著者
小泉 元宏
出版者
鳥取大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究は、近年急増するアートプロジェクト(AP)を事例に、その地域社会における社会的・文化的影響を、アーティストやAPに関わる市民の社会関係に関する調査から研究してきた。結果、APが、人々の暮らしに密接に関わった場合、市民が潜在的に持つ多様な技能や知識を引き出し、それが市民も交えた新たな文化・社会活動を生むきっかけとなりうることが示された。しかし創造性を持った人々に対する地域活性化に向けた過度な期待は、時にAPにおける市民の役割に目を向けることを阻む場合もあり、既存の創造階級論の見直しの必要性が示唆された。以上の成果は国際学会報告・国際誌への論文投稿等を通じて積極的に国内外に発表している。
著者
辻 竜平 長谷川 孝治 相澤 真一 小泉 元宏 川本 彩花
出版者
信州大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2011

クラシック音楽祭を題材に文化資本と社会関係資本との関連性について検討した.また,その主題と関連する芸術至上主義的態度,音楽祭への参加と人々のアイデンティティや精神的健康についても検討した.主な調査としては,「サイトウ・キネン・フェスティバル松本」の一般のオーディエンスを対象とした調査と,中学生向けのプログラムに参加した中学生を対象としたパネル調査を行った.中学生調査では,発達過程の状態を知ることができる.主な結果として,クラシック音楽への初期接触と,クラシック音楽の好み,および,地域活動や地域への評価との間に関係があることが明らかになった.
著者
小泉 元宏
出版者
東京芸術大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2008

当該研究における最終年度にあたる本年度は、研究課題の調査研究に加え、成果のとりまとめと発表を中心的課題とした。主な実施内容は次の通りである。1.東アジア地域における国際美術展の開催形式、およびその変遷を相対化するため、欧州における先駆的事例との比較や、それらとの関係性を文献調査、インタビュー、フィールドワークなどの質的調査などを用いて分析した。なかでも、近年の国際美術展の「アートプロジェクト」化の傾向、すなわち、たとえば文化観光を用いた地域活性化など、特定の社会的課題に対して芸術諸活動を用いながらその解決を目指す活動にかんする調査を進めてきた。これは、単に芸術祭を社会における自律的な存在の文化装置としてみなすのではなく、NPO、市民、学校などの社会の諸主体と密接に結びつき、重なり合う、社会活動の一部としての芸術活動の意義や課題をみるための試みである。既存の国際美術展研究は、主に美術史や芸術学の分野から、その位置づけを行ってきたのにたいして、社会学的観点から、社会的諸主体と国際美術展やアートプロジェクト、芸術諸活動との関係性を見る研究として先駆的意義および重要性がある。2.これらの成果は、東京芸術大学における博士学位論文、「Asia Cultural Forum」、「音楽文化学」、「芸術社会学研究会」など、関係学会、研究会における諸論文や発表として、ならびに市民講座などのアウトリーチ活動として、広く成果を学術界と社会に向けて発信してきた。