著者
稲井 卓真 久保 雅義 江玉 睦明 高林 知也 小熊 雄二郎
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
pp.11204, (Released:2016-08-25)
参考文献数
56

【目的】本研究の目的は,3 次元上の股関節の動きが大腰筋の伸張率に及ぼす影響を明らかにすることである。【方法】先行研究によって報告されたパラメータから,筋骨格モデルを作成した。数理モデルを用いて,股関節の角度を変化させたときの大腰筋の伸張率を検討した。解剖学的肢位での大腰筋の筋線維長を100% とした。【結果】大腰筋の伸張率は,股関節の伸展20 度のみ(104.8%)より,股関節の伸展20 度に外転20 度・内旋30 度を加えることでより高くなった(106.5%)。【結論】股関節の伸展のみと比較して,股関節の伸展に外転と内旋を加えたとき,大腰筋はより伸張される可能性がある。
著者
江玉 睦明 影山 幾男 熊木 克治
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2010, pp.AbPI2033, 2011

【目的】大腿直筋の肉離れはハムストリングスに続いて多く,発生部位は近位部に集中している.今回,大腿直筋について肉眼解剖学的に筋構造を明らかにし,肉離れ発生部位との関連を検討した.<BR><BR>【方法】日本歯科大学新潟生命歯学部に献体された成人3遺体5側を用いた.検索方法は主に肉眼解剖学的手法を用いた.<BR><BR>【説明と同意】本研究は死体保護法で同意を得て行った.<BR><BR>【結果】大腿直筋は下前腸骨棘と寛骨臼蓋上縁から起こり,遠位1/4から内側広筋,外側広筋,中間広筋とで共同腱を形成し膝蓋骨上縁に停止した.表面の近位1/3まで幅広い起始腱膜があり,そこから遠位1/3まで筋内腱が存在した.裏面では停止腱膜が近位1/4まで幅広く存在した.下前腸骨棘と寛骨臼蓋上縁から起こる起始腱は混同して起始腱膜となり,近位部で徐々にねじれて筋内腱を形成した.筋内腱は起始腱膜の延長であり,薄い膜状構造を呈した.近位部の特徴として,起始腱膜から筋内腱の筋線維は両側へ走行し羽状構造を呈して停止腱膜に停止していた.起始腱(下前腸骨棘)からの筋線維は,半羽状構造を呈し,起始腱(臼蓋上縁)からの筋線維は長軸方向に平行に停止腱膜に付着しており,表層と深層では異なる筋線維走行を呈した.また起始腱膜の形状は一様ではなく,加えて近位部で徐々にねじれて筋内腱を形成していることで近位部表面の筋線維走行は部位により異なる走行を呈した.<BR><BR>【考察】肉離れの発生メカニズムとして羽状構造,筋腱移行部,遠心性収縮がポイントとして挙げられる.大体直筋は羽状筋であり,サッカーのシュート動作時などに受傷することが多く,近位部の筋内腱部,筋束の筋膜が好発部位とされている.今回の結果から近位部は,表層と深層では異なる筋線維走行をしており,また,起始腱膜の形状は一様ではなく,加えて近位部から徐々にねじれて筋内腱を形成しているため,近位部前面は部位により異なる筋線維走行を呈していた.このため,近位部は収縮時に部位により異なる収縮動態を呈する可能性があり,このことが肉離れの発生に関与しているのではないかと考えられた.今後は,超音波を使用しての筋収縮の動的評価を行い近位部の収縮動態を明らかにしていきたい. <BR><BR>【理学療法学研究としての意義】本研究は,肉眼解剖学的観点から大腿直筋の肉離れの発生原因を考察しており今後更に発展させていくことにより肉離れの治療や予防の一助となるものと考える.
著者
江玉 睦明
出版者
日本基礎理学療法学会
雑誌
日本基礎理学療法学雑誌 (ISSN:21860742)
巻号頁・発行日
vol.20, no.2, pp.16-21, 2017-11-08 (Released:2018-09-26)

