著者
明石 真言
出版者
日本保健物理学会
雑誌
保健物理 (ISSN:03676110)
巻号頁・発行日
vol.54, no.3, pp.149-150, 2019-10-29 (Released:2019-11-21)
著者
小川 誠司 明石 真言 鈴木 元 前川 和彦 牧 和宏
出版者
東京大学
雑誌
特定領域研究(C)
巻号頁・発行日
2000

高線量の中性子線被爆がヒトの染色体および遺伝子におよぼす影響について、1999年9月30日茨城県東海村核燃料施設で発生した臨界事故において、中性子線を大量に含む放射線被爆を受けた患者2名を対象として以下の検討を行った。生物学的および物理学的な予測被爆線量は18Gy(Pt1)および8Gy(Pt2)であった。被爆後の末梢血および骨髄血の染色体分析においては、両名ともに著しい染色体の断片化と構造異常が観察された。被爆後両患者ともに造血幹細胞移植が施行され、一名については持続的な造血系が再構築された(Pt1)が、もう一名に関しては一時的に混合キメラの状態になったがもののDayに自己造血が回復し、移植片の拒絶が確認された。興味深いことに、理論的には二次被爆の影響は殆ど無視出来ると考えられる時期に移植が行われたにも関わらず、Pt1においては再構築された造血細胞においても染色体のランダムな異常が20分裂細胞中3細胞に観察され、大量の中性子線被爆後においては、直接的な放射線障害以外に染色体を障害する、細胞を隔てて作用するメカニズムが存在する可能性が示唆された。こ自己の造血が回復したPt2においては、染色体分析において、分裂細胞の60%ないし80%の細胞に細胞ごとに異なるランダムな染色体の異常が観察され、放射線被爆による染色体の異常が自己造血の回復ののちも再生した造血組織に維持されることが明らかとなった。しかし、これらの異常が最終的に造血器腫瘍を誘発するか否かについては、患者が被爆後早期に多臓器不全により死亡したため、検討不能であった。一方、剖検後に患者の遺族の同意を得て検討された被爆組織の遺伝子の突然変異をras遺伝子、p53遺伝子およびp16INK4A遺伝子について検討したが、これらの遺伝子における突然変異率の上昇は証明されなかった。
著者
小林 信義 山本 泰 明石 真言
出版者
Japan Health Physics Society
雑誌
保健物理 (ISSN:03676110)
巻号頁・発行日
vol.33, no.3, pp.323-330, 1998 (Released:2010-02-25)
参考文献数
44
被引用文献数
7 8

Prussian blue, a blue pigment, belongs to the ferric cyanoferrate (II) group. It binds univalent metal ions, and the binding activity depends on their ionic radius. Prussian blue is not absorbed from the gastrointestinal tract in a significant amount. The cesium is entero-enteric cycled through the intestine. Prussian blue inhibits the reabsorption of the cesium. Many studies using experimental animals showed that the oral administration of Prussian blue increases the rate of the fecal excretion of radiocesium which results in shortening its biological half life. The accident in Goiania, Brazil, in 1987 showed that Prussian blue effectively accelerated the removal of radiocesium without toxicity. In the present review, we describe Prussian blue from a biological aspect and discuss its clinical application for the decontamination of cesium in radiation accidents.
著者
谷 幸太郎 栗原 治 金 ウンジュ 酒井 一夫 明石 真言
出版者
国立研究開発法人放射線医学総合研究所
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2014-08-29

原子力事故後の緊急作業等によって高線量の放射線被ばくを受けた場合には、個人データに基づく線量評価が必要となる。本研究では、甲状腺へ局所的な内部被ばくをもたらすI-131を対象として、人体を再現したボクセルファントムを使用した数値計算により、甲状腺前面の組織厚を考慮した甲状腺残留量の評価を可能とした。また、安定ヨウ素剤服用時の体内動態解析コードを開発し、個人の摂取シナリオを考慮した甲状腺線量の評価を可能とした。これらの手法について、福島第一原子力発電所事故への適用例を示し、有用性を確認した。本研究の成果は、I-131による高線量内部被ばく時の線量再構築に役立つものと期待される。
著者
谷川 攻一 細井 義夫 寺澤 秀一 近藤 久禎 浅利 靖 宍戸 文男 田勢 長一郎 富永 隆子 立崎 英夫 岩崎 泰昌 廣橋 伸之 明石 真言 神谷 研二
出版者
Japanese Association for Acute Medicine
雑誌
日本救急医学会雑誌 (ISSN:0915924X)
巻号頁・発行日
vol.22, no.9, pp.782-791, 2011
被引用文献数
2 4

