著者
川崎 賢一 後藤 和子 河島 伸子 佐々木 雅幸 小林 真理 KWOK KianーWo CRANE Diana MARTORELLA R KIAMーWOON Kw CRANE O
出版者
駒澤大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
1997

今年度は、3年間にわたる共同研究に最終年度にあたり、まとめる方向で研究を行った。初年度は、東京で、まず、芸術文化政策の比較の枠組みについて話し合い、同時に、東京を中心とする日本の文化政策を理解することにつとめた。また、この年度末には、シンガポールで会議を開催し、現地の文化政策関連の人々とも議論を行った。シンガポールは、日本とは異なるアジアの国々のひとつであり、国家を中心として文化政策をここ10年間で積極的に推進してきた社会であり、その歴史、やり方の有効性などをメンバーと共に議論をし、理解を深めた。いづれにしろ、欧米の芸術文化政策を論じる前に、アジアを回ったことは、今までの欧米中心の研究スタイルとは異なるやり方で、メンバーにも好評で、一定の成果をあげることが出来た。2年目は、イギリスのバーミンガムで会議を開き、イギリスの最近の動向について議論をした。その結果として、ロンドンのみならず、多くの都市において、文化を取り入れた都市計画が盛んになり、地方分権や民主化が進み、階級文化の境界がはっきりしなくなるなどの変化が見て取れるようになった。3年目は、仕上げとして、ニューヨークで会議を開催し、アメリカ、特に、ニューヨークの文化政策について学び、また議論することにより、これからの展望をはっきりと描くことが可能になった。それは芸術文化的活動と経済との連携がより深くなるということ、もう一つは、文化政策における、非営利的組織(いわゆるNPO)の重要度が高まり、プライバタイゼーションが進行するということである。しかし、同時に、どの国でも同じことが起こるわけではない。本研究では、さらに、来年度、ファイナルシンポジュウムを東京で開催し、「グローバル化する文化政策」というタイトルで、共同研究の最後を締めくくりたいと考えている。
著者
神崎 正英 後藤 和子 原田 真喜子 柴野 京子
出版者
デジタルアーカイブ学会
雑誌
デジタルアーカイブ学会誌 (ISSN:24329762)
巻号頁・発行日
vol.7, no.3, pp.153-156, 2023-08-01 (Released:2023-10-11)
参考文献数
3

デジタルアーカイブ(DA)は公共財的な側面と私的財な側面を持つ混合財であり、関係者のバックグランド・視点も多様である。講演会・議論を通して情報共有と相互理解を熟成するために開催してきたDAショートトークの内容から、テキスト分析の手法でDAの産業化における諸課題を抽出し、二次元マップとして提示することを試みた。この結果を広く公開するため、部会のウェブサイトに掲載して各DAショートトークをマップ上に配置し、さらに発表資料アーカイブへの動線機能も持たせた。DA産業化マップを通じてショートトークが共通の議論のプラットフォームとして活用されることを期待し、その取り組みを報告する。
著者
後藤 和子
出版者
文化経済学会〈日本〉
雑誌
文化経済学 (ISSN:13441442)
巻号頁・発行日
vol.19, no.1, pp.84-93, 2022-03-31 (Released:2022-04-19)
参考文献数
24

伝統工芸は、有形無形の文化遺産でありクリエイティブ産業でもある。日本では、伝統工芸の振興は、文化庁の無形文化遺産の保護と経済産業省の伝統的工芸品の振興の両面で行われてきた。本稿では、伝統工芸が内包する技や文化的コンテンツに着目し、その振興策の1つである知的財産権の適用について検討する。 文化経済学では、著作権の経済分析は行われてきたが、著作権以外の知的財産権やその適用に関する研究はほとんど行われてこなかった。そのため、本稿では、まず、知的財産権の経済学的根拠を、「法と経済学」の先行研究から明らかにする。そして、知的財産権がどのように伝統的工芸品に適用されているのか確認するために、実際の裁判事例を検討する。更に、知的財産権の中でも伝統工芸に適用される頻度の高い商標や地域団体商標に的を絞り、工芸産業への知的財産権の適用が工芸産業の振興にとって有効かどうか検討する。
著者
後藤 和子
出版者
日本財政学会
雑誌
財政研究 (ISSN:24363421)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.354-371, 2009 (Released:2022-07-15)
参考文献数
19

