著者
山中 智省
出版者
日本出版学会
雑誌
出版研究 (ISSN:03853659)
巻号頁・発行日
vol.52, pp.1-24, 2021 (Released:2023-03-31)

朝日ソノラマのソノラマ文庫は,自社の単行本叢書の文庫化を企図して1975年に創刊を果たし,2007年まで存続した若年層向け文庫レーベルである.本稿では,ソノラマ文庫の創刊から全盛期に至る1970~80年代を射程に,同文庫が「ライトノベルの一源流」と見なされる特質をどのように形成したのかを明らかにしていく.また,とりわけ1980年代後半の動向をもとに,ソノラマ文庫の戦略面における課題とは何かに焦点を当て,その考察を試みる.
著者
清水 一彦
出版者
日本出版学会
雑誌
出版研究 (ISSN:03853659)
巻号頁・発行日
vol.48, pp.1-21, 2017

<p>江戸時代の識字率は学術的には高低が判断出来ないにもかかわらず,ドーアとパッシンの就学率推計値が発表された1960年代後半以降,それまでの低いという認識に代わって「江戸時代の識字率は高かった」という言説が主に一般出版で常識化した.一方,学術出版は一般出版での言説を等閑視することで消極的にではあるが「高い」という言説の常識化に加担した.この言説構成過程の機序を,出版学の立場から社会構成主義の分析ツールを利用し考察した.</p>
著者
山中 智省
出版者
日本出版学会
雑誌
出版研究 (ISSN:03853659)
巻号頁・発行日
vol.49, pp.67-89, 2018 (Released:2020-10-30)

徳間書店のアニメ雑誌『アニメージュ』とアニメージュ文庫は,日本におけるメディアミックス,ならびにライトノベルの形成・発展に関わる出版史のなかでどのように位置づけられるのか.本稿では主に1980年代の『アニメージュ』とアニメージュ文庫を対象として,これらの実態を雑誌の誌面や関連広告,文庫本や目録などの同時代資料のほか,編集者や作家といった当事者たちの証言から明らかにしつつ,その歴史的位置について考察する.
著者
清水 一彦
出版者
日本出版学会
雑誌
出版研究 (ISSN:03853659)
巻号頁・発行日
vol.48, pp.1-21, 2017 (Released:2020-10-30)
参考文献数
58

江戸時代の識字率は学術的には高低が判断出来ないにもかかわらず,ドーアとパッシンの就学率推計値が発表された1960年代後半以降,それまでの低いという認識に代わって「江戸時代の識字率は高かった」という言説が主に一般出版で常識化した.一方,学術出版は一般出版での言説を等閑視することで消極的にではあるが「高い」という言説の常識化に加担した.この言説構成過程の機序を,出版学の立場から社会構成主義の分析ツールを利用し考察した.
著者
宮本 大人
出版者
日本出版学会
雑誌
出版研究 (ISSN:03853659)
巻号頁・発行日
vol.50, pp.47-69, 2019 (Released:2020-10-30)

本稿の目的は,昭和戦前・戦中期における子供漫画の出版状況を,各種資料に基づいて明らかにすることである.主要な児童雑誌に掲載された漫画は,昭和10年代前半には総頁数の約10%を占めるようになっていた.子供漫画の単行本は,昭和10年代前半には発行点数で年間500点以上,発行部数で350万部以上が出ていたと推定される.こうした数量は,戦後の子供漫画出版の基盤がすでにこの時期形成されていたことを示している.
著者
山中 智省 田島 悠来 中川 裕美
出版者
日本出版学会
雑誌
出版研究 (ISSN:03853659)
巻号頁・発行日
vol.47, pp.41-64, 2017-03-20 (Released:2018-11-01)

2015年10月から放送されたTVアニメ『おそ松さん』(制作:studioぴえろ)は,“社会現象化”するほどの大ヒット作に成長した.その最中,『おそ松さん』を特集した雑誌が相次いで完売・重版を果たしたのはなぜなのか.本稿では『おそ松さん』のファンが見せた作品の受容姿勢を踏まえつつ,アニメ雑誌や一般向け雑誌に掲載された特集内容の分析を行い,各雑誌に見受けられた掲載情報や戦略性の違いを明らかにして,その背景に迫った.
著者
田上 雄大
出版者
日本出版学会
雑誌
出版研究 (ISSN:03853659)
巻号頁・発行日
vol.48, pp.23-45, 2017 (Released:2020-10-30)