東日本大震災は,これまでに経験したことのない規模の地震・津波による被害と福島第一原子力発電所の事故を特徴とした複合型災害である。3月11日に発生した地震と巨大津波により福島第一原子力発電所は甚大な被害を受けた。3月12日には1号機が水素爆発を起こし,20km圏内からの避難勧告が出された。14日には3号機が爆発,15日の4号機爆発後には大量の放射性物質が放出されるという最悪の事態へと進展した。一方,この間,原子力災害対応の指揮本部となるべく福島県原子力災害対策センターも損壊を受け,指揮命令系統が十分に機能しない状態となった。20km圏内からほとんどの住民が避難する中で,医療機関や介護施設には推定でおよそ840名の患者が残されていた。これらの患者に対して3月14日に緊急避難が行われた。しかし,避難患者の受け入れ調整が困難であり,重症患者や施設の寝たきり高齢患者などが長時間(場合によっては24時間以上)にわたりバス車内や避難所に放置される事態が発生した。不幸にも,この避難によって20名以上の患者が基礎疾患の悪化,脱水そして低体温症などで死亡した。一連の水素爆発により合計15名の作業員が負傷した。その後,原子炉の冷却を図るべく復旧作業が続けられたが,作業中の高濃度放射線汚染による被ばくや外傷事例が発生した。しかし,20km圏内に存在する初期被ばく医療機関は機能停止しており,被ばく事故への医療対応は極めて困難であった。今回の福島原子力発電所事故では,幸い爆発や放射線被ばくによる死者は発生していないが,入院患者や施設入所中の患者の緊急避難には犠牲を伴った。今後は災害弱者向けの避難用シェルターの整備や受け入れ施設の事前指定,段階的避難などを検討すべきである。また,緊急被ばくへの医療対応ができるよう体制の拡充整備と被ばく医療を担う医療者の育成も急務である。
著者
明石 真言 蜂谷 みさを 朴 相姫 高井 大策 安藤 興一 平間 敏靖
出版者
独立行政法人放射線医学総合研究所
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

放射線による血液中アミラーゼレベルの上昇の機序を明らかにするために、唾液アミラーゼの産生、分ヨ泌機構の変化の2つ分けて検討を進めた。マウス、ラット放射線によりマウス、ラット血液中のアミラーゼ活性は増加し、唾液中では減少した。ヒト唾液腺由来の細胞株では、放射線により活性の上昇が観察されなかった為、マウス耳下腺細胞の初代培養を行った。初代培養細胞内のアミラーゼのレベルを免疫染色法、Western法で調べた。照射により分泌顆粒の数は減少し、細胞のアミラーゼレベルは線量に依存して減少した。一方培養液中には上昇が観察された。この細胞は放射線によりapoptosisは誘導されなかった。マウス、ラットの導管を機械的に結紮したところ、血液中のアミラーゼが上昇した。これらのことより、唾液腺で産生されたアミラーゼが何らかの機序で血液中に逸脱している可能性を示した。ヒトアミラーゼを導管より投与し血液中のアミラーゼ活性を非変性ゲルで泳動、染色したところ、照射マウスでヒトアミラーゼが増加していた。光顕像で照射されたラットの耳下腺を非照射と比べると間質腔が広がり浮腫像を呈し分泌顆粒の減少(縮小化)、また一部の腺房細胞に空胞がみられた。さらに、ラットの静脈よりマーカーを投与し、電子顕微鏡で耳下腺の腺房細胞を観察した。マーカーの分子量に係らず、照射ラットでは細胞間隙を通って腺腔にマーカーが観察されたが非照射ラットでは観察されなかった。また唾液腺導管よりマーカーを投与すると、、照射ラットでは細胞内にも観察された。唾液腺細胞は細胞分裂をあまり行わず、放射線抵抗性であると考えられていることから、放射線による血液中のアミラーゼ活性の上昇は、apoptosisや細胞での産生増加によるのではなく細胞間のtight junction機構が破綻し、細胞間隙に漏出したアミラーゼが血液中に逸脱する可能性が示唆された。
著者
近藤 久禎 島田 二郎 森野 一真 田勢 長一郎 富永 隆子 立崎 英夫 明石 真言 谷川 攻一 岩崎 泰昌 市原 正行 小早川 義貴 小井土 雄一
出版者
国立保健医療科学院
雑誌
保健医療科学 (ISSN:13476459)
巻号頁・発行日
vol.60, no.6, pp.502-509, 2011-12
被引用文献数
1

