著者
門林 道子 真部 昌子 小濱 優子
出版者
川崎市立看護短期大学
雑誌
川崎市立看護短期大学紀要 (ISSN:13421921)
巻号頁・発行日
vol.11, no.1, pp.13-18, 2006-03-31
被引用文献数
2

2001年度から本学2年次学生対象の成人看護論の時間に、1コマではあるが闘病記を用いた授業を行って5年間が経過した。その間、2003年9月には当授業が、NHKテレビ「クローズアップ現代」の取材を受け、2004年1月「闘病記で生きる力を」のなかで「闘病記を用いて患者の心の理解をめざす」授業として放送された。昨今、「患者主体の医療」との関わりで、患者の全体像を捉える必要からEBM(エビデンス・ベイスト・メディスン)と並行してNBM(ナラティブ・ベイスト・メディスン)が重要視され、当事者に学ぶ視点から闘病記への関心も高まっている。本稿は、授業の内容と学生から得た感想などを報告し、闘病記を読むことが看護学生にとってどのような意味をもつかを考察するものである。この授業を通して、闘病記を読むことが患者の多様な生き方、病気や死との向き合い方を知る上で、また病気の痛みが身体的のみならず、精神的社会的に影響を及ぼすものであること、さらに病気が個人だけにとどまらず、関係性の中で存在することなどを理解する上で有意味であることを確認できた。闘病記は、看護教育において患者をケアする場合の参考の書として、また「いのちの教育」のテキストとしても重要な役割を果たすと考えられる。
著者
加藤 博之 長谷川 利夫
出版者
川崎市立看護短期大学
雑誌
川崎市立看護短期大学紀要 (ISSN:13421921)
巻号頁・発行日
vol.25, no.1, pp.1-14, 2020-03

「精神保健福祉資料」(以下、630調査と表記する)によると精神科病院における身体拘束実施者数は2018年度630調査において全国で11,362人に上り、630調査で身体拘束実施者数の調査を開始した2003年度と比べ約2.2倍に増えている。身体拘束実施の状況および身体拘束実施に関連する要因を明らかにするため630調査の各年度の都道府県別データ等を用いて分析を行った。その結果、身体拘束実施率には地域差が存在した。有意に高い都道府県、有意に低い都道府県が存在し、2017年度・2018年度でほぼ同様の傾向が見られた。最高と最低の開きは、2017年度11.6倍、2018年度は20.5倍にも上った。この身体拘束実施率の都道府県による違い、「東高西低」ともとれる現象はなぜ生じるのか、その要因を明らかにすることが、身体拘束の縮減につながる可能性があることが考えられた。患者の年齢は75歳以上が身体拘束実施率が有意に高かった。診断名では「F7 精神遅滞(知的障害)」「F0 症状性を含む器質性精神障害」の身体拘束実施率が有意に高く、診断名の細項目では「精神遅滞(知的障害)」「アルツハイマー病型認知症」「血管性認知症」などで有意に高かった。精神科病院における、75歳以上の患者、認知症患者や精神遅滞(知的障害)患者に対して身体拘束に代わる対応方法を見つけていく必要性は高いと考えられた。
著者
小濱 優子 荒木 こずえ 島田 祥子 藤村 真希子 赤坂 憲子 森末 真理
出版者
川崎市立看護短期大学
雑誌
川崎市立看護短期大学紀要 (ISSN:13421921)
巻号頁・発行日
vol.11, no.1, pp.61-68, 2006-03-31

2002年度から、本学での授業や行事等にメディカルアロマセラピーを取り入れ、活用してきた。成人看護学の授業、オープンキャンパス、公開講座などである。本稿は、その実践内容について紹介し、看護基礎教育における意義について考察したものである。アロマセラピーが注目される今日、アロマセラピーの正しい知識や精油を用いるときの注意点を教えることは、さまざまなトラブルを予防する上で重要である。授業に取り入れることで、学生の五感を使いリラクゼーションを感じ取る体験学習となっていると思われた。また、コミュニケーションの手段として、教育現場のメンタルケアの補助としてなど、その活用の幅が広い。看護の質を高めるツールとしても大きな可能性を感じている。
著者
小濱 優子 中村 滋子
出版者
川崎市立看護短期大学
雑誌
川崎市立看護短期大学紀要 (ISSN:13421921)
巻号頁・発行日
vol.21, no.1, pp.39-47, 2016-03

本研究の目的は、看護学生が企画・運営したアロマセラピーのボランティア活動に対して、その体験からどのような学びを得たのかを明らかにすることである。方法は、質的記述的研究デザインである。アロマセラピーのボランティア活動に参加した看護学生7名を対象とし、「ボランティア活動で学んだこと」について、無記名自由記述方式で調査し、意味のある文章のまとまりをコード化、カテゴリ化し、質的に分析した。その結果、「学び」は、【コミュニケーションの学び】、【相手の反応を観て対象を理解すること】、【相手に合わせた環境への気づき】、【ボランティアの意味への気づき】、【自己の看護への動機づけ】の5つのカテゴリに分類された。看護学生は、手を用いた"触れる"ケアを行うことによって、対象と相互に癒される関係を築くことができた。また、ボランティア体験を通して、チームの一員としての責任感を自覚し協働作業の意識向上に繋がったと考え、看護学生の自主性や社会性を育成する意義ある学びの体験であったと考える。
著者
笠井 由美子
出版者
川崎市立看護短期大学
雑誌
川崎市立看護短期大学紀要 (ISSN:13421921)
巻号頁・発行日
vol.21, no.1, pp.83-91, 2016-03

低出生体重児の退院後の母親への支援に関するニーズ・支援の実際と成果・支援の課題を明らかにするために文献検討を行った。2005 年~ 2015 年の医学中央雑誌Web を中心として文献検索を行い、国内の文献36 件を分析対象とした。低出生体重児の退院後の母親の支援に関するニーズとして、「退院後の早期支援」「専門性の高い個別アドバイス」「同じ境遇の人からのサポート」「保健サービス」が、支援の実際と成果として「親の会の開催」「個別支援」「児の成長に応じた継続した支援」が、課題として「退院後、早期の支援方法に関すること」「母子保健サービスに関すること」「親の会に関すること」「長期の継続支援に関すること」「母親の特性を医療者が理解すること」が抽出された。今後、NICU 看護師と保健師の連携方法のあり方の見直し、親の会のシステム作りの必要性と未熟児訪問回数の見直しをすることで育児ストレスの低下につながると示唆された。また、児の入院中から母親同士の交流に対する支援内容とその効果を明らかにすることが求められる。
著者
田嶋 美代子 島田 広美 ハ島 妙子 市田 和子 真部 昌子 竹内 文生 三浦 美奈子
出版者
川崎市立看護短期大学
雑誌
川崎市立看護短期大学紀要 (ISSN:13421921)
巻号頁・発行日
vol.8, no.1, pp.57-66, 2003-03-31

転倒・転落に関するインシデントの実態と発生要因を明らかにすることを目的に,A病院看護部に提出された1年間のインシデントレポートのうち,転倒・転落に関するインシデント302件を対象に分析した。その結果,転倒・転落に遭遇した患者のほぼ7割が70歳以上の高齢者であり,ほぼ全数に近い296件が看護師が傍らにいない時に発生していたことがわかった。また,インシデントレポートに記載された要因分析から読み取った要因の記述870個からは,インシデントの要因の性質として40項目が分類され,かつ,インシデントの要因が看護師の思考の全段階において生じていたことが確認された。