著者
小林 元気
出版者
日本特別活動学会
雑誌
日本特別活動学会紀要 (ISSN:13437151)
巻号頁・発行日
vol.29, pp.51-60, 2021-03-31 (Released:2022-03-31)
参考文献数
27

本稿は、児童会・生徒会選挙に着目し、全国の学校教育における実施状況と、成人後の若年層における主権者教育の知識定着という教育効果の有無を検証することを目的としている。分析の結果、⑴大半の中学校では投票選挙が行われる一方で、小学校と高校での実施状況はおよそ半々であり、個人の学校生活を通じた選挙経験の蓄積にはばらつきがあること、⑵学校生活での選挙経験は成人後の主権者教育の知識定着を強めていることが明らかになった。これらの知見は、全国で実践されてきた児童会・生徒会選挙の教育効果を示唆している。本稿は、特別活動の社会的意義に関するエビデンスの提示を目指した定量的実証研究として、萌芽的な意義をもつものである。
著者
小沼 豊
出版者
日本特別活動学会
雑誌
日本特別活動学会紀要 (ISSN:13437151)
巻号頁・発行日
vol.29, pp.71-80, 2021-03-31 (Released:2022-03-31)
参考文献数
19

本研究では、小学5年生への体験的(ロールプレイ)な内容を含む授業実践(「いじめの避難訓練」)に焦点を当て、援助要請に関係する働きかけが児童の被援助志向性、援助要請行動にどのような影響を与えたかについて、実験群と統制群の比較検討から明らかにしていくことを目的とした。調査は、①5年生の2クラス(実験群と統制群)を用意し、事前調査(Pretest)、事後調査(Posttest)そして、3週間程度の期間をあけた調査(Follow-up)から実施された。その結果、授業実践を行った実験群において、被援助志向性、援助要請行動の向上が確認でき、その効果は3週間後も持続させていることが明らかになった。
著者
冨田 幸子 真田 穣人
出版者
日本特別活動学会
雑誌
日本特別活動学会紀要 (ISSN:13437151)
巻号頁・発行日
vol.30, pp.63-72, 2022-03-31 (Released:2022-03-31)
参考文献数
21

学校現場でのいじめ問題への取組として演劇的手法がある。本研究では、生徒会活動の交流の場で行われたいじめ撲滅劇に着目し、いじめをテーマとする演劇が中学生の傍観者意識に及ぼす効果について検討を行った。その結果、劇上演後には、劇参加群のいじめに対する無関心、自己防衛の意識に有意な減少がみられた。一方、いじめ撲滅劇を鑑賞するだけであった劇鑑賞群には有意な変化はみられなかった。また、加害者支持の意識においても群間に有意な差がみられ、劇参加群のみ得点が減少していた。これらのことから、いじめをテーマとした演劇の取組が、劇参加の生徒会役員の傍観者意識に影響を与えていることが示唆された。
著者
塚野 慧星
出版者
日本特別活動学会
雑誌
日本特別活動学会紀要 (ISSN:13437151)
巻号頁・発行日
vol.31, pp.39-47, 2023-03-31 (Released:2023-04-13)
参考文献数
22

本稿では、近代の哲学者であるカントの多元主義を手がかりに、児童生徒が互いのよさや可能性を発揮することのできる集団活動のあり方を実現するため、集団活動を「冷ます」ことの意義を論じている。活動が盛り上がるなかで熱を帯びる集団活動を適度に抑制することを指すこの実践は、児童生徒が自他について冷静に反省を行うための機会を用意し、互いのよさや可能性を発揮しやすい環境を整えるものである。同実践は、特別活動研究一般において目指されているような、児童生徒の相互作用を豊かにするものとは別なる方向において、集団活動のより良いあり方を実現するための第一歩となりうるものである。
著者
大脇 和志
出版者
日本特別活動学会
雑誌
日本特別活動学会紀要 (ISSN:13437151)
巻号頁・発行日
vol.30, pp.33-42, 2022-03-31 (Released:2022-03-31)
参考文献数
32

学習者に「開かれた教室風土(OCC:open classroom climate)」を保障することが市民性教育にとって重要であることを、日本の小学 4〜 6年生への質問紙調査の分析から明らかにした。国際比較調査で用いられる OCC尺度項目は、日本の小学生の場合「計画的 OCC」と「偶発的 OCC」と解釈し得る2因子構造となった。そして、特別活動の経験は上記 2因子および市民性(効力感や参加意欲)に影響を及ぼすが、OCCから市民性への影響は偶発的 OCCからのみ観察され、計画的 OCCは市民性に影響していなかった。結論として、教室での話合い活動において〈反対意見の表明〉と〈社会問題への言及〉を保障することが市民性教育における特別活動の役割として重要であることを論じた。