Although AT disorders do not typically become severe, they occur frequently and are considered to be one of the disorders that are difficult to manage. Recently, several effective treatment methods were reported; however, there are currently no eff ective methods to prevent this disorder. The reason for this could be that the mechanism of the disorder itself is not completely understood. This is most likely why the incidence of AT disorders is very high and why preventive methods are not well-established. In recent years, attempts have been made to elucidate the mechanism for the occurrence of AT disorders based on past research, with much attention to the twisted structure of the AT as a cause. There are numerous studies from the past several decades concerning the twisted structure of the AT. Several studies have unanimously reported that ATs are composed of an insertion tendon where the medial head of the gastrocnemius, lateral head of the gastrocnemius, and the soleus muscle insert, exhibit twisted structures, and are all twisted in the lateral direction without exception. But, a consensus has yet to be reached in terms of the extent of twisting. In this paper, we introduce the anatomical studies that we have carried out in recent years as a basic research for the elucidation of the generation mechanism.
著者
鈴木 大地 中村 雅俊 大箭 周平 青木 孝史 江玉 睦明
出版者
一般社団法人日本体力医学会
雑誌
体力科学 (ISSN:0039906X)
巻号頁・発行日
vol.68, no.2, pp.117-123, 2019-04-01 (Released:2019-03-16)
参考文献数
22
被引用文献数
1 2

It is well known that eccentric exercise induces muscle damage that is characterized by a prolonged decrease in muscle strength and range of motion, development of delayed onset muscle soreness, and swelling. Therefore, the present study aimed to compare the acute effects of hold-relax stretching (HRS) with those of static stretching (SS) on muscle strength and soreness. The participants comprised 28 male volunteers randomly assigned to either the HRS group (N = 14) or the SS group (N = 14). Initially, the participants of both groups performed 60 maximal eccentric contractions of the knee extensors. Two and four days after this exercise, each group performed either HRS or SS for 60 s at a time and repeated them six times for a total of 360 s. Muscle strength and soreness during stretching and contraction were measured before and immediately after HRS and SS. The results showed that the muscle soreness observed after eccentric contraction significantly decreased immediately after both HRS and SS were performed two and four days later. In addition, there were no significant changes in muscle strength immediately after both HRS and SS were performed two and four days later. The rate of change in muscle soreness after HRS was significantly higher than that after SS two days post eccentric contractions. These results suggest that while both HRS and SS can effectively decrease muscle soreness, the effect of HRS on muscle soreness was larger than the effect of SS.
著者
稲井 卓真 久保 雅義 江玉 睦明 高林 知也 小熊 雄二郎
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.43, no.5, pp.404-411, 2016 (Released:2016-10-20)
参考文献数
56

【目的】本研究の目的は,3 次元上の股関節の動きが大腰筋の伸張率に及ぼす影響を明らかにすることである。【方法】先行研究によって報告されたパラメータから,筋骨格モデルを作成した。数理モデルを用いて,股関節の角度を変化させたときの大腰筋の伸張率を検討した。解剖学的肢位での大腰筋の筋線維長を100% とした。【結果】大腰筋の伸張率は,股関節の伸展20 度のみ(104.8%)より,股関節の伸展20 度に外転20 度・内旋30 度を加えることでより高くなった(106.5%)。【結論】股関節の伸展のみと比較して,股関節の伸展に外転と内旋を加えたとき,大腰筋はより伸張される可能性がある。
著者
高林 知也 江玉 睦明 横山 絵里花 徳永 由太 久保 雅義
出版者
バイオメカニズム学会
雑誌
バイオメカニズム (ISSN:13487116)
巻号頁・発行日
vol.23, pp.67-73, 2016 (Released:2017-08-01)
参考文献数
32
被引用文献数
1