ウクライナ憲法三四条は,言論の自由(свобода слова)を保障している.その一方で,ウクライナには言論の自由を制約する通称・脱共産主義法が存在する.同法は,旧ソ連支配下のウクライナで引き起こされた人工飢餓といった出来事を否定する表現に対する罰則を設け,さらに共産主義に対する称賛やナチズムに対する称賛も禁じている.本稿では,ウクライナにおける言論の自由とその制約との関係について論じている.
著者
山中 智省
出版者
日本出版学会
雑誌
出版研究 (ISSN:03853659)
巻号頁・発行日
vol.49, pp.67-89, 2018

<p>徳間書店のアニメ雑誌『アニメージュ』とアニメージュ文庫は,日本におけるメディアミックス,ならびにライトノベルの形成・発展に関わる出版史のなかでどのように位置づけられるのか.本稿では主に1980年代の『アニメージュ』とアニメージュ文庫を対象として,これらの実態を雑誌の誌面や関連広告,文庫本や目録などの同時代資料のほか,編集者や作家といった当事者たちの証言から明らかにしつつ,その歴史的位置について考察する.</p>
著者
掛野 剛史
出版者
日本出版学会
雑誌
出版研究 (ISSN:03853659)
巻号頁・発行日
vol.43, pp.3-23, 2013-03-20 (Released:2019-03-31)

本稿では2000年以降に発表された,明治期からおおよそ戦前,戦中期にいたるまでを対象とした出版に関する書籍,論文を概観し,その成果を整理紹介することで,近代出版史研究の動向と今後の可能性を提示した.
著者
清水 一彦
出版者
日本出版学会
雑誌
出版研究 (ISSN:03853659)
巻号頁・発行日
vol.45, pp.117-138, 2015-03-20 (Released:2019-03-31)
参考文献数
29

『読書世論調査』によれば,2005年ごろまでは若者は読書離れしていなかった.しかし,知識人,出版業界人,ジャーナリズムのアクター3者のバイアスが相互作用してつくられた「若者の読書離れ」という認識は,オーディエンスが“ここちよい”ものとして受容することで1980年代までには“常識”となった.本稿では当時の社会的な背景をふまえたうえで,なぜ「若者の読書離れ」という常識が構成されそして受容されたのかを論じる.

7 0 0 0 OA 翻訳料の研究

著者
柴田 義一
出版者
日本出版学会
雑誌
出版研究 (ISSN:03853659)
巻号頁・発行日
vol.29, pp.167-184, 1999-03-20 (Released:2020-03-31)

This study will examine the translating service business by document category, i.e., (1) publications, (2) videos and films, (3) dramas, and (4) other documents including commercial, scientific and government documents, from the following three aspects:.(a) How much is paid to translators?(b) How are translation fees determined?(c) How do translators make a living?(a) While many books and magazine articles discuss translation skills and techniques, translation fees are rarely addressed. At present, how much are translators earning for different types of translation?(b) What factors, if any, determine the translation fees paid to translators?(c) Are translators able to make a living with the current level of fees? Is there any difference between past and present practices in this regard?
著者
大尾 侑子
出版者
日本出版学会
雑誌
出版研究 (ISSN:03853659)
巻号頁・発行日
vol.52, pp.47-70, 2021 (Released:2023-03-31)

本稿は1925年創刊の雑誌『文藝市場』による街頭での直筆原稿叩き売りに着目し,この実践が有名性に支配された文学界への批判であり,その背景には「直筆原稿」を作家の肉体労働の痕跡とみなし,商品価値を認めるべきだとする同人の主張があったことを明らかにした.また,売上金を共同印刷争議に寄付し,構成派的な「活字」表現を駆使するなど,この試みが労働運動とプロレタリア芸術運動との交点にあったことも指摘した.
著者
山中 智省 田島 悠来 中川 裕美
出版者
日本出版学会
雑誌
出版研究 (ISSN:03853659)
巻号頁・発行日
vol.47, pp.41-64, 2017

