著者
石井 満
出版者
尚美学園大学
雑誌
尚美学園大学芸術情報学部紀要 (ISSN:13471023)
巻号頁・発行日
vol.11, pp.1-12, 2007-03-31

テレビジョン放送におけるクイズ番組を、その出題傾向から分類すれば、知識を問う知識指向タイプと、謎掛けに近いパズル指向タイプに分けることができる。後者の番組内でなされる出題の映像表現には、言語とイメージのレヴェルを跨いだ多様なテクスト表層での記号表現が行われているものが見られる。その修辞技法の記述の試みとして、映像表現技法の修辞について事例に則した考察を行った。これらのクイズは、修辞学的に捉えれば、解答が規範表現で、対応する問いが、或る隔たりを設定した逸脱表現であると見ることができる。主に、解答となることばを音韻レヴェルで別の意味を成すことばに分節した後、転義的なイメージを付加的に配列したものである。イメージ記号の性質は、記号表現と記号内容が分節しがたい個別性を持っているが、ここでは言語に対応する抽象的な記号として用いられている。その修辞的技法は、映画芸術において詩的な叙述が成されていると指摘される場合の事例と非常に似た表現傾向を示す。