著者
烏山 昌起 河上 淳一 松尾 福美
出版者
日本運動器看護学会
雑誌
日本運動器看護学会誌 (ISSN:2186635X)
巻号頁・発行日
vol.16, pp.31-36, 2021-02-28 (Released:2021-03-17)
参考文献数
15

【目的】肩関節周囲炎患者を対象にパンフレットを用いた就寝指導の効果を検討した.【方法】対象はパンフレットによる就寝指導を実施した21名のうち,アンケートが回収できた14名を対象とした.初回来院時に対象者へ夜間痛の有無,夜間痛出現肢位,夜間痛の程度,夜間覚醒回数,熟睡感を調査した.その後,患者指導用のパンフレットを用いて就寝指導を実施した.内容は,各姿勢における肩関節の安静肢位と使用物品(タオル・クッション・枕)を記載している.介入後の変化はアンケートにより調査した.対象者は介入当日に指導内容を実施し,翌朝に夜間痛の程度,夜間覚醒回数,熟睡感を記載した.【結果】受診前の夜間痛出現率は,患側下側臥位が78.5%と最も高かった.夜間痛の程度,夜間覚醒回数,熟睡感は,指導前と比べて指導後は有意に改善した(全てP<0.05).夜間痛と熟睡感の変化量においては,有意な負相関を認めた(r=−0.55,P<0.05).【考察】症状の改善は,肩峰下圧が高まりにくい姿勢で就寝し,肩関節の安静肢位を保てたことが要因と推測する.【結論】就寝指導パンフレットの介入は即時効果が期待され,良好な睡眠を提供するアプローチとなる可能性が示唆された.
著者
北澤 友美
出版者
日本運動器看護学会
雑誌
日本運動器看護学会誌 (ISSN:2186635X)
巻号頁・発行日
vol.14, pp.45-51, 2019 (Released:2020-05-14)
被引用文献数
1

本研究は我が国におけるアスリートに関する研究の中から,大学生アスリートのスポーツ外傷・障害後の心 理面に焦点を当てた研究に着目し,大学生アスリートがスポーツ外傷・障害をどのように捉え,どのような心理 的特徴があるのかを明らかにすることで,看護としての援助を検討することを目的とした.文献検索を行い,16 件を分析対象とした.分析の結果,スポーツ外傷・障害を受けた大学生アスリートの心理的特徴には,不安 や競技意欲の低下などがみられた.しかし,それらは複雑で定型化できるものではなく,個人差を考慮する必 要のある事象であった.またスポーツ外傷・障害時のアスリートへの看護としての援助は,傍にいることや傾 聴を強化していく必要がある.さらに医療従事者との双方向のコミュニケーションがとれるよう支援が必要であ り,必要に応じて大学生アスリートを構成する人的因子となり得る人にも情報提供を行い,サポートを行ってい くことの必要性が示唆された.
著者
林 健司 荒木 さおり 岡安 誠子 平松 喜美子 梶谷 みゆき
出版者
日本運動器看護学会
雑誌
日本運動器看護学会誌 (ISSN:2186635X)
巻号頁・発行日
vol.17, pp.35-42, 2022-02-28 (Released:2022-03-11)
参考文献数
27

本研究の目的は,大腿骨近位部骨折術後高齢者における居宅での生活様相を明らかにすることである.データ収集方法は大腿骨近位部骨折術後で居宅での生活が1ヵ月経過した高齢者に対し半構造化面接を実施した.分析方法は修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチとした.結果,9名の研究参加者を得た.分析の結果,19個の概念が生成され,7つのカテゴリーに分類された.大腿骨近位部骨折術後に居宅退院した高齢者は『自由を手に入れる』一方で,『想定外の現実』に直面し,次第に『生活環境の狭小化』状況にあった.そんな中,徐々に『老いと折り合う』ことで,居宅で暮らす自分を客観視するようになっていた.そして,大腿骨近位部骨折術後に居宅退院した高齢者は,『前向きな依存』と『無理のない自律』の二方向で生活の再構築を始めつつあった.また,一度骨折を経験した高齢者は退院後,『脳裏によぎる再転倒』を抱えながら生活していた.