著者
新家 憲 郭 桂芬
出版者
専修大学北海道短期大学
雑誌
環境科学研究所報告 (ISSN:13464736)
巻号頁・発行日
vol.8, pp.181-192, 2001-12-30

中国黒竜省の三江平原は年間降水量がわずか500〜600 mmである。さらに降水が一様でなく60〜70%が7〜8月に降る。冬と春はほとんど雨が降らない。夏に降った雨を地下に保持しておくため、高圧空気で地下ダムを人工的に作ることを試みた。人工の地下ダムをつくるには水平の土壌空洞を地下につくる必要がある。そこで本報では、まず種々の土壌の通気係数を測定し、通気係数がどのような値の時に水平の空洞が生じて土壌が破壊するかを明らかにした。主な結果として、通気係数kの値が10^1 m^2/sMPaのとき、空気圧送によって土壌が流動現象で壊れるかV型に壊れるかの境界である。通気係数kの値が10^1〜10^<-1> m^2/sMPaの値の時、空気圧送によって土壌はV型の破壊が起り、10^<-1>m^2/sMPa以下では空洞の形成が起った。10^<-1> m/sの値は、この境界値と考えられる。本報の目的である白漿土のB層および草旬土のCgl層に空気圧送によって、水平の空洞を形成しようとする時、k値が10^<-1> m^2/sMPa以下になるためには、両層とも土壌水分が30% d.b.以上である必要がある。
著者
新家 憲 郭 桂芬 渋谷 義樹
出版者
専修大学北海道短期大学
雑誌
環境科学研究所報告 (ISSN:13464736)
巻号頁・発行日
vol.10, pp.53-66, 2003-12-30

中国の河北省と内蒙古自治区は年間降水量がわずか300〜400 mmである。さらに降水が一様でなく70%が7〜8月の夏に降る。冬と春はほとんど雨が降らない。この地帯の土壌は白干土と言われ、非常に硬く、不透水層を形成している。このため土壌は、この雨水を吸収できず大部分が表面水として流出してしまう。夏に生じた過剰表面水を、この不透水層を利用して、白干土の地下に保持しておくことを構想した。このため、高圧空気で地下水層を人工的に作ることを試みた。この地下水層の水は、春の早ばつ期に毛管水として、牧草に利用される。人工の地下(ダム)をつくるには水平の土壌空洞を地下につくる必要がある。そこで本報では、まず種々の土壌の通気係数を測定し、通気係数がどのような値の時に水平の空洞が生じて土壌が破壊するかを明らかにした。主な結果として、通気係数k_aの値が5 kg/smMPaのとき、高圧空気圧送によって土壌が流動現象で壊れるかV型に壊れるかの境界である。通気係数k_aの値が5〜0.2 kg/smMPaの値の時、空気圧送によって土壌はV型の破壊が起った。0.2 kg/smMPa以下では水平空洞の形成が起った。0.2 kg/smMPaの値は、この境界値と考えられる。本報の目的である白干土のBca層またはC層に空気圧送によって、水平の空洞を形成しようとする時、k_a値が0.2 kg/smMPa以下になるためには、両層とも土壌水分が25% d.b.以上である必要がある。
著者
郭 桂券 新家 憲 賈 会彬 張 志剛 近江谷 和彦 松田 従三
出版者
専修大学北海道短期大学
雑誌
地域総合科学研究センター報告 (ISSN:18815677)
巻号頁・発行日
vol.1, pp.57-72, 2006

