著者
河上 淳一 後藤 昌史 松浦 恒明 寄谷 彩 政所 和也 永松 隆 今井 孝樹 烏山 昌起 原田 伸哉 工藤 憂 志波 直人
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
pp.11783, (Released:2020-09-08)
参考文献数
26

【目的】本研究の目的は,腱板断裂患者に対し患者立脚評価を用いた治療方針の予測をすることである。【方法】対象は腱板断裂患者229 名で,初診1 ヵ月以降の治療方針(手術または保存)を目的変数,患者立脚評価を説明変数とした決定木分析と傾向スコア分析を行い,治療方針のオッズ比を算出した。【結果】決定木分析にてもっとも手術療法が選択される手術療法傾向群と,もっとも保存療法が選択される保存療法傾向群に分け,それ以外を中間群とした。傾向スコア分析を考慮したオッズ比は,保存療法傾向群に対して手術療法傾向群で11.50 倍,中間群に対して手術療法傾向群で3.47 倍の手術療法が選択された。【結論】腱板断裂患者の治療方針の予測には,SST における4 つの質問の重要性が示唆された。
著者
河上 淳一 田原 敬士 宮崎 優 光野 武志 尾池 拓也 曽川 紗帆 宮薗 彩香 桑園 博明 嶋田 早希子 中村 雅隆
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2009, pp.C4P2183, 2010

【目的】我々は第6回肩の運動機能研究会で、投球動作でのボール把持違いによる上肢帯の可動域変化を報告した。結果としては、ボール把持時の母指と示指の位置違いは上肢帯可動域に影響を及ぼさず、ボールと母指の接触面の違いは、3rdTRの可動域に影響していた。しかし、肩関節可動域の変化と投球障害発生は直結するものではない。そこで、今回は投球障害歴の有無に対し、身体的特徴とボール把持項目が投球障害発生にどのような順列で関わるかを検討した。<BR>【方法】対象は、中学生の軟式野球部で、野球歴が一年以上ある65名(年齢13.1±0.8/身長158.88cm±20.42/体重50.39kg±9.75)とした。対象者を、投球障害歴あり群19名(以下:あり群)(肩障害2名/肘障害13名/肩肘障害4名)と、投球障害歴なし群46名(以下:なし群)に分けた。群分けの方法は、過去に病院を受診し、肩または肘に対し投球障害の診断名が下ったものをあり群とし、野球経験の中で肩または肘に疼痛がなかったものや病院を受診しなかったものをなし群と決めた。障害歴に関与する因子、A.個人因子4項目(年齢/身長/体重/野球経験)、B.身体チェック36項目(両側SLR/HBD/HER/HIR/DF/HFT/CAT/2ndER/2nd I R/2nd TR/3rd ER/3rdIR/3rdTR/Elbow-Flex/Elbow-Extension/Supination/Pronation、一側FFD/Latissimus Dorsi)、C.ボール把持8項目(示指と母指の位置関係/母指とボールの接触部位/投球側握力/非投球側握力/母指示指長/母指中指長/示指中指長/ボールと皮膚の距離)、D.ボールの握りに対するアンケート12項目(a.握りを意識するかb.ポジションで握りは変化するかc.ポジションによって握りを気をつけるかd.キャッチボールと守備練習中では握りが違うと感じるかe.指にかかる事を意識しているかf.キャッチボールで縫い目を気にするかg.守備練習中で縫い目を気にするかh.理想の握りがあるか i.ボールを強く投げる時強く握るかj.ボールを強くに投げる時軽く握るかk.握りを習ったことがあるかl.ストレートを習ったことがあるか)を調査した。以上60項目に対し平均値の差の検定はT検定、独立性の検定にはχ二乗検定を行い、群間の有意差を確認した。