著者
西脇 智子
出版者
実践女子大学短期大学部
雑誌
実践女子大学短期大学部紀要 = The Bulletin of Jissen Women's Junior College (ISSN:24344583)
巻号頁・発行日
vol.40, pp.69-83, 2019-03-09

社会福祉法人日本点字図書館の前身となる日本盲人図書館を創設したのは本間一夫である。疎開先の北海道増毛にある本間の生家に置いてきた蔵書の一部が帰館した。そのうち点字出版書を対象に本年9 月までに収集した諸事象を補充し発行所の別に再考した結果、当時の点字図書の一部でもある27 件の点字出版所が製版発行した点字図書であることが判明した。これらは点字出版事業史を裏付ける貴重な資料であることが推察された。
著者
久保田 佳枝
出版者
実践女子大学短期大学部
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2018-04-01

本研究の目的は、米国にて開発されたサイコロジカル・キャピタル(PsyCap)尺度の日本語版尺度を作成し、作成した日本語版およびオリジナルの英語版PsyCap尺度を用いて日米における質問紙調査および統計的分析を通して、①国際比較可能な日本語版尺度の確立および②世界で初となる日本人従業員のPsyCapと職場関連要因との関係性の解明を目指すことである。2018年度の目的は、代表者が前年度までに作成し収集してきた日本語版尺度をさらに改良し、日米における調査を行った後、項目反応理論に基づき分析を行い、日本語版尺度を完成させることであった。しかしながら2017年度末にそれまでの分析結果から研究手続を変更した。その変更に伴い、2018年度は、その後の研究手順の見直し等を行うことに時間を要したため、申請時に計画した通りに米国人を調査対象とした英語オリジナル版を用いた質問紙調査まで至らなかった。研究手続の変更については、以下の通りである。2017年度の日本語版尺度の分析結果をもとに、さらなる分析を行い、尺度に微修正を加えた。そのため、2017年度末に再度日本人従業員を対象に修正版日本語版尺度を用いた調査を実施した。2018年度にその信頼性と妥当性の検証等に関する分析を行った。2019年度は、2018年度に同時に実施する予定であった米国人を対象としたオリジナル英語版を用いた調査を実施し、2017年度末に収集した日本人データとともに項目反応理論による分析を行う予定である。PsyCapと職場関連要因との関係性の解明については、予定通り行う見通しである。
著者
宮木 孝子
出版者
実践女子大学短期大学部
雑誌
実践女子大学短期大学部紀要 = The Bulletin of Jissen Women's Junior College (ISSN:24344583)
巻号頁・発行日
vol.40, pp.115-135, 2019-03-09

室生犀星は、昭和三七年、自ら編集した『室生犀星全詩集』において、詩集『美以久佐』の詩をすべて削除した。理由は「戦争雰囲気のある詩」の「心のにごりを見たくない」というものであった。この削除の意味については、既に中野重治、伊藤信吉等によって述べ尽くされている観があるが、本稿では、その削除された詩をも含め、当時の犀星の周辺を視野に入れ、犀星の戦争詩の特性を考察したい。
著者
霜村 光寿
出版者
実践女子大学短期大学部
雑誌
実践女子大学短期大学部紀要 = The Bulletin of Jissen Women's Junior College (ISSN:24344583)
巻号頁・発行日
no.40, pp.85-94, 2019-03-09

金栗四三は,戦前にはマラソン選手としてオリンピックに出場するほどの活躍を遂げ,その後は箱根駅伝を発案するなど,日本における陸上競技の普及に大きく貢献した。その業績から日本の「マラソンの父」とも呼ばれ,2019 年のNHK 大河ドラマの主人公として取り上げられるなど注目されているが,金栗についての体系的な研究はまだ少ない。今後の金栗研究の発展に寄与すべく,本稿では金栗の著作を中心に文献目録を作成した。
著者
大塚 みさ
出版者
実践女子大学短期大学部
雑誌
実践女子大学短期大学部紀要 = The Bulletin of Jissen Women's Junior College (ISSN:24344583)
巻号頁・発行日
no.40, pp.57-67, 2019-03-09

近年、媒体を問わず国語辞書の売れ行きは低迷傾向にある。筆者による調査結果では、大学生は辞書の代わりにスマートフォンを使用する傾向が見えるが、辞書アプリに代わってサーチエンジンやハッシュタグ検索が多く行われつつある。こうした状況下で、意味の分からない語への対処の実態を把握するにはどうしたらよいだろうか。その方法を探る目的でファッション雑誌記事における外来語を用いて行った予備調査の結果を報告する。Statistics clearly show that the number of paper and pocket monolingual electronic dictionaries published for Japanese native speakers is steadily declining. Surveys conducted by the author suggest that students have turned to smartphones as an alternative. However, fewer students seem to be using a dictionary app; instead, they use search engines or hashtag searches. Can the present state of students' reference practice̶that is, how they look up the meanings of unknown words̶be adequately captured? This paper reports a pilot study seeking insight into this issue by examining students' searches for defi nitions of loanwords in fashion magazine articles.
著者
三浦 宏文
出版者
実践女子大学短期大学部
雑誌
実践女子大学短期大学部紀要 = The Bulletin of Jissen Women's Junior College (ISSN:24344583)
巻号頁・発行日
no.40, pp.43-55, 2019-03-09

本稿では宮沢賢治の作品を引用する映画『幕が上がる』に表れた初期仏教思想を検討した。本映画中で富士ヶ丘高校演劇部員たちが吉岡先生の退職という喪失から立ち上がって行く仕方は、仏弟子達がブッダの入滅を体験する中で「自らをたよりとし、法をよりどころとして生きていく」という後の「自帰依」「法帰依」と言われる教えによって乗り越えていく姿と酷似していた。そして舞台『幕が上がる』ではそこからさらに「お互いの喪失を救い合う」という大乗仏教の境地にまで進められていたのである。This study examines concepts of early Buddhism in the movie Maku Ga Agaru (The Curtain Rises) via Buddhist writer MIYAZAWA Kenji's work as quoted in the movie. It highlights similarities between how the student drama club members recover from the loss of Yoshiyoka-sensei and how the Buddha's disciples overcame their great loss after the Buddha's nirvana by adhering to the Buddha's teachings and being self-reliant. This study also emphasizes how, in the live stage versions of Maku Ga Agaru, the members gained additional psychological depth in keeping with the Mahāyāna Buddhist principle of reciprocal help, "to save each other's losses.".