著者
土肥 眞奈 佐々木 晶世 小林 優子 叶谷 由佳
出版者
一般社団法人 日本臨床栄養代謝学会
雑誌
学会誌JSPEN (ISSN:24344966)
巻号頁・発行日
vol.2, no.3, pp.186-195, 2020 (Released:2021-02-12)
参考文献数
32

【目的】看護師が胃瘻カテーテル内汚染・閉塞予防のため実践してきた管理方法と交換期間を調査すること【対象および方法】無作為抽出した日本の有床病院と介護保険施設2,000箇所の看護師に質問紙を配布した.【結果】チューブ型胃瘻を使用する287施設の内,回答が多かった平均交換期間はバルーン型1カ月以上,バンパー型4カ月以上だった.カテーテル内汚染・閉塞予防策は白湯充填,汚染への対処方法,汚染に有用と考える対処方法は白湯フラッシュの回答が多かった.バルーン型カテーテルを1カ月以上使用する施設は有意に非常勤管理栄養士配置数が多かった(p=0.02).【結論】管理栄養士数を適正に配置し,看護師と連携して胃瘻管理を行うことがカテーテルを長く使用可能にすると推測される.また不使用時に白湯を充填しておくこと,カテーテル内汚染には白湯フラッシュが最も行われていた.
著者
乙丸 晶世 叶谷 由佳 渡辺 久 日下 和代 加藤 秀樹 高野 正信 佐藤 千史
出版者
Japanese Society for Mastication Science and Health Promotion
雑誌
日本咀嚼学会雑誌 (ISSN:09178090)
巻号頁・発行日
vol.13, no.2, pp.67-76, 2003

咀嚼が口腔機能や身体状態を改善することはよく知られているが, 多くは動物実験であり, 人の心理状態に及ぼす影響については十分に明らかではない. そこで, 小学校5年生を層別化無作為に11名のグミ咀嚼群と10名の対照群に分け, 特別に調整したグミを夏休み中の28日間に咀嚼することが心理状態, 口腔機能にどのような影響を及ぼすかについて検討した. 心理状態については児童用内田クレペリン精神検査, 児童用顕在性不安検査を用いて検討し, 口腔機能については咬合力, 唾液量を測定した. その結果, 対照群では夏休み期間後に咬合力が有意に低下していたが, グミ咀嚼群では低下がみられず, グミ咀嚼が咬合力の低下を抑制する可能性が示唆された. またグミ咀嚼により作業効率が有意に上昇し, ものごとへの積極性も有意に増加することが明らかになった. また顕在性不安検査と唾液量には差がみられなかった. 咀嚼は子供の心理状態, 口腔機能へ好ましい効果をもたらす可能性がある.
著者
菅野 眞綾 土肥 眞奈 佐々木 晶世 服部 紀子 叶谷 由佳
出版者
日本健康医学会
雑誌
日本健康医学会雑誌 (ISSN:13430025)
巻号頁・発行日
vol.25, pp.296-303, 2016

<p>本研究は,就寝前に湯たんぽを足元に設置し,寝床内と足部を局所的に加温することによる施設入所高齢者の睡眠に及ぼす影響について検討することを目的とした。介護老人福祉施設に入所中の高齢者6名を対象に就寝中の客観的睡眠状況,主観的睡眠感,核心温,寝床内温度を調査し,介入日とコントロール日で比較した。その結果,有意差はないものの介入日はコントロール日と比較し,入眠の促進,中途覚醒の減少,REM睡眠時間の延長,実質睡眠時間合計の延長があった。また,主観的睡眠感では,有意差はないものの介入日はコントロール日に比較し,睡眠時の疲労回復,起床時眠気,夢みが改善した。湯たんぽによる足元加温は施設入所高齢者の睡眠状況の改善に効果がある可能性があり,事例数や介入期間を増加して検討すること,更なる睡眠の改善のためには,安全を考慮しつつも十分に寝床内を加温する方法について検討していく必要性が示唆された。</p>
著者
佐々木 晶世 佐久間 夕美子 叶谷 由佳 佐藤 千史
出版者
日本健康医学会
雑誌
日本健康医学会雑誌 (ISSN:13430025)
巻号頁・発行日
vol.18, no.1, pp.24-30, 2009-04-30 (Released:2017-12-28)
参考文献数
18
被引用文献数
1

