著者
佐藤 博幸
出版者
新潟医療福祉学会
雑誌
新潟医療福祉学会誌 (ISSN:13468774)
巻号頁・発行日
vol.18, no.2, pp.23-35, 2019-03

障害者差別解消法施行下における障害者福祉に関する市民意識調査を実施し、障害当事者71人を含む180人から回答を得た(回収率70.59%)。この結果、市民の間で法律や制度に関する理解は一定の理解が進んでいるものの、近所づきあい等地域生活の場面や社会参加の機会に障害に根差した差別を体験したことのある障害当事者が60.56%に及び、障害の種別により被差別体験に差があることが明らかになった。障害当事者の地位向上を図るために、厳しい雇用環境の改善と併せ日常生活における合理的配慮の提供の理念が広がっていくことが望まれた。合理的配慮の提供を感じる人の割合は、直接的なコミュニケーション場面で高く、文書による連絡など間接的なコミュニケーション手段では低い傾向がみられた。一方、ノーマライゼーションが進展していると考える者は全回答者の36.67%にとどまり、法律や制度に対する認知度と障害者福祉の充実度に対するとらえ方に開差がみられた。今、障害者福祉は、障害者差別解消に向けノーマライゼーション理念の浸透を実感できる共生社会の実現に向けた取り組が求められている。障害当事者の活動を制限し、社会への参加を阻んでいる社会的障壁を取り除くことは、障害者福祉の直面してきた大きな課題である。障害の社会モデルを土台にした合理的配慮の提供の広がりは、この課題解決に向けこれからの障害者福祉を進展させていく大きな力になるものと考えられる。
著者
佐藤 博幸
出版者
新潟医療福祉学会
雑誌
新潟医療福祉学会誌 (ISSN:13468774)
巻号頁・発行日
vol.18, no.2, pp.23-35, 2019-03

障害者差別解消法施行下における障害者福祉に関する市民意識調査を実施し、障害当事者71人を含む180人から回答を得た(回収率70.59%)。この結果、市民の間で法律や制度に関する理解は一定の理解が進んでいるものの、近所づきあい等地域生活の場面や社会参加の機会に障害に根差した差別を体験したことのある障害当事者が60.56%に及び、障害の種別により被差別体験に差があることが明らかになった。障害当事者の地位向上を図るために、厳しい雇用環境の改善と併せ日常生活における合理的配慮の提供の理念が広がっていくことが望まれた。合理的配慮の提供を感じる人の割合は、直接的なコミュニケーション場面で高く、文書による連絡など間接的なコミュニケーション手段では低い傾向がみられた。一方、ノーマライゼーションが進展していると考える者は全回答者の36.67%にとどまり、法律や制度に対する認知度と障害者福祉の充実度に対するとらえ方に開差がみられた。今、障害者福祉は、障害者差別解消に向けノーマライゼーション理念の浸透を実感できる共生社会の実現に向けた取り組が求められている。障害当事者の活動を制限し、社会への参加を阻んでいる社会的障壁を取り除くことは、障害者福祉の直面してきた大きな課題である。障害の社会モデルを土台にした合理的配慮の提供の広がりは、この課題解決に向けこれからの障害者福祉を進展させていく大きな力になるものと考えられる。
著者
山口 富一
出版者
新潟医療福祉学会
雑誌
新潟医療福祉学会誌 (ISSN:13468774)
巻号頁・発行日
vol.4, no.2, pp.36-42, 2005-03

言語聴覚士 (ST) の分野である聴覚障害 (児) 者に対することばの指導やコミュニケーション方法獲得に対する取り組みは古くから行われてきている。国内外の取り組みの歴史と専門職としての言語聴覚士誕生の経緯と、日本における言語聴覚士の国家資格制度が遅れたいきさつを年代を追って、関係諸団体の主張と対立・意見調整の過程を振り返る。言語聴覚士の活躍する多様な職場と多様な養成機関の並存という現状を踏まえての養成が必要と考える。
著者
松田 美穂
出版者
新潟医療福祉学会
雑誌
新潟医療福祉学会誌 (ISSN:13468774)
巻号頁・発行日
vol.2, no.1, pp.29-35, 2001-12

介護老人保健施設において開設より5年に亘り音楽療法を実践した。施設の入所定員は100名,通所リハビリテーション定員は25名で,平均年齢は83.6歳,現在の平均要介護度は入所2.9,通所2.0である。初年度の音楽療法実施回数及び述べ参加人数,平均参加率は106回,3571名,79.4%で,4年目は128回,7055名,86.1%であった。他のリハビリテーションやレクリエーションに比べ音楽療法は参加率は非常に高かった。音楽療法を通して痴呆の問題行動の軽減や日本の伝統文化との融合にも取り組んできた。その一例として入浴拒否者に対し「風呂嫌いの歌」を創り,共に合歌することによって入浴拒否の軽減をみた。更に音楽療法を句会の参加と投句の動機付けに用い,参加者の維持,継続と投句の増加,質の向上を得た。また継続して投句されている方では,一般の方,痴呆の方を問わず長谷川式簡易知能評価スケールでの低下が認められない方が多かった。以上のことより音楽療法の有用性,癒しの効果を体験し,その可能性を確信するに至った。しかし入所者の聴力結果の結果からは,調査を行った46名中16名に両耳に中度(聴力レベル50∿70dB)以上の難聴が認められた。聴力に障害のある人が多いことを考慮すると,補聴器の使用やプログラムの内容について更なる検討が必要となろう。
著者
田中 秀和 Tanaka Hidekazu
出版者
新潟医療福祉学会
雑誌
新潟医療福祉学会誌 (ISSN:13468774)
巻号頁・発行日
vol.10, no.2, pp.54-58, 2011-03

Since the beginning of this century the expansion of differences in the Japanese society has been clearly visible. The so called gap-widening society has been spreading rapidly. This paper, is about differences in the level of poverty among Japanese people and it suggests some ways to solve them.日本社会においては、21世紀に突入した頃から格差の拡大がより多くの人々に認識されるようになり、「格差社会」に関する議論が盛んに行われてきた。その後、「格差社会」に関するそれは、「貧困」に対する関心を増大させ今日においては、格差よりも貧困に議論の中心は移行してきている。本稿では、これまでの日本社会における格差・貧困に関する議論の動向を整理し、より一層の議論の発展と問題解決に寄与することを目指すものである。また、本稿においては、貧困問題を解決していく方法として、社会福祉士等のソーシャルワーカーや研究者が、個人と社会(環境)両者への働きかけをより強化することを掲げた。