そこで有意差が認められたものを説明変数とし、障害歴の有無を目的変数に設定した。その変数に対し、多重ロジスティック回帰分析を用いて、どのような順列で判別されるかを確認した。<BR>【説明と同意】本研究はヘルシンキ条約に基づき実施し、同意を得た。<BR>【結果】群間の結果は、A.個人因子では年齢(P=0.0002)、野球歴(P=0.0006)、身長(P=0.014)の3項目で有意差が認められた。B.身体チェックでは有意差を認めなかった。C.ボール把持項目では母指と示指の位置関係(P=0.0008)、母指示指長(P=0.0160)、母指中指長(P=0.0161)、ボールと皮膚の距離(P=0.0249)、投球側握力(P=0.0022)、非投球側握力(P=0.0091)の6項目で有意差が認められた。D.アンケートではa.(P=0.0000)、b.(P=0.0354)の2項目に有意差が認められ、これら計11項目を説明変数に採用した。ロジスティック回帰分析では、変数減少ステップ法を用いP値が0.2000以下になるまで説明変数を減少させた。結果として有意な変数が4項目選択され、P値が低値なものから順に年齢(P=0.0348)、母指と示指の位置関係(P=0.0407)、野球歴(P=0.0502)、アンケートb(P=0.0533)であった。<BR>【考察】一般的に投球障害は、フォームの乱れを持ち合わせたまま、投球を長期継続した結果起こるオーバーワークだと考えられている。本研究においても、オーバーワークの要素となりえる年齢と野球歴の説明変数に高い判別値を認めた。同様の結果が先行研究にあるため、今回の研究の妥当性がうかがえる。ボール把持に関しても、アンケートbと母指と示指の位置関係の説明変数に高い判別値を認めた。そのため、ボール把持は投球障害に強く関与していると考えられる。当院の先行研究をふまえて結果を考察すると、ボールと母指の接触面は上肢帯の可動域に影響を認め、投球障害に影響を認めない。一方で、母指と示指の位置関係は上肢帯の可動域には影響を認めず、投球障害に影響を認める。今回の結果だけではフォームへの影響などは検討できない。そのため、今後は症例数を増やし障害部位別で検討を実施し、ボール把持と身体的特徴との関連性を検討したい。<BR>【理学療法学研究としての意義】本研究は、理学療法場面での遠位運動連鎖を検討する重要性を示唆している。<BR>
著者
烏山 昌起 河上 淳一 松尾 福美
出版者
日本運動器看護学会
雑誌
日本運動器看護学会誌 (ISSN:2186635X)
巻号頁・発行日
vol.16, pp.31-36, 2021-02-28 (Released:2021-03-17)
参考文献数
15

【目的】肩関節周囲炎患者を対象にパンフレットを用いた就寝指導の効果を検討した.【方法】対象はパンフレットによる就寝指導を実施した21名のうち,アンケートが回収できた14名を対象とした.初回来院時に対象者へ夜間痛の有無,夜間痛出現肢位,夜間痛の程度,夜間覚醒回数,熟睡感を調査した.その後,患者指導用のパンフレットを用いて就寝指導を実施した.内容は,各姿勢における肩関節の安静肢位と使用物品(タオル・クッション・枕)を記載している.介入後の変化はアンケートにより調査した.対象者は介入当日に指導内容を実施し,翌朝に夜間痛の程度,夜間覚醒回数,熟睡感を記載した.【結果】受診前の夜間痛出現率は,患側下側臥位が78.5%と最も高かった.夜間痛の程度,夜間覚醒回数,熟睡感は,指導前と比べて指導後は有意に改善した(全てP<0.05).夜間痛と熟睡感の変化量においては,有意な負相関を認めた(r=−0.55,P<0.05).【考察】症状の改善は,肩峰下圧が高まりにくい姿勢で就寝し,肩関節の安静肢位を保てたことが要因と推測する.【結論】就寝指導パンフレットの介入は即時効果が期待され,良好な睡眠を提供するアプローチとなる可能性が示唆された.