ウィンドラス機構 (WM) とは歩行時の蹴り出し時の推進力を生み出す足部機能のひとつであり, 効率的な歩行を実現するために重要な役割を担っている. しかし, 走行におけるWMはいまだ明らかとなっていない. 本研究は, 走行と歩行の動作様式の違いがWMにおよぼす影響を検証した. 対象は健常成人男性9名とし, 課題動作はトレッドミル上での走行と歩行とした. 解析項目として, WMの指標である内側縦アーチ角度と母趾背屈角度を立脚期で算出した. 走行と歩行で内側縦アーチ角度最小値は変化がみられなかったが (157.4±6.0°, 156.9±4.9°), 走行は歩行と比較して母趾背屈角度ピーク値が有意に低値を示した (32.9±7.3°, 39.9±9.0°; p<0.05). 本研究結果より, 走行時のWMの役割は限局的である可能性が示唆された.
著者
稲井 卓真 高林 知也 江玉 睦明 久保 雅義
出版者
一般社団法人 日本基礎理学療法学会
雑誌
基礎理学療法学 (ISSN:24366382)
巻号頁・発行日
vol.24, no.1, pp.26-32, 2021 (Released:2021-11-04)
参考文献数
53

変形性股関節症は股関節痛に加え,関節可動域・下肢筋力・日常生活動作能力・生活の質の低下を伴う代表的な整形外科疾患である。しかしながら,変形性股関節症の進行を遅延させるエビデンスは十分には確立されていない。我々は,動作中の股関節の負荷の指標として股関節モーメントインパルスに着目し,歩行中の股関節内・外転モーメントインパルスと立ち上がり動作中の股関節伸展モーメントインパルスを検討した。歩行に関して,対側杖の使用により股関節内・外転モーメントインパルスが減少すること,および歩行速度の低下に伴い股関節内・外転モーメントインパルスが増加することを明らかにした。また,立ち上がり動作に関して,立ち上がり時間の減少に伴い股関節伸展モーメントインパルスが減少することを明らかにした。我々の知見は,股関節内・外転モーメントインパルスが低い(または高い)歩行パターン,および股関節伸展モーメントインパルスが低い(または高い)立ち上がり動作パターンを理解するために役立つと考える。さらに,我々の知見は変形性股関節症の進行を遅延させるために将来役立つ可能性があると考えられる。
著者
江玉 睦明 久保 雅義 大西 秀明 稲井 卓真 高林 知也 横山 絵里花 渡邉 博史 梨本 智史 影山 幾男
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.42 Suppl. No.2 (第50回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.0563, 2015 (Released:2015-04-30)