背景:2011年3月11日に発生した東日本大震災による地震と津波は東京電力福島第一原子力発電所を襲い,甚大な被害を引き起こし,多量の放射性物質を環境中に放出した.この事故対応において,多くのDMAT隊員が派遣された.今回,その活動について意義を検証し,今後のDMAT活動,緊急被ばく医療における課題を提示することを目的とした.方法:高線量被ばく・汚染(緊急作業従事者)への緊急被ばく医療対応,住民対応,入院患者の移送対応などDMAT活動実績をまとめ,課題を抽出した.結果:DMATの入院患者移送対応は,福島第一原子力発電所から20〜30km圏内の病院を対象に3月18日〜22日に行われた.入院患者454名を搬送したが,搬送中の死亡は防げた.DMATは緊急被ばく医療体制でも重要な役割を果たした.DMATは原子力発電所からJビレッジを経由し二次被ばく医療機関,三次被ばく医療機関に分散搬送する流れをサポートする体制を確立した.その為の,研修会の実施といわき市内へのDMATの待機のための派遣を行った.いわき市内へのDMAT派遣は,いわき市立総合磐城共立病院を拠点として,4月22日から9月7日まで22次隊,のべ127名が派遣された.DMATによる住民一時立入り対応においては,中継基地における医療対応を行った.具体的には,会場のコーディネーション,Hotエリアの医療対応を行うとともに,救護班としても活動した.活動期日は5月3日から9月2日のうち60日に及び,スクリーニング・健康管理の対象者は14700人以上で,さらに傷病者131名に対応した.これらの活動を通じて,重篤な傷病の発生,スクリーニングレベルを上回る汚染は,DMATが活動したところにおいては,ともになかった.考察:本邦の緊急被ばく医療体制は,原子力施設立地道府県の地方自治体毎に構築されており,いくつかの問題が指摘されていた.問題の一つは放射線緊急事態への対応の教育,研修はこれらの地域のみで行われていたことである.さらに,他の災害との連携,整合性に問題があることはたびたび指摘されていた.DMATが医療搬送を行うことにより,454名の患者を安全に搬送したことと,住民一時立入りでのDMATの活動の意義は深かった.今回の事故対応の経験から,被ばく医療も災害医療の一つであり,災害医療体制との整合性は必須であることが示唆された.今後は,やはり災害医療体制の中で,緊急被ばく医療もしっかりと位置付けられることが必要である.そのような観点からの緊急被ばく医療体制のあり方について研究していくことが今後は必要である.
著者
谷川 攻一 細井 義夫 寺澤 秀一 近藤 久禎 浅利 靖 宍戸 文男 田勢 長一郎 富永 隆子 立崎 英夫 岩崎 泰昌 廣橋 伸之 明石 真言 神谷 研二
出版者
一般社団法人 日本救急医学会
雑誌
日本救急医学会雑誌 (ISSN:0915924X)
巻号頁・発行日
vol.22, no.9, pp.782-791, 2011-09-15 (Released:2011-11-15)
参考文献数
7
被引用文献数
1 2

東日本大震災は,これまでに経験したことのない規模の地震・津波による被害と福島第一原子力発電所の事故を特徴とした複合型災害である。3月11日に発生した地震と巨大津波により福島第一原子力発電所は甚大な被害を受けた。3月12日には1号機が水素爆発を起こし,20km圏内からの避難勧告が出された。14日には3号機が爆発,15日の4号機爆発後には大量の放射性物質が放出されるという最悪の事態へと進展した。一方,この間,原子力災害対応の指揮本部となるべく福島県原子力災害対策センターも損壊を受け,指揮命令系統が十分に機能しない状態となった。20km圏内からほとんどの住民が避難する中で,医療機関や介護施設には推定でおよそ840名の患者が残されていた。これらの患者に対して3月14日に緊急避難が行われた。しかし,避難患者の受け入れ調整が困難であり,重症患者や施設の寝たきり高齢患者などが長時間(場合によっては24時間以上)にわたりバス車内や避難所に放置される事態が発生した。不幸にも,この避難によって20名以上の患者が基礎疾患の悪化,脱水そして低体温症などで死亡した。一連の水素爆発により合計15名の作業員が負傷した。その後,原子炉の冷却を図るべく復旧作業が続けられたが,作業中の高濃度放射線汚染による被ばくや外傷事例が発生した。しかし,20km圏内に存在する初期被ばく医療機関は機能停止しており,被ばく事故への医療対応は極めて困難であった。今回の福島原子力発電所事故では,幸い爆発や放射線被ばくによる死者は発生していないが,入院患者や施設入所中の患者の緊急避難には犠牲を伴った。今後は災害弱者向けの避難用シェルターの整備や受け入れ施設の事前指定,段階的避難などを検討すべきである。また,緊急被ばくへの医療対応ができるよう体制の拡充整備と被ばく医療を担う医療者の育成も急務である。