著者
平井 廣一 足立 清人
出版者
北海道大学大学院経済学研究院
雑誌
經濟學研究 (ISSN:04516265)
巻号頁・発行日
vol.68, no.1, pp.103-113, 2018-06-14

近代日本経済史の分野では,明治初期の地租改正を契機に成立する地主的土地所有の歴史的性格をめぐって,地租を「近代的租税」と規定するか,あるいは絶対主義下の「半封建的貢租」とするかで見解が分かれている。また地主的土地所有についても,「近代的土地所有」であるか,あるいは「半封建的土地所有」と規定するかで見解の対立が見られる。本稿は,「半封建的土地所有論」が立論の根拠とする「近代的土地所有権の未成熟」論を,民法における土地法ないしは借地借家法の視点から再検討を加える。すなわち,「近代的土地所有権」がイギリスをモデルとして成立したことをもってその典型といえるのか,また「土地用益権の物権構成」は果たして近代的土地所有権が確立するための必須の条件なのかを法理論的に再検討する。
著者
小島 広光 平本 健太
出版者
北海道大学大学院経済学研究院
雑誌
經濟學研究 (ISSN:04516265)
巻号頁・発行日
vol.67, no.1, pp.29-107, 2017-06-13

わが国において,NPO法成立後の10年間に,「公益法人制度改革」と「寄付税制およびNPO法の改正」の2つの改革(「非営利法人制度改革」と総称)が実現した。本稿では,「非営利法人制度改革過程」のうちの「寄付税制およびNPO法の改正過程」の事例を改訂・政策の窓モデルにもとづいて分析するための準備作業を行う。具体的には,シーズのNPOWEBの直接引用を中心にして,さらに① 参加者への聴取調査結果(1次資料),② 政府税制調査会議事録,「新しい公共」円卓会議議事録,政府税制調査市民公益税制PT議事録・報告書,書籍等の2次資料が編集された。この編集結果にもとづいて,非営利法人制度改革過程の第4期と第5期にあたる「寄付税制およびNPO法の改正過程」の濃密な事例が作成される。このうち第4期は,鳩山内閣発足から「新しい公共」宣言の公表まで(2009年8月~2010年6月)であり,第5期は菅内閣発足から「寄付税制およびNPO法の改正」まで(2010年6月~2011年6月)である。なお次稿では,「非営利法人制度改革過程」に関して作成された2つの濃密な事例が,改訂・政策の窓モデルにもとづいて分析される。