著者
大西 琴乃 烏山 昌起 河上 淳一 濵本 明日香
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会 九州ブロック会
雑誌
九州理学療法士学術大会誌 九州理学療法士学術大会2022 (ISSN:24343889)
巻号頁・発行日
pp.4, 2022 (Released:2022-11-29)

【目的】ストレッチングは傷害予防や健康維持・向上など幅広く活用される. 先行研究では, ストレッチングと温熱療法の同時施行はストレッチング単独と比べて柔軟性が向上すると報告されており, 加温効果の併用は効率的な介入手段と考えられる. この加温効果を日常生活で簡便に利用できる手段として“入浴”が挙げられ, 臨床の指導においても入浴後のストレッチングを推奨する場面は多く見受けられる. しかし, これまでに入浴後のストレッチング効果を検証した報告は散見されず, その有効性は不明である. そこで,本研究の目的は入浴前後のストレッチングが柔軟性に与える影響を比較検討することである.【方法】本研究はCONSORT 声明に準拠した. 対象は研究協力が得られた健常成人20 名( 男性14名,女性6名,平均年齢21.6 歳) であった。群の割り付けは単純ランダム割り付け法を採用し, 本研究の評価に関与しない者が入浴前ストレッチング群(以下; 入浴前群)10名と入浴後ストレッチング群(以下; 入浴後群)10 名に割り付けた. 介入はハムストリングスの伸張性向上を目的としたストレッチングとし, 伸張時間30秒3セットを5日間実施した.対象者には介入期間中に本研究以外のストレッチングや下肢の激しい運動を控えるように指示した. 入浴後群の入浴時間は10 分以上, 温度は38 度~42度,ストレッチングのタイミングは入浴後12 分以内とした. 評価項目は, 背臥位股関節90°屈曲位での膝関節伸展角度とし, 角度測定はデジタル傾斜計DL-155V を用いた. なお, 評価者2 名は対象者が入浴前群・入浴後群のいずれの割り付けか分からない状態( 盲検化) とした. 統計は介入前後の群内比較はWilcoxon 符号順位検定, 群間比較はMannWhitney U 検定を用いた. また, 事後分析として検出力を算出した. 有意水準は全て5%とした.【結果】本研究は計19 名( 入浴前群1 名は他の介入を受け除外) が全ての介入を完了した. 入浴後群の膝関節伸展角度は, 介入前後(pre 26.4 ± 11°, post18.4 ± 11°) で有意な改善を認めた(p=0.03). 一方, 入浴前群の膝関節伸展角度は, 介入前後(pre 33.4 ± 10°, post 28.7 ± 8°) で有意差を認めなかった(p=0.11). さらに, 介入後の膝関節伸展角度は, 入浴後群(18.4 ± 11°) は入浴前群(28.7 ± 8°) と比較して有意に低値であった(p<0.01). 事後分析の結果, 検出力は0.93 であった.【考察】本研究は, 入浴後群の膝関節伸展角度は入浴前群と比べて有意な改善を認めた. その理由として, 疼痛閾値の上昇が挙げられる. 入浴の温熱刺激を加えたことで, ゲートコントロール理論に基づきストレッチング時の伸張痛が軽減することが予想される. その結果, 入浴後群は入浴前群と比較してより強度のストレッチングを行えるようになり, 膝関節伸展角度が向上したと推測した. さらに, 入浴に伴う加温効果によって筋温に変化が生じ, 柔軟性に寄与した可能性も考えられる. これらの要因によって, 入浴後群は入浴前群よりストレッチング効果が得られたと推測された.【結論】本研究は, “入浴後におけるストレッチング指導”の有用性を支持する結果であり, 入浴後のストレッチングは柔軟性の改善に効果的な手段と示唆された.【倫理的配慮,説明と同意】本研究は倫理委員会( 番号2124 号) の承認を得ている.