夏にある程度の雨が降る地帯のアルカリ土壌の新しい改良方法として、心土に粗粒層を設置して、地下水の毛管上昇を遮断することを考えた。これにより地下水に溶けている塩類の毛管による地表への上昇は押さえられるし、例え地下水位が高くとも、地表からの水の蒸発を防ぐことができると考えられる。かつ、表土にすでに蓄積されている塩類は、夏の降雨によって下層へ洗い流されると考えられる。すなわち、この方法は地下水位を下げることと同等な効果が期待できる。本報では、ほんとうに、このようなことが起こるか、実験室で模型の土壌シリンダをつくって、この現象を実証してみた。主な結果として、日本の擬似グライ土シリンダのpH値は、初め5.9(酸性)であったが、Na_2CO_32%溶液を浸潤したことによって、どの層のpH値も9.7〜10.8に増加した。すなわち、アルカリ土壌(sodicsoil, solonetz)が生成された。遮断層をもたない土層(自然状態)では、その後Na_2CO_32%溶液の毛管上昇と300mmの給水(降雨)の繰り返しの結果、表層、Ap層、B層、C層ともpH値は約9.8に安定した。この状態は自然のソロネッツ土層に相当すると考えられる。含水比はどの層の約50%d.b.に一定となった。EC値は300mm給水によって大きな減少が起った。しかしNa_2CO_3の毛管上昇により再度、EC値の増加が起こった。安定したNa_2CO_3の毛管上昇時のEC値は約300mSm^<-1>であった。この値は自然のソロネッツ土壌のEC値に、ほぼ合倒するこれに対し、遮断層をもつ土層(処理状態)では、遮断層より上の表層、Ap層、B層のpH値は降雨によって序序に減少した。Na_2CO_3の毛管上昇期間にpH値が上昇することはなかった。約3900mmの降雨(6.5年分)が各土層のpH値が7.5になるまでに必要であった。測定中、最低の含水比は地表で17.6%d.b.であった。遮断層より下のC層の含水比は、約60%d.b.に一定となった。遮断層より上の表層、Ap層、B層のEC値は変動は小さく、結局約50mSm^<-1>の値に収斂した。しかし遮断層より下のC層のEC値は遮断層を持たない土層と同様に大きく変動した。
著者
新家 憲 吉田 光広 郭 桂芬 近江谷 和彦 松田 従三 渋谷 義樹 張 会均
出版者
専修大学北海道短期大学
雑誌
環境科学研究所報告 (ISSN:13464736)
巻号頁・発行日
vol.11, pp.101-115, 2004-12-30

雨が夏季のみ集中して降る地帯において、夏に降った雨水を地下1mに貯水し、湿害を防ぐと同時に春の干ばつ期に、この水分を毛管水として作物に利用することを構想した。このため地下水層を人工的につくる機械を開発する。本報では高圧空気でつくられた地下の水平空洞(貯水槽)に砂を充填する装置(サンドガン)の開発について述べる。結果として、最適なサンドガンの構造は、砂をまずインジェクターの中に充填する。高圧空気を、この砂柱の上端に作用させる。したがって砂は連続的に噴出するのではなく、バッチで噴出する構造である。この構造では、例え土がノズルに詰っても高圧空気で、これを吹き飛ばすことができる。中国の砂も、日本の砂も土壌水分が異なると砂をノズルから噴出するのに必要なチャージタンク圧は異なった。両砂とも土壌水分10%d.b.で噴出に必要なチャージタンク圧は最大となり0.4MPaとなった。中国の砂と日本の砂で砂の移動距離はほとんど変わらなかった。土壌水分が10%d.b.の時、砂移動に必要なチャージタンク圧も最大となった。この時、砂移動に必要なチャージタンク圧は0.8MPaであった。砂移動に必要なチャージタンク圧は砂噴出に必要なチャージタンク圧より常に大きくなった。したがって、砂を地下空洞に充填する時、チャージタンク圧は砂移動に必要なチャージタンク圧とする必要がある。ノズルの数が複数あっても、順次抵抗の少ないノズルが働いて砂が噴出し、砂が空洞全体に充填された。
著者
新家 憲 郭 桂芬 近江谷 和彦 松田 従三 賈 会彬 石 風善 李 東才
出版者
専修大学北海道短期大学
雑誌
環境科学研究所報告 (ISSN:13464736)
巻号頁・発行日
vol.11, pp.143-147, 2004-12-30

