. 2 One of the factors in the increase of nonconformity rates of temperature, humidity and carbon dioxide concentration is the increase of reports using measurement data by building maintenance suppliers. The nonconformity rates of humidity and carbon dioxide concentration were higher in northern prefectures. 3 The frequency of indoor carbon dioxide concentration in specific buildings in Tokyo was similar to that in Osaka. The frequency distribution of the differences between indoor concentration and outdoor concentration in Tokyo follows Weibull frequency distribution. 4 The ambient concentration of carbon dioxide has increased especially in urban areas. The increase of ambient concentration is thought to increase the indoor concentrations in specific buildings. 5 The nonconformity rates of carbon dioxide concentration depend on not only ambient concentration but also the rates of ventilation reduction and survey methods by governments. The nonconformity rates were calculated using an equation composed on the basis of Weibull frequency. The coefficients of these factors were calculated using the equation and the survey data on all Japan. 6 The increase of ambient concentration made the nonconformity rate of indoor concentration 3.1% higher and ventilation reduction made it 7.2% higher and the change of survey method made it 11.6% higher in these nineteen years. These results showed that the increase of nonconformity rates depends on several factors. Therefore it is necessary to design integrated countermeasures in order to decrease these nonconformity rates.
著者
鍵 直樹 柳 宇 東 賢一 金 勲 大澤 元毅
出版者
公益社団法人 空気調和・衛生工学会
雑誌
空気調和・衛生工学会大会 学術講演論文集 平成27年度大会(大阪)学術講演論文集 第7巻 空気質 編 (ISSN:18803806)
巻号頁・発行日
pp.101-104, 2015 (Released:2017-11-15)

建築物における基準値との適合状況については,全国の情報が毎年公開されている。そこで本研究では,公表された全国の建築物の維持管理に関するデータを用いて,基準値に適合しなかった建物の割合,不適率の最新動向の解析を行うことにより,建築物における環境衛生の実態について把握することを目的とする。以前にも同様の調査を行っているが2),平成23年の東日本大震災以降のデータを加えた。更には,東京都における立ち入り測定のデータを用いた室内空気環境の詳細な解析を行った。
著者
金 勲 小林 健一 開原 典子 柳 宇 鍵 直樹 東 賢一 長谷川 兼一 中野 淳太 李 時桓 林 基哉
出版者
公益社団法人 空気調和・衛生工学会
雑誌
空気調和・衛生工学会大会 学術講演論文集 令和2年度大会(オンライン)学術講演論文集 第8巻 性能検証・実態調査 編 (ISSN:18803806)
巻号頁・発行日
pp.293-296, 2020 (Released:2021-10-28)

特定建築物及び中小規模建築24件を対象に、2019年度の冷暖房期に行った温度・湿度・CO2の2週間の連続測定からCO2濃度に関する結果を報告する。平均値としては1000ppmを超える建物は2割程度であったが、1回でも1000ppmを超える割合はほぼ7割あった。また、昨年度とは異なり期間中ずっと1000ppmを下回らない、3000ppmを超える高濃度を示すなど、著しく悪い環境にある物件はなかった。
著者
柳 宇 鍵 直樹 東 賢一 金 勲 志摩 輝治 大澤 元毅
出版者
公益社団法人 空気調和・衛生工学会
雑誌
空気調和・衛生工学会大会 学術講演論文集 平成28年度大会(鹿児島)学術講演論文集 第7巻 空気質 編 (ISSN:18803806)
巻号頁・発行日
pp.17-20, 2016 (Released:2017-10-31)

省エネと室内空気質の両立の視点から採用されているCO2濃度検知による換気量制御の実態に関する調査を行い,空調方式別の室内CO2濃度の実態解明を図ると同時に,その換気量制御のあり方について考察を行った。 (1)オフィスビルの一人当たりの気積が大きいことにより室内CO2濃度は定常濃度にならず,執務時間帯では常に低く抑えられている。 (2)室内CO2濃度の瞬時値ではなく,その平均値を関連基準値以下に制御することで室内空気質の確保と省エネの両立が図られる。