著者
河上 淳一 烏山 昌起 宮崎 優 青木 美保 進 訓央 松浦 恒明 原口 和史 藤戸 郁久 森口 晃一 宮崎 かなえ 日野 敏明 曽川 紗帆 中村 雅隆 宮薗 彩香 工藤 僚太
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2011, pp.Cd0841, 2012

【はじめに、目的】 腱板断裂術後は再断裂が問題である。近年の再断裂率を下げる要因の報告では、リハビリテーション開始の遅延や装具装着期間延長が推進されている。当院での腱板断裂術後は、装具装着は昼夜問わず3~8週装着、退院は3~4週としており、リハビリテーション開始・装具装着期間延長を検討している。装具装着延長になると、安全性確保の半面で退院後の自宅生活に制限をきたす。特に入浴は、更衣・移動・洗体・洗髪の動作を通常装具なしで行う必要がある。入院時の入浴は、三角巾・ペットボトルなどを利用した簡易装具にて対応をしていた。しかし、自宅での介助なし入浴には、三角巾で被覆される面積が大きいために洗体が困難、三角巾の衛生面が問題になると看護師により指摘を受けた。さらに、症例からも簡単かつ安全に入浴できるようにしたいとの要望があった。入浴用装具購入も検討したが、一般に販売されているものは散見されなかった。そのため、I安全性の向上、II衛生面の向上、III安価の3項目を充たすことで、自宅でも安全に入浴可能な入浴用装具開発を目的にて本検討を実施した。【方法】 試作品(以下:1号)を作成し、使用方法を看護師に説明し腱板断裂術後症例の入浴時に使用させた。その中で、看護師・症例よりあがった問題点を随時改良していった。1号は、EVA樹脂素材のスイムヘルパー(以下:スイムヘルパー)とポリ塩化ビニル(以下:塩ビ)のパイプと紐2mを使用した。スイムヘルパーは、直径15cm・高さ10cmの円柱を3個、塩ビパイプは直線タイプの長さ40cm・直径17mm、紐2mを使用した。スイムヘルパー3個の中央に塩ビパイプを通し、塩ビパイプの中に紐を通すことで、通常装具のように肩から吊るすようにした。部品代は約1800円だった。【説明と同意】 本装具作成にあたって、ヘルシンキ宣言に基づき同意を得た。【結果】 結果として、1号から改良を加えて6号の装具までを作成した。作成の中でI安全性の問題となった点は、A前腕の下方制動性がないB手指・手関節周囲の支えがないC着脱に患肢を動かす必要がある D塩ビパイプが抜け落ちる点だった。II衛生面の問題となった点は、E塩ビの中を通した紐が乾かない点だった。III安価の問題点は、特になかった。【考察】 結果から得られたA~Eの問題点は、6号作成の過程で解決させた。Aは、腱板断裂術後の症例では一般に内転・内旋方向で腱板縫合部の伸張が加わり、下方・内転方向を自身で制御すると腱板に収縮が起こり、再断裂の可能性を高め問題となる。そこで、スイムヘルパーを通す直線の塩ビパイプを前・中・後の3本に分けた。中と後の塩ビパイプ間には、塩ビの三又継手を取り付けし、その継手外側には10cmのパイプを取り付けた。この工程で前腕を支持する部分を作成した。さらに、塩ビパイプに直接前腕を乗せると、圧を一点で受けるので、発泡ポリエチレン性カバーを装着した。Bは、A同様の問題に加えて、通常装具のように手関節を安定させる部品が付いていなかったので、不安感を感じる症例が多かった。そこで、直線の塩ビパイプ先端には、塩ビの直角ジョイント4個と10cmの塩ビパイプ3本で手指・手関節を支える部分を作った。これらの部品は、ジョイント部が可動することで体格に合わせた位置で手関節部を固定できるようにもなった。Cは、紐をかぶるように着脱するので、患肢を動かす必要があった。そこで、直線パイプ前方後方にドリルにて穴を開け、リング状の部品をつけた。紐は両先端にカラビナをつけた。これで、患肢を台に固定した状態でも紐が簡単にまわせるようになった。D塩ビパイプが抜け落ちるのは、Bで可動できる部品を使用した為に、パイプが抜け落ちる可能性が出現し問題点となった。そこで、塩ビパイプの中に結束バンドを通しパイプが抜け落ちないように工夫した。Eは、塩ビパイプの中に通した紐が乾きにくいことが問題となった。この点は、Cの問題点改善で同時に解決した。以上のA~Eの5点を中心に改善することで、I・IIの目的を達成できた。また、IIIに関しては、当初より問題となっていなかったが、部品を見直すことで1400円程度になった。この入浴用装具を利用することで、早期退院かつ装具延長になっても自宅で安全で安心して入浴できるようになると考えている。しかし、現在の入浴用装具は、解剖学・運動学的観点と看護師・症例・理学療法士の主観的意見で作成した。そこで、今後は入浴用装具の違いがどのように腱板に負荷となるかを確かめ、更に改良していきたい。【理学療法学研究としての意義】 本作成過程の意義は、理学療法士が他職種との関わりの中で、新たな職域を拡大するための一助となると考える。
