著者
谷 幸太郎 栗原 治 金 ウンジュ 酒井 一夫 明石 真言
出版者
国立研究開発法人放射線医学総合研究所
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2014-08-29

原子力事故後の緊急作業等によって高線量の放射線被ばくを受けた場合には、個人データに基づく線量評価が必要となる。本研究では、甲状腺へ局所的な内部被ばくをもたらすI-131を対象として、人体を再現したボクセルファントムを使用した数値計算により、甲状腺前面の組織厚を考慮した甲状腺残留量の評価を可能とした。また、安定ヨウ素剤服用時の体内動態解析コードを開発し、個人の摂取シナリオを考慮した甲状腺線量の評価を可能とした。これらの手法について、福島第一原子力発電所事故への適用例を示し、有用性を確認した。本研究の成果は、I-131による高線量内部被ばく時の線量再構築に役立つものと期待される。
著者
高畑 圭輔
出版者
国立研究開発法人放射線医学総合研究所
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2013-04-01

sense of agencyを定量評価する心理課題をうつ病患者17名に施行し、健常者(21名)と同様の修飾作用がうつ病患者では認められないことを明らかにした。次に共感性を定量評価するための課題を確立し、健常者12名を対象にfMRI実験を行ったところ、主観的共感性が他者よりも自らが行った行為に伴う結果に対して増強することが確認された。さらに[11C]FLB457を用いたPETによって測定したドーパミンD2受容体と前頭葉機能の関連を検討したところ、右前頭前野におけるD2受容体密度と前頭葉機能との間に負の相関が認められた。以上よりドーパミン神経伝達による主観的体験の制御機構の一端が明らかにされた。
著者
馬 立秋
出版者
国立研究開発法人放射線医学総合研究所
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2014-04-01

先行研究では両下肢にがん細胞を移植した担癌マウスを用いて、炭素イオン線の局所照射によって遠隔に存在する照射されていない腫瘍からの転移の抑制が認められた。本現象の一般性を確認するため、癌腫またはマウス系統を変えて同様な実験を行い、転移抑制が認められた。しかし、両下肢にがん細胞を移植した担癌ヌードマウスの片足のみに炭素イオン線照射を行ったが、遠隔腫瘍由来の転移の抑制は認められず、本現象が免疫応答を介したことが明らかになった。また、光子線も炭素イオン線ともに、照射による遠隔腫瘍からの転移抑制が認められた。この結果より、炭素イオン線以外の放射線でも照射による遠隔腫瘍からの転移の抑制が誘導される。