アルカリ土壌の改良を目的として4段式心土混層プラウが設計試作された。2003年5月に、この4段式心土混層プラウで中国黒龍江省大慶市で試験圃場が施工された(2ha)。2004年7月に、この試験圃場で土壌調査、および作物の生育調査を行った。主な結果は対照区では表層0〜5cm(Ana層)に2.5MPaの硬い層があった。その下は深さ90cmまで1.0〜1.5MPaであった。処理区は表層も軟らかく、深さ90cmまで0〜1MPaであった。したがって1年間で土壌硬度は復元しなかった。処理区も対照区も、pH値は9-10であり、きわめて強いアルカリであった。したがってB層への堆肥施用だけでは、pH値を下げることはできない。pH値を下げるには、毛管による地下水の上昇を遮断する方法など、他の方法を考える必要がある。処理区の水分は対照区の水分より明らかに高かった。処理区では降った雨が深さ30〜50cmの心土(B層、C層)に保持されていた。対照区の表層であるAna、A層の水分が約5%d.b.と低かった。この理由は降雨があっても、土壌硬度が高く、クラストしているため、土壌中に浸透できず、表面水として流れ去ってしまうものと考えられる。一見して処理区と対照区の草丈に大きな差があった。処理区の野生草の草丈は約45cmであるのに対して、対照区では15cmであった。処理区では根は、C層に達していて、約50cmであった。対照区では、B層まで達していて、その深さはせいぜい30cmであった。
著者
賈 会彬 張 会均 新家 憲 郭 桂券 張 志剛 近江谷 和彦 松田 従三
出版者
専修大学北海道短期大学
雑誌
地域総合科学研究センター報告 (ISSN:18815677)
巻号頁・発行日
vol.1, pp.73-92, 2006

夏にある程度の雨が降る地帯のアルカリ土壌の新しい改良方法として、心土を焼結することによって土壌を粗粒化して、地下水の毛管上昇を遮断することを考えた。これにより地下水に溶けている塩類の毛管による地表への上昇は押さえられるし、例え地下水位が高くとも、地表からの水の蒸発を防ぐことができると考えられる。かつ、表土にすでに蓄積されている塩類は、夏の降雨によって下層へ洗い流されると考えられる(leaching)。すなわち、この方法は地下水位を下げることと同等な効果が期待できる。本報では、土壌を焼結する温度の違いによって、土粒子が、どの程度粗粒化するか、さらに、焼結によって、毛管水の上昇高さが、どの程度減少するかを実験した。主な結果として、土壌焼結によって、起こる現象は、どの土壌も類似していた。焼結温度が高いほど土壌は粗粒化して、土色も黒いガラス質の光沢のある部分が多くなった。焼結していない土壌を蒸留水の中に浸潤させると、土粒子が分散して、細い粘土粒子となり、水の中に懸濁した。この懸濁液は長時間放置しても粘土粒子が細いため、もとにもどらなかった。800℃以上で焼結した土壌では、全く土粒子の水中分散は見られず、水は透明のままであった。すなわち、土壌焼結温度は800℃以上とすべきである。焼結していない壌では、土壌の平均粒径は、すべて0.005〜0.013mmで細かった。これらの土壌を焼結すると急速に土粒子が結合して粗くなり、焼結温度が一番低い600℃の時でも、約4mmとなった。焼結温度が1300℃のように充分高いと、平均粒径は約8mmとなった。焼結していないアルカリ土壌の毛管水上昇高さは、どの土壌も数mと推定される。焼結すると、焼結温度が一番低い600℃の時でも、毛管上昇高さは0.15m以下となった。焼結温度が1000℃以上になると毛管上昇高さは0.09m以下であった。このように、B層のすぐ下の心土を約100mmの厚さで焼結することができれば、毛管による地下水の上昇を遮断することができると考えられる。これによって、蒸発による水の損失を防ぐことができるし、雨季には塩類の洗脱が期待できる。
著者
小林 昭裕
出版者
専修大学北海道短期大学
雑誌
環境科学研究所報告 (ISSN:13464736)
巻号頁・発行日
vol.10, pp.1-12, 2003-12-30

自然公園における過剰利用抑制策として車両規制が各地で導入されている。車両規制の実施には利用者の理解が不可欠であり,利用者から見た車両規制の評価を踏まえ,現在の車両規制制度の課題を検討する必要がある。本研究では,1997年から車両規制を導入した大雪山国立公園高原沼めぐり地区および1999年から車両規制を導入したカムイワッカ地区を事例に,1999年〜2001年の3ヵ年にわたる車両規制に対する利用者の評価をもとに,利用者の車両規制に対する支持に関与する要因を捉え,利用規制に対する利用者からの支持・理解を得るための課題について検討した。また,3ヵ年にわたる調査結果から,調査手法上の課題について検討を加えた。