【はじめに,目的】アキレス腱(AT)障害の発生メカニズムとしては,これまで踵骨の過回内による「whipping action(ムチ打ち)」が要因であると考えられてきた。しかし,近年では,踵骨の回内時にAT内の歪みが不均一であることが要因として重要視されてきている。この原因としては,ATの捻れ構造が関与している可能性が示唆されていが,ATの捻れの程度の違いを考慮して検討した報告はない。従って,本研究は,踵骨を回内・回外方向に動かした際にATを構成する各腱線維束に加わる伸張度(%)を捻れのタイプ別に検討することを目的とした。【方法】対象は,我々が先行研究(Edama,2014)で分類したATの3つの捻れのタイプ(I:軽度,II:中等度,III:重度の捻れ)を1側ずつ(日本人遺体3側,全て男性,平均年齢:83±18歳)使用した。方法は,下腿部から踵骨の一部と共に下腿三頭筋を採取し,腓腹筋の筋腹が付着するAT線維束とヒラメ筋の筋腹が付着するAT線維束(以下,Sol)を分離し,腓腹筋内側頭が付着するAT線維束(以下,MG)と外側頭の筋腹が付着するAT線維束(以下,LG)とに分離した。そして,各腱線維束の踵骨付着部の配列を分析して3つの捻れのタイプに分類し,各線維束を3-4mm程度にまで細かく分離を行った(MG:4~9線維,LG:3~9線維,Sol:10~14線維)。次に,下腿三頭筋を台上に動かないように十分に固定し,Microscribe装置(G2X-SYS,Revware社)を使用して,各腱線維の筋腱移行部と踵骨隆起付着部の2点,踵骨隆起の外側の4点をデジタイズして3次元構築した。最後に,任意に規定した踵骨隆起の回転中心を基準に作成した絶対座標系上で踵骨を回内(20°)・回外(20°)方向に動かした際の各腱線維の伸張度(%)をシミュレーションして算出した。解析には,SCILAB-5.5.0を使用した。統計学的検討は,Microscribe装置測定の検者内信頼性については,級内相関係数(ICC;1,1)を用いて行った。【結果】級内相関係数(ICC;1,1)は,0.98であり高い信頼性・再現性が確認できた。タイプ毎の伸張度(%)は,タイプIでは,回内(MG:-1.6±0.9%,LG:-2.2±0.2%,Sol:1.7±3.4%),回外(MG:1.3±0.7%,LG:2.0±0.3%,Sol:-1.4±3.3%),タイプIIでは,回内(MG:-1.2±0.7%,LG:-0.4±0.6%,Sol:2.4±1.4%),回外(MG:0.8±0.7%,LG:0.4±0.5%,Sol:-3.2±1.5%),タイプIIIでは回内(MG:-1.7±0.4%,LG:-0.4±1.4%,Sol:3.7±6.0%),回外(MG:1.3±0.4%,LG:0.4±1.3%,Sol:-5.4±6.2%)であった。【考察】AT障害の発生メカニズムとして,踵骨の回内時にAT内の歪みが不均一であることが要因として報告されている。また,好発部位は,踵骨隆起から近位2-6cmであり,外側よりも内側に多いことが報告されている。今回,踵骨を回内すると3つの捻れのタイプ全てにおいて,MG・LGは短縮し,Solは伸張された。特にタイプIII(重度の捻れ)では,回内時のSolの伸張度が他のタイプに比べて最も大きく,更にSolを構成する各腱線維の伸張度のばらつきが多い結果であった。従って,タイプIII(重度の捻れ)では,踵骨回内時には,ATを構成するMG,LG,Solの伸張度が異なるだけでなく,他のタイプに比べてSolの伸張度が大きく,更にSolを構成する各腱線維の伸張度も異なるため,AT障害の発生リスクが高まる可能性が示唆された。【理学療法学研究としての意義】AT障害は,重症化するケースは少ないが再発率が高く,管理の難しい疾患の一つとされている。近年,有効な治療法はいくつか報告されているが,予防法に関しては有効なものが存在していない。その原因として,発生メカニズムが十分に解明されていないことが懸念されている。本研究結果は,AT障害の発生メカニズムの解明に繋がり,有効な予防法や治療法の考案,更には捻れ構造の機能解明に繋がると考える。
著者
高林 知也 江玉 睦明 稲井 卓真 横山 絵里花 徳永 由太 久保 雅義
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.42 Suppl. No.2 (第50回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.0386, 2015 (Released:2015-04-30)

