著者
丹羽 哲也
出版者
日本語学会
雑誌
日本語の研究 (ISSN:13495119)
巻号頁・発行日
vol.6, no.4, pp.95-109, 2010-10-01

相対補充連体修飾関係は、修飾節と主名詞との意味関係においては様々であるが、主名詞が相対名詞で、それを修飾節が補充する関係にあるという点で共通し、「名詞+助詞」が相対名詞を補充する関係と並行的である。相対修飾の修飾節はモノ(人・具体物など)を表す「モノ相対節」と事柄を表す「コト相対節」とに分けられるが、モノ相対節の中に、現代語では成り立たずに中古語では成り立つという一つのタイプがある。中古語には準体節が存在し、それが相対節と対応することにおいて、現代語では表し得ない種類の相対節を可能にしていたと推測される。
著者
丹羽 哲也
雑誌
文学史研究 (ISSN:03899772)
巻号頁・発行日
no.46, pp.92-104, 2006-03

一 はじめに : 現代語の文法研究の分野では、係助詞と副助詞の区別を廃して、「取り立て助詞」という品詞を設定することが多くなりつつある。取り立て助詞として挙げられる助詞には、益岡・田窪(一九九二:50)によると、 / (1)は、も、さえ、でも、すら、だって、まで、だけ、ばかり、のみ、しか、こそ、など、なんか、なんて、くらい / がある。……
著者
丹羽 哲也
雑誌
文学史研究 (ISSN:03899772)
巻号頁・発行日
no.61, pp.26-44, 2021-03-30

一 助動詞化した「モノダ」「コトダ」 : 形式名詞「モノ」「コト」と「ダ」が熟合し助動詞化したモノダ文・コトダ文の用法分類は、諸研究間で大差はない。ここでは井島(二〇一二)の分類と例文を示す。
著者
丹羽 哲也
出版者
大阪市立大学国語国文学研究室文学史研究会
雑誌
文学史研究 (ISSN:03899772)
巻号頁・発行日
no.60, pp.56-70, 2020-03

一 カキ料理構文と非飽和名詞 : (1) a 広島がカキ料理の本場だ。 / b カキ料理は広島が本場だ。 / (1)bのように、「XはYがZだ」という二重主語構文において、「YがZだ」が指定関係にあり、かつ、「YがZだ」全体がXの属性を表す関係にあるものは、カキ料理構文と呼ばれる。この構文の成立条件について、西山(二〇〇三:276)は次のように規定する。……
著者
丹羽 哲也
雑誌
人文研究 (ISSN:04913329)
巻号頁・発行日
vol.44, no.13, pp.1115-1150, 1992

副助詞には、程度用法aと取り立て用法bを合わせ持つものがある。……
著者
丹羽 哲也
出版者
大阪市立大学国語国文学研究室
雑誌
文学史研究 (ISSN:03899772)
巻号頁・発行日
no.51, pp.44-58, 2011-03

一 はじめに : 連体修飾構造は、その主要な部分が、連体節によるものと連体助詞「の」によるものとによって占められるが、両者は別々に論じられることが多い。これらを統合して論じるのが望ましいことは言うまでもないが、連体「の」の研究が不十分にしか進んでいない現状では、全体的な考察をすることは難しい。本稿は、連体節の「内の関係」と、「外の関係」の「内容補充」と「相対補充」という三者に、それぞれに大まかに対応する連体「の」を加えることで、この三者の性格付けや分類法を検討するという方法を取り、ある程度の統合的な考察をめざす。
著者
丹羽 哲也
雑誌
人文研究 (ISSN:04913329)
巻号頁・発行日
no.61, pp.81-111, 2010-03

本稿は、逆体助詞「の」の用法記述のための1つの観点を提案するものである。「XのY」の間に成り立つ関係を、要素XまたはYが抽象的な形で内在している場合、そのX・Yを「関係項」、内在していないX・Yを「自立項」と呼ぶ。それによって、「XのY」は、(ア)Xが関係項で、Yが自立項であるもの(修飾部関係項型)、(イ)Yが関係項で、Xが自立項または関係項であるもの(主名詞関係項型)、(ウ)X・Yともに自立項であるもの(関係不明示型)という3種類に大別できる。関係項と自立項は連続的な関係にあり、これら3種も相互に連統的である。関係不明示型は、「XのY」の関係が運用論的な推論によって補完されるが、「XがYを所有する」「XにYが存在する」「XがYに存在する」等々いくつかの関係が慣用化しており、それらは、X・Yの一方がもう一方に何らかの点で内在・付随する関係でなければならないという制約がある。文脈の支えによって臨時的な関係が成り立つ場合も、その制約の延長上にある。ある「XのY」の例が(ア)(イ)(ウ)のどれかを満たすものであっても、「な」「という」「による」など他の形式と競合して、「の」が用いられないという場合も少なくない。
著者
丹羽 哲也
出版者
大阪市立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

日本語視点・基準点に関わる問題の中で、主として次の二つの問題について成果を得た。(1)名詞を中心とする構文、すなわち連体修飾表現において、助詞「の」の意味用法、連体節と「名詞+の」との関係、被修飾名詞の意味的な分類、現代語と中古語との構造上の相違といった問題について新たな知見を得た。(2)近世の浄瑠璃詞章において、敬語表現などがどのような基準・視点から選択されるかという問題を考察し、文法だけでなく文体的側面の重要性を示した。