著者
中家 浩 高見 秀輝 小畑 千賀志 押野 明夫 芳賀 圭悟 千葉 充子
出版者
宮城県水産研究開発センター
雑誌
宮城県水産研究報告 (ISSN:13464329)
巻号頁・発行日
no.11, pp.5-13, 2011-03
被引用文献数
1

宮城県気仙沼市地先に位置する2漁場(海底勾配が小さく弓状に湾入した場所:漁場A、海底勾配が大きく岬状に突出した場所:漁場B)を調査海域に設定し,両海域に生息するエゾアワビの成熟過程,浮遊幼生出現動態,初期稚貝の着底密度およびその後の生残について比較を行い,親貝集団造成の効果が発揮される漁場環境の検討を行った。1)エゾアワビの生殖腺指数は台風の後近通過後に大きく減少した。台風の接近のない年は,水温変化,小さな波浪による波高,流速が産卵の引き金になることが推定された。2)浮遊幼生の高密度出現後の3日連続水平分布調査から,漁場Aでは少量多回産卵・地先滞留型,漁場Bでは大量一回産卵・広域分散型である可能性が得られた。3)着底直後の着底密度と,それから約3カ月後の分布密度には有意な正の相関関係が見られたが,着底直後の着底密度が1,000個体/m2以上など非常に高い場合には密度効果が生じることが考えられた。4)殻長が8mm以上に成長した稚貝では,着底直後の初期稚貝と比較して生残が安定し,漁場A,B間では同等に生残・成長することが考えられた。
著者
小野寺 毅 渡邊 一仁 芳賀 圭悟 伊藤 大介 伊藤 博 及川 浩人
出版者
宮城県水産研究開発センター
巻号頁・発行日
no.13, pp.7-14, 2013 (Released:2015-06-24)

宮城県北部に位置する志津川湾において,平均全長65mmのホシガレイ種苗を6月下旬から7月上旬に放流し,平均全長100mmで9月上旬から中旬に放流し,両者の回収状況を比較した。1) 6月下旬から7月上旬に放流した小型種苗の回収状況は,9月上旬から中旬に放流した大型種苗のそれと同等あるいは上回った。2) 従来の放流方法で実施した大型種苗の経済回収率は0.66であったのに対し,小型種苗のそれは1以上であった。3) 志津川湾では6月中旬から7月上旬に湾奥の河口付近の波打ち際から平均65mmで放流するのが経済的である可能性が示唆された。
著者
柴久喜 光郎 高橋 清孝 上田 賢一
出版者
宮城県水産研究開発センター
巻号頁・発行日
no.16, pp.21-30, 2000 (Released:2015-04-17)

1. 気仙沼市魚市場で扱われているサメ類の銘柄名と標準和名を照合する現地調査を行い,15銘柄中10銘柄を魚種査定した結果,11種を確認した。2. 「毛鹿さめ」,「吉切」,「勝さめ」,「平頭」,「油さめ」の5銘柄は,それぞれ,単一種で構成されていた。また,「尾長さめ」,「真尾長」,「丁さめ」,「目白さめ」,「さめ」の5銘柄は複数種含むことがわかった。3. 確認した11種に加え,頭部のない魚体から種の判定ができないサメが「目白さめ」にあったこと,現場で確認できなかった銘柄が5つあることから,気仙沼市魚市場には12種類以上のサメ類が水揚されていた。4. 5銘柄が単一種としてヨシキリザメ,ネズミザメ,アブラツノザメ,アオザメ,ヨゴレと同定されたので,これらの魚種については水揚量の把握が可能となった。これら5種の合計水揚量は全体の98%を占めた。5. 複数種または銘柄で重複がみられる種の水揚量の把握は,継続して魚種組成を定期的に調査する必要がある。この中で比較的水揚の多いオナガザメ科のサメは,頭部等がない状態でも種の判別が可能なので,水揚量の把握が望まれる。
著者
白石 一成
出版者
宮城県水産研究開発センター
巻号頁・発行日
no.3, pp.45-51, 2003 (Released:2011-03-05)

宮城県北部の浅海岩礁域5箇所において、アワビ類とウニ類、海藻類および植食動物、肉食動物の現存量調査を実施した結果、キタムラサキウニでは水深が深い所により多く、無節サンゴモとの関連がみられた。更に、植食動物のクボガイではホンダワラ類のアカモクや小型海藻類を、バテイラでは大型海藻類のアラメを餌料および棲息場として利用していると考えられた。エゾアワビでは、その出現がアラメの分布と関係することから、バテイラとの間で餌料の競合関係にあるとみられた。また各箇所で、アワビ類、ウニ類および植食動物は、餌料となる海藻類に制約される形で出現していることも明らかとなった。一方、肉食動物のヤドカリ類とイトマキヒトデは各箇所で出現が認められたが、海藻類の少ない箇所ではヤドカリ類が多く出現しアワビ類等の幼稚仔がより捕食され易い状況にあるものと考えられた。
著者
永島 宏 村瀬 弘人 米崎 史郎
出版者
宮城県水産研究開発センター
雑誌
宮城県水産研究報告 (ISSN:13464329)
巻号頁・発行日
no.8, pp.15-25, 2008-03
被引用文献数
5

春季仙台湾周辺海域に分布する優占種であり、ミンククジラの餌生物として重要であると共に、沿岸漁船漁業の漁獲対象資源であるイカナゴ、ツノナシオキアミについて、計量魚探による音響調査時の魚種確認中層トロール採集で得られたデータを基に、魚群音響エネルギー・形状・分布水深・分布環境に関する計測データから、魚探反応魚種を判別する方法を検討した。その結果、判別対象群の母平均推定量とのマハラノビスの汎距離が最短になる群を判別群とすることで、的中率が96%になる判別方法が得られ、今後の音響調査の効率化と客観性が高められた。