【はじめに,目的】歩行速度は,運動機能を推測するための‘バイタルサイン'とされており,歩行における重要な評価指標である。先行研究では,多くの整形疾患で歩行速度が低下することや,認知機能との関連性があることも指摘されている。さらに,Winterらは片麻痺患者を対象に歩行速度を検証し,屋外および屋内歩行レベルは歩行速度により決定されると報告した。したがって,歩行速度の低下は社会参加制約に直結する因子である。歩行速度に関与する足部機能のひとつに,ウィンドラス機構(WM)がある。WMとは,足指背屈により内側縦アーチが拳上し,蹴り出し時の推進力を生み出す機構である。しかし,歩行速度の変化とWMの関連性については現在まで検証されていない。その要因として,足指角度や内側縦アーチ挙上角度(MLAEA)の動的な定量化が困難であり,詳細な足部評価が確立していないことが挙げられる。そこで,本研究は足指角度とMLAEAを動的に評価できる3DFoot modelを用いて,歩行速度の変化とWMの関連性について明らかにすることを目的とした。【方法】対象者は健常成人男性6名とした(年齢23.5±3.8歳,身長171.2±4.6 cm,体重60.0±5.5 kg)。課題動作は通常歩行(NG:4.8 km/h),低速歩行(SG:2.9 km/h),超低速歩行(VSG:1.0 km/h)の3条件とした。歩行速度は先行研究に準じ,SGは脳卒中患者の屋外歩行,VSGは脳卒中患者の屋内歩行レベルに規定した。トレッドミル(AUTO RUNNER AR-100)にて歩行速度を設定し,課題動作を実施した。課題動作の順序は無作為に実施し,各条件で10回の成功試行を計測した。動作解析には赤外線カメラ11台を含む3次元動作解析装置(VICON MX)を使用し,サンプリング周波数100Hzにて右下腿と足部に貼付した15個の反射マーカーを計測した。データ解析にはScilab(5.5.0)を使用し,計測した反射マーカーに対し遮断周波数6Hzの2次Zero-lag butterworth low pass filterを施した。その後,足指角度とMLAEAを評価可能な3DFoot modelを構築した。母趾は足指の中でWMに最も関与するとされているため,母趾背屈角度(HDFA)とMLAEAを算出し,WMの指標とした。なお,3DFoot modelで算出されるMLAEAは低値であるほど高アーチを示す。解析区間である踵接地から爪先離地(TO)までの立脚期を100%正規化し,各被験者で課題条件毎に解析項目を加算平均した。統計は,TO時におけるHDFAとMLAEAの平均値に対し,課題条件を因子としたフリードマン検定,事後検定としてSteel-Dwass法にて解析した。また,HDFAとMLAEAの関連性を相関係数にて検証した。有意水準は5%とし,統計ソフトstatics R(3.0.0)を用いた。【結果】HDFAとMLAEAの相関関係において,NGでは強い負の相関を示し(r=-0.91),SGおよびVSGでは中等度の負の相関を示した(r=-0.50,-0.57)。TO時のHDFAにおいて,NG(34.5±5.7°)はVSG(8.0±6.7°)と比較して有意に高値を示したが(p<0.05),SG(23.1±5.0°)はNGおよびVSGと比較して有意差を示さなかった。TO時のMLAEAは課題条件間にて有意差を示さなかったが,歩行速度増加に伴い高アーチの傾向を示した(NG:159.2±3.8°,SG:164.5±4.9°,VSG:167.1±6.3°)。【考察】本研究において,歩行速度の変化とWMの間には高い関連性が存在していることが示唆された。WMは足指背屈により生じるため,足指の動きがWMのトリガーの役割を担っている。また,内側縦アーチの低下はWMが破綻するとされているため,MLAEAもWMに関与する重要な因子である。本研究において,NGのHDFAはVSGと比較して有意に増加し,MLEAは歩行速度の増加に伴い高アーチの傾向を示した。さらに,HDFAとMLAEAの相関関係は,NGにおいて強い負の相関を示した。そのため,NGはWMがより働き,SGとVSGはWMへの関与が少ない可能性が考えられた。課題条件で用いたSGとVSGは,脳卒中患者の歩行レベルに準じて規定した。本研究結果より,脳卒中患者の歩行速度を通常歩行レベルに向上させるためには,WMを考慮する必要性が示唆された。なお,本研究で用いた3DFoot modelは,他のMulti-segment foot modelと比較して再現性が高いことが確認されている。また,算出したHDFAとMLAEAは,3DFoot modelを報告した先行研究と類似した波形パターンと値を示したため,本研究結果は妥当性が高いと考えられた。【理学療法学研究としての意義】理学療法において歩行速度を向上させることは,実用的および効率的な歩行を実現するために重要な課題である。本研究の知見は,歩行動作にアプローチする上で有益な基礎情報に成り得る。
著者
江玉 睦明 大西 秀明 久保 雅義 熊木 克治 影山 幾男 渡辺 博史 梨本 智史
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2013, 2014

