著者
日置 真世
出版者
北海道大学大学院教育学研究院
雑誌
北海道大学大学院教育学研究院紀要 (ISSN:18821669)
巻号頁・発行日
vol.107, pp.107-124, 2009-06-22

地域社会における子どもたちを取り巻く環境は厳しさを増している。地域社会のつながりが希薄となり,家族のあり方が多様化し,子どもたちを育む機能が脆弱になっている。脆弱な養育環境におかれた子どもは学校などの集団においても孤立し,排除されるリスクを負う。そのリスクを放置することは,社会的なハンディを持つ子どもたちへの社会による排除であり,地域社会のあらゆる構成員が総力を挙げて対策を講じる責任があると考える。本論文は多くの厳しい現状を抱えている地域である釧路市において2008年1月から実施されている生活保護世帯等の中学3年生への学習支援実践についてのレポートである。孤立・排除のリスクを抱える子どもたちへの支援をきっかけに集まったすべての参画者たちが協同的な「場づくり実践」を通して生活主体となるプロセスを辿ることで,子どもたちを育む地域づくりのための対策の必要性と可能性を探る。
著者
日置 真世
出版者
北海道大学大学院教育学研究院附属子ども発達臨床研究センター = Research and Clinical Center for Child Development, Faculty of Education, Hokkaido University
雑誌
子ども発達臨床研究 (ISSN:18821707)
巻号頁・発行日
no.4, pp.21-34, 2010

子ども家庭を取り巻く社会問題が深刻化を見せているなか、2008年4月からスクールソーシャルワーカー(以下、SSWとする)が文部科学省のモデル事業として全国で導入された。日本社会において学齢児の子どもたちへ大きな影響力を持つ学校(教育分野)にソーシャルワーク(福祉分野)の専門職が導入されたことで困難な状況に置かれている子どもが支援につながる機会が拡大し、学校が地域の支援機関との連携を強めるなど様々な意味で大きなチャンスといえる。しかし、現実ではそれぞれの現場は直面する事態の対応に追われたり、世間やマスコミから過剰な攻撃や追及の矢面に立たされたりなど安心して本来の力や役割を発揮できない状況もあり、教育と福祉という異分野の連携はSSWが導入されたからといって、簡単に効果が上がるようなものではない。本論文は筆者がSSWの一人として1年半余り札幌市において取り組んできた支援実践を支援を受ける側の立場に立った問題意識に基づき振りかえることで、子どもたちや家庭とそれを取り巻く学校や関係機関の支援の現状をまとめ、これからの子ども家庭支援の在り方について提言を試みるものである。

1 0 0 0 IR 第2報告

著者
日置 真世
出版者
北海道大学大学院教育学研究院附属子ども発達臨床研究センター 研究プラットフォーム委員会(代表:宮﨑隆志)
雑誌
「遊ぶ・学ぶ・働く : 持続可能な発達の支援のために」 シンポジウム報告書
巻号頁・発行日
pp.94-112, 2012-05-25

E:パネルディスカッション テーマ:人が育つシステムを再考する 「遊ぶ・学ぶ・働く : 持続可能な発達の支援のために」シンポジウム報告書:子ども発達臨床研究センター総合研究企画(2011サステナ企画). 平成23年11月2日(水)~4日(金). 北海道大学人文・社会科学総合教育研究棟 教育学研究院会議室. 札幌市
著者
宮﨑 隆志 日置 真世
出版者
北海道大学大学院教育学研究院附属子ども発達臨床研究センター = Research and Clinical Center for Child Development, Faculty of Education, Hokkaido University
雑誌
子ども発達臨床研究 (ISSN:18821707)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.11-20, 2010-03-25

社会的に排除された若者の自立支援にコミュニティ・エンパワメントの視点から接近する意義と課題を検討した。具体的な事例に即して、共時的移行の困難と自己の構造化の困難との関連を確認した上で、コミュニティ・エンパワメント型支援実践の構造を解明した。最後に、そのようなタイプの実践がもたらす自己の構造変化を、協働的な自己再構成の過程として抽出し、協働的活動システムの構築による支援実践や教育実践の可能性を導いた。
著者
宮崎 隆志 横井 敏郎 上原 慎一 石黒 広昭 藤野 友紀 間宮 正幸 大高 研道 日置 真世 武田 るい子 大高 研道 向谷地 生良 仲真 紀子 駒川 智子
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

社会的に排除された若者の移行支援の課題を明らかにした。彼・彼女らの「生きづらさ」の背後には、生活世界を構成する諸コミュニティの断片化がある。したがって移行支援のためには断片化したコミュニティを再統合することが必要であるが、そのためには多様性が保障された新たな媒介的コミュニティを構築することが有効であること、およびそのコミュニティを中心にした地域的な支援システムを構想することが必要であることを明らかにした。
著者
日置 真世
出版者
北海道大学大学院教育学研究院附属子ども発達臨床研究センター = Research and Clinical Center for Child Development, Faculty of Education, Hokkaido University
雑誌
子ども発達臨床研究 (ISSN:18821707)
巻号頁・発行日
no.3, pp.45-53, 2009

今日の日本社会は少子高齢化、核家族化、過疎化、経済の不安定、地域における人間関係の希薄化など暮らしを取り巻く環境の著しい変化の中でさまざまな生活課題が生じている。一方では、それら生活課題を支えるべく公共システムである年金や医療保険、各福祉制度をはじめとした社会保障制度は転換期を迎え不安定であり、雇用を取り巻く状況も厳しさを増し、多くの地方自治体が財政困難を抱えるなど、人々の暮らしを支える社会システムが大きく揺らいでいる。そうしたなか地域においては、大勢の困難や生きづらさを抱える子どもや若者たちとその家族は、複雑・深刻な課題にぶつかり、既存の制度で支え切れない実態があり、現実では当事者や限られた実践者の我慢と努力に依存するような厳しい状況に陥っている。本論は具体的な支援実践の蓄積から、そうした生活課題を抱えた子どもや若者とその家族を身近な生活の場である地域で支えることの意義と支援においては何が重要でどんな思想や方法論が必要なのかを探り、今後、地域における支援体制の充実を願って、ささやかな提言を試みるものである。