本稿は,日本では殆ど研究されたことのない文化税制に関して,その範囲を定め,理論的根拠とそのインパクトについて検討したものである。1980年代以降,文化税制が顕著な発展傾向を見せていることは,2008年1月の海外調査によっても明らかである。かかる調査を踏まえ,環境税における政策課税の議論や,アメリカ,オランダ等の理論研究を踏まえ,政策課税としての文化税制の理論的根拠とインパクトに関して検討する。それは,公共政策における公私分担の変化や,租税支出による社会保障支出の増加という流れの中で,文化政策における租税支出や目的税の,今日的意義を明らかにしようとする試みでもある。
著者
後藤 和子
出版者
Japan Association for Cultural Economics
雑誌
文化経済学 (ISSN:13441442)
巻号頁・発行日
vol.3, no.4, pp.1-17, 2003-09-30 (Released:2009-12-08)
参考文献数
42

The purpose of this paper is to make the theoretical framework of Creative City, from the point of view of cultural policy, cultural economics and economic geography, looking at the concepts of ‘creative milieu’ and ‘social interaction’ and solidarity. At first, I analyze when and how cultural policy made their connection to creative city idea and what was the main issue in these process. Secondly, circulation of cultural activities (production-consumption-evaluation-stock-learning-production) in cultural economics will be examined and the concept of ‘creative milieu’ and ‘social interaction’ in economic geography theory are looking into. Thirdly, I am suggesting the theoretical framework by situating the circulation of cultural activities in the context of place. Several cultural clusters will be provided as a sample of these framework.
著者
後藤 和子 横田 誠
雑誌
全国大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.42, pp.120-121, 1991-02-25

我々は、楽曲が移調によって様々な音の高さで演奏されても、同じ曲であると認識する。逆に、同じ曲であっても、それぞれの声の高さで表現することができる。楽曲を"正規化"すれば、楽曲を移調によらない情報として扱うことができる。また、今回提案する方法によれば、正規化された情報から、具体的な音の高さを持った情報を作り出すことができる(このような操作を"脱正規化"と呼ぶことにする)。音程に関する正規化(第2節参照)と脱正規化は、人間の脳における音楽などの情報の処理の1つのモデルである。また、正規化されたパターンは、音楽などの情報が脳においてどのように表現されているかのモデルである。耳をボトム、脳において高次の処理を行なう部分をトップと見ると、正規化はボトムアップ処理であり、脱正規化はトップダウン処理と見ることができる。また、正規化された情報は、トップにおいて情報がどのように表現されているかを示している。今回は、長期記億器(正規化されたパターンを想起のためのキーとして、次の音に関する音程禰報を想起するもの)の存在を前提とし、この長期記億からのトップダウン処理モデルについて、基礎的考察を行なう。
著者
後藤 和子
出版者
埼玉大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

創造的産業、日本ではコンテンツ産業が、今後の都市経済を牽引する重要な産業であることは異論のないところであろう。しかし、日本のコンテンツ産業を分析した経済産業省の報告書(2007年9月,2008年1月)は、その未来が決して明るいものではないことを指摘する。報告書は、日本のコンテンツ産業は、現在、世界第二位のシェアを占めているが、それは国内市場規模の大きさを反映したものであり、貿易に関しては輸入超過となっていること、輸出は各分野で減少していると指摘する。重要なのは、この報告書では、コンテンツ産業は「文化」と「産業」の2つの側面を有するが、敢えて、産業としての側面、文化を経済価値にどう結びつけていくかに焦点を合わせたと述べていることである。しかし、創造的産業とは、非営利的で創造的な活動と、営利的で単調なビジネスとの契約による結合であり、その契約が不完備契約であることが、産業組織の構造を規定している側面がある。そのため、日本のコンテンツ産業の問題を本格的に分析しようと思えば、文化と産業の結節点を分析する必要があるし、政策化にあたっても文化政策と産業政策の両面から、あるいはその結節点に新たな光を当てて検討する必要がある。本研究では、創造性へのインセンティブに焦点を合わせ、創造的産業の産業組織の国際比較を行い、その容器である都市政策との関連を探った。インセンティブとしての著作権の配分や税制(タックス・インセンティブ)、産業組織構造の国際比較により、日本の創造的産業の特徴が浮き彫りになるとともに、欧州では、創造的産業政策が、文化部局と経済部局、都市空間部局の密接な連携のもとに行われるようになっていること等が分かった。