著者
河上 淳一 後藤 昌史 松浦 恒明 寄谷 彩 政所 和也 永松 隆 今井 孝樹 烏山 昌起 原田 伸哉 工藤 憂 志波 直人
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.47, no.6, pp.587-592, 2020 (Released:2020-12-18)
参考文献数
26

【目的】本研究の目的は,腱板断裂患者に対し患者立脚評価を用いた治療方針の予測をすることである。【方法】対象は腱板断裂患者229 名で,初診1 ヵ月以降の治療方針(手術または保存)を目的変数,患者立脚評価を説明変数とした決定木分析と傾向スコア分析を行い,治療方針のオッズ比を算出した。【結果】決定木分析にてもっとも手術療法が選択される手術療法傾向群と,もっとも保存療法が選択される保存療法傾向群に分け,それ以外を中間群とした。傾向スコア分析を考慮したオッズ比は,保存療法傾向群に対して手術療法傾向群で11.50 倍,中間群に対して手術療法傾向群で3.47 倍の手術療法が選択された。【結論】腱板断裂患者の治療方針の予測には,SST における4 つの質問の重要性が示唆された。
著者
永松 隆 甲斐 義浩 政所 和也 河上 淳一 後藤 昌史
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.43 Suppl. No.2 (第51回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.1240, 2016 (Released:2016-04-28)

【はじめに,目的】上肢挙上位での肘伸展筋力は,投球障害肩に対する機能評価であるElbow Extension Testとして有用性が報告されている。挙上位での肘伸展筋力には上腕三頭筋の筋力のみならず,肩甲上腕関節や肩甲胸郭関節,および体幹の固定力が複合的に関与していると考えられるが,これらの関与の詳細は明らかとなっていない。そこで今回は,肩甲上腕関節の安定性を担う回旋筋腱板の1つである棘下筋の機能が上肢挙上位での肘伸展筋力に及ぼす影響を調査した。【方法】対象は健常成人男性10名の利き手側10肩(21.1±0.7歳)とした。実験①棘下筋の選択的疲労運動(ISFP)による肩外旋筋力減少率の確認:Kai,若林の報告に準じ,側臥位にて3kgのダンベル負荷のもと1st外旋運動を1Hzのスピードが維持できなくなるまで行わせた。ISFP前後で1st外旋筋力(ER)を測定し,ER減少率を確認した。ERは座位,回旋中間位での等尺性筋力とした。実験② ISFP前後の挙上位肘伸展トルク(EET)の比較:EETにおける棘下筋の影響を調査した。EETは座位にて肩・肘関節90°屈曲位,前腕90°回外位,前腕長軸が重力線に一致した肢位での等尺性肘伸展筋力とした。また,EET測定中の筋活動量を表面筋電図にて計測した。被験筋は上腕三頭筋長頭,棘下筋,前鋸筋,僧帽筋上部および下部線維とし,電極位置はPerottoの記述を参考に各筋に貼付した。筋電計はテレメトリー筋電計MQ8を使用し,データはVital Recorder2にて収録した。実験①②におけるER,EETはプルセンサー型徒手筋力計MT-100を用い,抵抗部位を前腕遠位端にて測定。測定は5秒間の最大随意収縮を2回計測し,その平均値を採用した。得られたデータは各被験者の前腕長を乗じ,体重で除し正規化した。実験②において収録した筋電図データは,全波整流後,5秒間のデータの中間3秒間の積分筋電を求めた。求めた積分筋電は各筋のMVCで除し,%MVCを算出した。統計処理は,ERおよびEETの測定再現性を確認するため,2回の測定値から級内相関係数ICC(1,1)を求めた。次に実験①②におけるISFP前後のER,EETおよび各筋の%MVCをWilcoxonの符号付順位検定にて比較検討した。有意水準は5%未満とした。【結果】測定再現性はERがICC(1,1)=0.890,EETがICC(1,1)=0.934であり,良好な再現性が得られた。実験①におけるISFP前後のERの比較では,ISFP後のERが有意に低値を示し(P<0.01),平均で40%減少した。実験②におけるISFP前後のEETの比較では,ISFP後のEETが有意に低値を示し(P<0.01),平均で約20%減少した。積分筋電は,棘下筋と僧帽筋上部線維において,ISFP後の値が有意に低値を示した(P<0.01)。【結論】本研究の結果,棘下筋機能低下により挙上位肘伸展トルクは約20%減少することが明らかとなった。Elbow Extension Testは棘下筋の肩甲上腕関節安定化としての機能が密接に関連し,またその機能を評価し得るテストであることが示唆された。