<p>2015年10月から放送されたTVアニメ『おそ松さん』(制作:studioぴえろ)は,"社会現象化"するほどの大ヒット作に成長した.その最中,『おそ松さん』を特集した雑誌が相次いで完売・重版を果たしたのはなぜなのか.本稿では『おそ松さん』のファンが見せた作品の受容姿勢を踏まえつつ,アニメ雑誌や一般向け雑誌に掲載された特集内容の分析を行い,各雑誌に見受けられた掲載情報や戦略性の違いを明らかにして,その背景に迫った.</p>
著者
田島 悠来
出版者
日本出版学会
雑誌
出版研究 (ISSN:03853659)
巻号頁・発行日
vol.46, pp.41-61, 2016-03-20 (Released:2019-03-31)
参考文献数
15

本稿は,集英社が刊行する雑誌『明星』の60余年の歩みを,①黎明期:大衆娯楽誌②黄金期:アイドル誌③転換期:「ジャニーズ」専門誌という三つに区分し紐解くものである.特に,70年代までに日本に到来した戦後の大衆社会と,80年代以降の雑誌の細分化に見られるその解体のプロセスを,一つの雑誌のなかで体現しているという意味において重要な媒体として『明星』を位置づけ論じる.
著者
稲岡 勝
出版者
日本出版学会
雑誌
出版研究 (ISSN:03853659)
巻号頁・発行日
vol.42, pp.167-180, 2012-03-20 (Released:2019-03-31)
参考文献数
10

清末民初の大変動時代に,上海の商務印書館を東洋一の大出版社に導いた文人が張元済 (1867–1959) である.この偉大な編訳人は1908年,静養のため初めて日本を訪れ多くの見聞を深めた.そのうちで日本の書誌学者たちとの交流の一齣を,日中の史料を用いて明らかにする.
著者
張 賽帥
出版者
日本出版学会
雑誌
出版研究 (ISSN:03853659)
巻号頁・発行日
vol.49, pp.95-110, 2018

<p>本研究では,1901年に上海で開設された東亜同文書院により刊行された邦字雑誌『支那研究』に着目してそれを分析したものである.まず,戦前期における上海の時代背景を紹介する.そして,戦前に発行された本誌を研究対象として,創刊の経緯と目的を考察する.また,経営面と誌面構成の検証によって,中国研究の先駆的な学術雑誌としての立ち位置を明らかにした.</p>
著者
藤本 純子
出版者
日本出版学会
雑誌
出版研究 (ISSN:03853659)
巻号頁・発行日
vol.36, pp.75-93, 2006-03-20 (Released:2020-03-31)
参考文献数
32

少女向け出版メディアの研究はその多くが戦前期を対象としており,戦後期は少女マンガ研究を除けばほとんど進められていないのが現状である.本稿はそういった問題を受け,戦後期の少女雑誌『女学生の友』に掲載された少女小説を分析素材に,タブーとされてきた「男女交際」テーマの登場という出来事の背景の分析を通して,送り手と受け手の関わりの変化を明らかにすることを目的としたものである.
著者
堀井 健司
出版者
日本出版学会
雑誌
出版研究 (ISSN:03853659)
巻号頁・発行日
vol.40, pp.99-124, 2010

<p>江戸最末期,福澤諭吉の著作『西洋事情』は,日本に「コピライト」概念を紹介した.皮肉なことに,この『西洋事情』をはじめ福澤の前期著作には,偽版が多く出された.</p><p>本稿では,福澤諭吉『西洋事情』と,従来その偽版と位置づけられてきた黒田麴廬(行次郎)校正『増補和解 西洋事情』をとりあげ,その分析を通して福澤や黒田がもつ版権についての認識を浮き彫りにし,この時期の偽版,重版の意味を捉えるきっかけになればと思う.</p>
著者
中川 裕美
出版者
日本出版学会
雑誌
出版研究 (ISSN:03853659)
巻号頁・発行日
vol.46, pp.63-83, 2016-03-20 (Released:2019-03-31)
参考文献数
19

本報告では,黎明期の女子体育の思想がどのように形成されたのかについて,『女学雑誌』の言説分析から明らかにする.当初,体育は女子には不必要なものとされていた.しかし,「母になるべき身体」を持つ女子の体育は国家的責務であるとする考えが次第に強くなった.時代が進むと,日本の女子に相応しい体育は西洋式の舞踏や体操ではなく,薙刀など日本古来の武道であるとされ,身体よりも心の修養が強調されるようになった.