著者
掛野 剛史
出版者
日本出版学会
雑誌
出版研究 (ISSN:03853659)
巻号頁・発行日
vol.43, pp.3-23, 2013

<p>本稿では2000年以降に発表された,明治期からおおよそ戦前,戦中期にいたるまでを対象とした出版に関する書籍,論文を概観し,その成果を整理紹介することで,近代出版史研究の動向と今後の可能性を提示した.</p>
著者
中西 秀彦
出版者
日本出版学会
雑誌
出版研究 (ISSN:03853659)
巻号頁・発行日
vol.45, pp.3-23, 2015

<p>00年代の出版印刷研究を,組版技術動向,出版印刷技術,印刷技術史研究に分けて論じる.組版技術は1980年代にはじまった電子組版技法が成熟したが,反面,日本語を電子的に扱う上で,文字コード問題が顕在化し,これに関する論考が数多く出された.出版印刷技術はオフセットではそれほど発展はなかったが,オンデマンド印刷技術が発達し,あらたな出版手段として出版界の期待を集め,研究が多い.出版技術史においては,活字の書体研究が非常な進展を見せた.しかし,印刷技術は電子出版の技術と分かちがたく結びつくようになり,両者を分離して論じる事は困難になってきている.</p>
著者
茨木 美子
出版者
日本出版学会
雑誌
出版研究 (ISSN:03853659)
巻号頁・発行日
vol.41, pp.155-183, 2011-03-20 (Released:2019-03-31)
参考文献数
19

本論文は,「愛子さま不登校」事件に関する女性週刊誌報道を内容分析し,この報道が読者にどのような現実を提示したかを明らかにしようとした.「不登校問題」における女性週刊誌の見出しと記事を質的・量的に分析した.その結果,女性週刊誌は,キーワードでは,「不登校」はテーマ的に,「いじめ」にはエピソード的に語る傾向が共通していたが,「問題」に対する論調と合わせてみると,描かれる現実には週刊誌ごとに違いが見られた.
著者
茨木 美子
出版者
日本出版学会
雑誌
出版研究 (ISSN:03853659)
巻号頁・発行日
vol.44, pp.95-113, 2014-03-20 (Released:2019-03-31)
参考文献数
15

週刊誌の皇室報道が一般紙では,伝統的な皇室像からの逸脱を批判するが,女性誌ではホームドラマとしての皇室を描くという違いがあるかを検証した.2013年1月から7月までの週刊誌9誌(一般誌6誌,女性誌3誌)の皇室記事と写真を対象として,量的な内容分析を行った.その結果,サブテーマの頻度と扱いに若干の違いはあったが,全体的な傾向からは,女性誌と一般誌の皇室報道に伝統規範―家族という違いは見られなかった.
著者
後藤 嘉宏
出版者
日本出版学会
雑誌
出版研究 (ISSN:03853659)
巻号頁・発行日
vol.47, pp.1-22, 2017-03-20 (Released:2018-11-01)
参考文献数
31

中井正一(1900-52)の「委員会の論理」(1936)の「印刷される論理」は現代では抑圧的になるとの鈴木正の指摘がある.しかし「委員会の論理」の「印刷される論理」はソクラテスの外に開かれた弁証法の復活を意図し,「いわれる論理」の双方向性を内包する.大量の複製本が出回ることがかえって多様な解釈による大量の異本を生むビジョンである.しかし回転の速さが重視される現代の出版状況に鑑みると鈴木の懸念は正鵠を射ている.
著者
山田 健太
出版者
日本出版学会
雑誌
出版研究 (ISSN:03853659)
巻号頁・発行日
vol.40, pp.3-44, 2010-03-20 (Released:2019-03-31)

本稿は,グーグル・ブック検索訴訟を巡る問題を表現の自由の観点から論じたものである.グーグルが著者に無断でスキャニングしたデジタル書籍データを利用して,インターネット上での閲覧や購読配信をすることに対し,米国の作家・出版社が提訴をし,当事者間での和解がまとまった.しかしながら,グーグルのスキャニング行為は日本の著作権法上違法な行為であるほか,一私企業による情報・情報流通の独占による出版の多様性への悪影響などが考えられる.その根底には日米間の著作権法制や出版慣行の違いについての無理解や,表現行為に関わる企業としてのありようなど,多くの問題が伏在している.
著者
中村 健
出版者
日本出版学会
雑誌
出版研究 (ISSN:03853659)
巻号頁・発行日
vol.42, pp.191-209, 2012-03-20 (Released:2019-03-31)
参考文献数
18

週刊誌の草創にあたっては大衆文学が深く関わり,『サンデー毎日』に1924(大正13)年5月から1925(大正14)年にかけて連載された白井喬二「新撰組」は,巻頭に大きな挿絵の連載小説を載せるという戦前の週刊誌の型を作った.本稿では,作品とメディアの関係性を,字数などの情報量,媒体の性格,作品性などから考察し,当時の編集方針と作品の性格が密接な結びつきがあったことを指摘した.
著者
茨木 正治
出版者
日本出版学会
雑誌
出版研究 (ISSN:03853659)
巻号頁・発行日
vol.43, pp.25-49, 2013-03-20 (Released:2019-03-31)
参考文献数
84

この論文は,2000年から2012年の12年間に『出版研究』掲載論文,「出版学会賞」受賞作品,隣接諸学会誌掲載の雑誌に関する論文を対象に,量的・質的な内容分析を行い,この時期の傾向を概説した.その結果,研究対象の多様化,歴史研究の知見からの(受容)環境への意識化,組織・産業研究の集合・調査データの分析の精緻化といった特徴から,雑誌の「内容研究」は進展したが,雑誌の本質についての議論は見出しにくかった.
著者
小森 真樹
出版者
日本出版学会
雑誌
出版研究 (ISSN:03853659)
巻号頁・発行日
vol.42, pp.47-68, 2012-03-20 (Released:2019-03-31)

1970年代の日本を代表する若者雑誌である『宝島』『ポパイ』などを事例として,日本のアメリカナイゼーションの変容を考察した.各編集関係者が雑誌に与えたコンセプトの違い,広告経営モデルが誌面に与えた影響,読者による読み替えなど,「送り手」と「受け手」のダイナミズムを分析することで,日本の「アメリカ」観が,対抗文化のような思想的理念から娯楽的な消費対象へと変容していく過程を明らかにした.
著者
稲岡 勝
出版者
日本出版学会
雑誌
出版研究 (ISSN:03853659)
巻号頁・発行日
no.16, pp.p72-125, 1985