【はじめに,目的】長母趾屈筋の停止部位に関しては多くの報告がなされており,長母趾屈筋が第II趾,第III趾に分岐するものが最も多く,今村ら(1948)は64%,川島ら(1960)は49%,Chelmer et al.(1930)は62%であったと報告している。また,今村ら(1948)は長母趾屈筋が母趾末節骨のみに停止する例は0%,Chelmer et al.(1930)は0.5%であったと報告している。このように停止部位に関しての報告は多数認められるが,長母趾屈筋が足趾の屈曲にどの程度関与しているかは検討されていない。Fukunaga et al.(2001)は,筋力や筋パワーは筋の解剖学的断面積より生理学的断面積と比例し,筋の体積は生理学的断面積と高い相関関係にあると報告している。また,佐々木ら(2012)は,下腿三頭筋の体積とアキレス腱横断面積には有意な相関関係があることを報告している。従って,足趾へ分岐する長母趾屈筋腱の横断面積を計測することで長母趾屈筋の足趾屈曲作用を定量的に検討することができると考えられる。そこで本研究では,長母趾屈筋腱を母趾と足趾に分岐する腱に分け,それぞれの横断面積の割合から長母趾屈筋がどの程度足趾の屈曲に関与しているかを検討することを目的とした。【方法】日本人遺体13体21側(平均年齢:75±11歳,男性:17側,女性4側)を用いた。足底部より皮膚,皮下組織を除去し,長母趾屈筋,長趾屈筋の停止腱を丁寧に剖出した。次に,長母趾屈筋が母趾へ向かう腱と足趾へ向かう腱に分岐した部分で各腱を横断した。また,足趾の屈筋腱(長趾屈筋,足底方形筋,長母趾屈筋が合わさった腱)をII趾~V趾の基節骨部で横断した。そうして各腱の断面をデジタルカメラ(Finepix F600EXR,Fujifilm)にて撮影し,画像解析ソフト(Image J, NIH, USA)を使用して横断面積を計測した。長母指屈筋腱において,母趾・第II~第V趾に分岐する腱の横断面積の総和を長母指屈筋腱の総横断面積として各腱の割合を算出し,更に第II~第V趾の屈筋腱に対する長母趾屈筋腱の割合を算出した。【倫理的配慮,説明と同意】死体解剖保存法と献体法に基づき本学に教育と研究のために献体された遺体を使用した。また,本研究は所属大学倫理委員会にて承認を受けて行われた。【結果】長母指屈筋が母指末節骨のみに停止する例は存在せず,長母指屈筋からの分束(外側枝)が腱交叉部(足底交叉)から分かれて長趾屈筋の腱構成に加わった。その内,外側枝が第II指へ分岐するものが6例(29%),第II・III指へ分岐するものが11例(52%),第II・III・IV指へ分岐するものが4例(19%)であった。長母趾屈筋腱は,母趾へ向かう腱が65±14%,第II趾が23±6%,第III趾が9±9%,第IV趾が3±5%の割合で構成されていた。足趾の屈筋腱における長母趾屈筋腱の割合は,母趾・第II趾へ分岐するものでは,第II趾では36±3%であった。母趾・第II・III趾に分岐するものでは,第II趾では55±5%,第III趾では46±3%であった。母趾・第II・III・IV趾に分岐するものでは,第II趾では67±28%,第III趾では34±12%,第IV趾では30±2%であった。【考察】長母趾屈筋の停止部位に関しては,第II・III趾へ分岐するものが52%で最も多く,長母趾屈筋が母趾のみに停止するものは存在せず,先行研究とほぼ同様の結果であった。長母趾屈筋腱は,分岐状態にかかわらず約60%が母趾に停止する腱で構成され,第II・III・IV趾に分岐する割合は,それぞれ23%,16%,10%と減少していく傾向であった。しかし,第II・III趾の屈筋腱における長母指屈筋腱の割合は,概ね30%~60%を占めていた。従って,停止部位と横断面積の割合から考えると,長母趾屈筋の主作用は母趾の屈曲であり,第II・III趾の屈曲が補助作用であると考えられる。【理学療法学研究としての意義】本研究の結果は,長母趾屈筋の足趾屈曲作用を考える上で貴重な情報となり,臨床的応用も期待できる。
著者
青木 孝史 中村 雅俊 鈴木 大地 大箭 周平 江玉 睦明
出版者
公益社団法人 日本リハビリテーション医学会
雑誌
The Japanese Journal of Rehabilitation Medicine (ISSN:18813526)
巻号頁・発行日
pp.18001, (Released:2018-11-06)
参考文献数
24

