著者
平尾 光司
出版者
専修大学社会科学研究所
雑誌
専修大学社会科学研究所月報 (ISSN:0286312X)
巻号頁・発行日
vol.558, pp.2-70, 2009-12-20

平尾光司教授退職記念研究会;[2009年]3月14日(土)都市センターホテル708会議室
著者
小川 健
出版者
専修大学社会科学研究所
雑誌
専修大学社会科学研究所月報 = The Monthly Bulletin of Social Science (ISSN:0286312X)
巻号頁・発行日
vol.633, pp.37-46, 2016-03-20

本稿では一時期注目され、その後も派生の登場を含めて独自の進化を遂げている暗号通貨の先駆け、ビットコインについて取り上げる。ビットコインはブロックチェーンと呼ばれる暗号技術の発展・普及に大いなる役割を果たしたこともあり、その歴史的意義は決して小さくない。また、伝統的には貨幣が機能するには中央銀行の役割が欠かせなかったが、中央銀行が存在しない通貨に関する近年の実例を提供したことから、その教育的意義も大きい。こうした仮想通貨を通貨として正式採用の動きも見て取れる。しかし、現状ビットコインなどの普及率は(決済手段の1つとして普及し始めてはいるものの)決して高くはない。この状況でビットコインを国などの法定通貨に採用することは、国際的な資本移動を制限しない限り、効果的な短期的経済政策の手段を失うことに繋がるので望ましくない。この事項は(当たり前とも取れるような)比較的簡明な理由によるものであり、学部生の国際金融のテキストにも直ちに取り入れられても不思議はない。しかし、ビットコインが登場してまだ年数が浅いこともあり、学部生のテキストへの採用事例も少なく、本稿のような形での記載例はあまり見かけない。そこで本稿では現在の状況では、国際金融の学部生のテキストにも記載可能な形でビットコインを、国の法定通貨として正式に採用・普及させることは適さないことを示す。
著者
広瀬 裕子
出版者
専修大学社会科学研究所
雑誌
社会科学年報 (ISSN:03899519)
巻号頁・発行日
vol.48, pp.193-211, 2014-03-10 (Released:2014-06-26)

本稿は、2000 年代に日本で繰り広げられた学校の性教育に対する批判キャンペーンに対する政府対応の経緯を考察し、文部科学省の官僚的なルーティーンに徹した対応が、高揚していた性教育批判の言説を限定化する緩衝剤として機能した様子を浮き彫りにする。2002 年の国会審議から始まった学校の性教育に対する組織的な批判は、中央および地方レベルの動きが呼応する大掛かりなものであった。東京都では性教育実践に関わって行われた教員処分が訴訟にまで発展するというケースも発生した。こうした性教育に対する組織的批判は、性教育の授業実践に萎縮ムードを生んだ一方で、学校の性教育に関する初めての全国調査の企画を具体化させ、それまで明らかにされていなかった性教育実践の実態が明らかにされることにもなった。得られたデータが示すのは、学校の性教育に対する批判は必ずしも社会に広い支持を得ていたわけではないということであった。性教育の処遇の再検討を始めた文部科学省は、性教育批判を精力的に進めていた自民党を与党の動きと呼応しながらも、中教審に検討をゆだねるなど通常のルーティンに則った対応に徹し、結果的に批判を沈静化させる緩衝材として機能した。