著者
日置 真世
出版者
北海道大学大学院教育学研究院附属子ども発達臨床研究センター = Research and Clinical Center for Child Development, Faculty of Education, Hokkaido University
雑誌
子ども発達臨床研究 (ISSN:18821707)
巻号頁・発行日
no.4, pp.21-34, 2010

子ども家庭を取り巻く社会問題が深刻化を見せているなか、2008年4月からスクールソーシャルワーカー(以下、SSWとする)が文部科学省のモデル事業として全国で導入された。日本社会において学齢児の子どもたちへ大きな影響力を持つ学校(教育分野)にソーシャルワーク(福祉分野)の専門職が導入されたことで困難な状況に置かれている子どもが支援につながる機会が拡大し、学校が地域の支援機関との連携を強めるなど様々な意味で大きなチャンスといえる。しかし、現実ではそれぞれの現場は直面する事態の対応に追われたり、世間やマスコミから過剰な攻撃や追及の矢面に立たされたりなど安心して本来の力や役割を発揮できない状況もあり、教育と福祉という異分野の連携はSSWが導入されたからといって、簡単に効果が上がるようなものではない。本論文は筆者がSSWの一人として1年半余り札幌市において取り組んできた支援実践を支援を受ける側の立場に立った問題意識に基づき振りかえることで、子どもたちや家庭とそれを取り巻く学校や関係機関の支援の現状をまとめ、これからの子ども家庭支援の在り方について提言を試みるものである。
著者
宮﨑 隆志 日置 真世
出版者
北海道大学大学院教育学研究院附属子ども発達臨床研究センター = Research and Clinical Center for Child Development, Faculty of Education, Hokkaido University
雑誌
子ども発達臨床研究 (ISSN:18821707)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.11-20, 2010-03-25

社会的に排除された若者の自立支援にコミュニティ・エンパワメントの視点から接近する意義と課題を検討した。具体的な事例に即して、共時的移行の困難と自己の構造化の困難との関連を確認した上で、コミュニティ・エンパワメント型支援実践の構造を解明した。最後に、そのようなタイプの実践がもたらす自己の構造変化を、協働的な自己再構成の過程として抽出し、協働的活動システムの構築による支援実践や教育実践の可能性を導いた。
著者
田中 康雄 内田 雅志 久蔵 孝幸 福間 麻紀 川俣 智路 伊藤 真理 美馬 正和 金井 優実子 松田 康子
出版者
北海道大学大学院教育学研究院附属子ども発達臨床研究センター = Research and Clinical Center for Child Development, Faculty of Education, Hokkaido University
雑誌
子ども発達臨床研究 (ISSN:18821707)
巻号頁・発行日
no.4, pp.1-9, 2010

2009年に行ったわれわれの「発達障害のある方々への生涯発達支援の実践研究」について報告した。まず、発達障害は生活障害である。その視点に立つことで、われわれの実践研究を(1)養育者支援に関する研究、(2)保育・教育現場における支援研究、(3)特殊な生活環境における支援研究、(4)ADHDに関する調査研究と分類して、生活環境を中心に包括的な検討をした。われわれが向き合う「あなた」は、当初は養育者、次に当事者、さらにかれらを取り巻く関係者となる。同時に、われわれには、関係者といかに手を携えて総合的な支援策を構築するか、ということも求められる。最後に連携・ネットワーク作りからノットワーク作りへという移行を提案した。
著者
日置 真世
出版者
北海道大学大学院教育学研究院附属子ども発達臨床研究センター = Research and Clinical Center for Child Development, Faculty of Education, Hokkaido University
雑誌
子ども発達臨床研究 (ISSN:18821707)
巻号頁・発行日
no.3, pp.45-53, 2009

今日の日本社会は少子高齢化、核家族化、過疎化、経済の不安定、地域における人間関係の希薄化など暮らしを取り巻く環境の著しい変化の中でさまざまな生活課題が生じている。一方では、それら生活課題を支えるべく公共システムである年金や医療保険、各福祉制度をはじめとした社会保障制度は転換期を迎え不安定であり、雇用を取り巻く状況も厳しさを増し、多くの地方自治体が財政困難を抱えるなど、人々の暮らしを支える社会システムが大きく揺らいでいる。そうしたなか地域においては、大勢の困難や生きづらさを抱える子どもや若者たちとその家族は、複雑・深刻な課題にぶつかり、既存の制度で支え切れない実態があり、現実では当事者や限られた実践者の我慢と努力に依存するような厳しい状況に陥っている。本論は具体的な支援実践の蓄積から、そうした生活課題を抱えた子どもや若者とその家族を身近な生活の場である地域で支えることの意義と支援においては何が重要でどんな思想や方法論が必要なのかを探り、今後、地域における支援体制の充実を願って、ささやかな提言を試みるものである。