筋力トレーニングは,筋力低下や筋萎縮の処方として用いられる手技である.先行研究において,皮膚冷刺激下での低負荷筋力トレーニングでは,神経適応により筋力が増加することが報告されている.しかし,皮膚冷刺激下での低負荷筋力トレーニングが筋厚に及ぼす影響は不明である.本研究の目的は,上腕三頭筋を対象に,皮膚冷刺激下での低負荷筋力トレーニングが筋力および筋厚に与える影響を明らかにすることである.対象は,12名の健常若年男性の両腕とし,無作為に皮膚冷刺激下での低負荷筋力トレーニングを行う側と低負荷筋力トレーニングのみを行う側に群分けを行った.筋力トレーニングは1RMの50%の重量を用いて,週3回8週間の介入を行った.筋力トレーニング介入前後に1RMと上腕三頭筋の筋厚を測定した.その結果,有意な交互作用は認められなかったが,皮膚冷刺激の有無に関係なく,両介入側ともに8週間の介入後に有意な1RMおよび筋厚の増加が認められた.この結果より,皮膚冷却による筋力トレーニングとの相乗効果は認められないことが明らかになった.
著者
江玉 睦明 影山 幾男 熊木 克治
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.38 Suppl. No.2 (第46回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.AbPI2033, 2011 (Released:2011-05-26)

【目的】大腿直筋の肉離れはハムストリングスに続いて多く,発生部位は近位部に集中している.今回,大腿直筋について肉眼解剖学的に筋構造を明らかにし,肉離れ発生部位との関連を検討した.【方法】日本歯科大学新潟生命歯学部に献体された成人3遺体5側を用いた.検索方法は主に肉眼解剖学的手法を用いた.【説明と同意】本研究は死体保護法で同意を得て行った.【結果】大腿直筋は下前腸骨棘と寛骨臼蓋上縁から起こり,遠位1/4から内側広筋,外側広筋,中間広筋とで共同腱を形成し膝蓋骨上縁に停止した.表面の近位1/3まで幅広い起始腱膜があり,そこから遠位1/3まで筋内腱が存在した.裏面では停止腱膜が近位1/4まで幅広く存在した.下前腸骨棘と寛骨臼蓋上縁から起こる起始腱は混同して起始腱膜となり,近位部で徐々にねじれて筋内腱を形成した.筋内腱は起始腱膜の延長であり,薄い膜状構造を呈した.近位部の特徴として,起始腱膜から筋内腱の筋線維は両側へ走行し羽状構造を呈して停止腱膜に停止していた.起始腱(下前腸骨棘)からの筋線維は,半羽状構造を呈し,起始腱(臼蓋上縁)からの筋線維は長軸方向に平行に停止腱膜に付着しており,表層と深層では異なる筋線維走行を呈した.また起始腱膜の形状は一様ではなく,加えて近位部で徐々にねじれて筋内腱を形成していることで近位部表面の筋線維走行は部位により異なる走行を呈した.【考察】肉離れの発生メカニズムとして羽状構造,筋腱移行部,遠心性収縮がポイントとして挙げられる.大体直筋は羽状筋であり,サッカーのシュート動作時などに受傷することが多く,近位部の筋内腱部,筋束の筋膜が好発部位とされている.今回の結果から近位部は,表層と深層では異なる筋線維走行をしており,また,起始腱膜の形状は一様ではなく,加えて近位部から徐々にねじれて筋内腱を形成しているため,近位部前面は部位により異なる筋線維走行を呈していた.このため,近位部は収縮時に部位により異なる収縮動態を呈する可能性があり,このことが肉離れの発生に関与しているのではないかと考えられた.今後は,超音波を使用しての筋収縮の動的評価を行い近位部の収縮動態を明らかにしていきたい. 【理学療法学研究としての意義】本研究は,肉眼解剖学的観点から大腿直筋の肉離れの発生原因を考察しており今後更に発展させていくことにより肉離れの治療や予防の一助となるものと考える.
著者
江玉 睦明
出版者
新潟医療福祉大学
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2012-08-31

本研究は,①日本人遺体を用いて,アキレス腱の解剖学的構造を分析し腓腹筋内側頭の効果的・選択的ストレッチング方法を考案することと,②健常成人を対象に,考案した方法が妥当であるかを,超音波画像診断装置を用いて検討することを目的とした.(実験①)日本人遺体16体25側を対象に検討し,膝関節伸展・足関節背屈に,足関節内反を加える肢位を考案した.(実験②)対象は健常成人男性8名に3つの肢位で検討した.その結果,解剖学的,運動学的検証により,膝関節伸展・足関節背屈に足関節内反を加えた肢位が,内側頭の効果的・選択的ストレッチングとして有効であることが明らかにできた.