ガム咀嚼による脳や認知機能にり与える影響については調査されているものの,ガム咀嚼をしながらの単純作業上,その後の疲労にどのような影響があるのかについては明らかになっていない。そこで,ガム咀嚼が作業効率と疲労に与える影響に関して研究を行った。14名の健康な男女を2:1となるよう2群に割り付け,介人群(9名)にはガム咀嚼をしながら,対照群(5名)にはガム咀嚼はしない状態で内田クレペリンテスト(以下,クレペリン)を行ってもらった。また,クレペリン前後の身体・精神疲労度をVisual Analog Scaleを用いて測定した。その結果,作業後の精神疲労度とクレペリン作業量とに負の相関関係がみられ(p<0.05),精神疲労が高いほど作業量が少ない結果となった。クレペリン作業量には2群間で有意差はみられなかった。クレペリン前後での疲労度の変化では,対照群において身体疲労度が作業後に有意に増加し(p<0.05),介人群では有意な変化はみられなかったものの精神疲労度が低下した。以上より,クレペリン作業中のガム咀嚼により,作業後の疲労が軽減される効果のあることが明らかとなった。
著者
柏﨑 郁子 佐々木 晶世 碓井 瑠衣 叶谷 由佳
出版者
一般社団法人 日本老年看護学会
雑誌
老年看護学 (ISSN:13469665)
巻号頁・発行日
vol.22, no.1, pp.98-106, 2017 (Released:2018-08-01)
参考文献数
52

日本では一般病床での身体拘束を規制する法律は存在しない.一般病床は治療を優先する特性から,介護保険施設向けの「身体拘束ゼロへの手引き」(以下,「手引き」)の要件をそのまま適用するには困難さがある.最高裁判所平成22年1月26日判決は,一般病床での身体拘束に法的な判断を下した唯一の最高裁判決である.その判例評釈と,各医療施設の身体拘束ガイドラインの内容を「手引き」の3要件をもとに比較検討した.結果,裁判で身体拘束是非を判断する根拠は〈切迫性を判断すること〉〈拘束に代替する手段の実施〉〈拘束を行う時間〉〈医師の参加〉〈拘束中における状態確認〉〈説明〉〈承諾書〉〈記録〉であり,同様の視点で一般病床の各ガイドラインでは具体的な看護内容が示されていた.一般病床で身体拘束をする際には,「手引き」の3要件の考え方を踏襲した多くの複雑な手順が必要とされていることが明らかとなり,期待される看護の責任が多岐に渡ることが示唆された.
著者
泊 祐子 赤羽根 章子 岡田 摩理 部谷 知佐恵 遠渡 絹代 市川 百香里 濵田 裕子 叶谷 由佳
出版者
一般社団法人 日本看護研究学会
雑誌
日本看護研究学会雑誌 (ISSN:21883599)
巻号頁・発行日
vol.45, no.4, pp.4_841-4_853, 2022-10-20 (Released:2022-10-20)
参考文献数
35

目的:小児の利用者のいる訪問看護ステーション(以下,訪問看護St.)において属性と他施設・多職種との連携困難,診療報酬が算定できないサービスの実施状況の地域差を明らかにする。方法:無作為に抽出した指定小児慢性特定疾病訪問看護St.に質問紙調査を行った。結果:回収した455部を,都市部(31.4%),中間部(31.4%),郡部(36.3%)の3群で比較した。都市部と比べて,郡部では訪問距離「片道15km以上」が61.8%と多く,小児利用者数は4.8±7.0人と少なかった。医療的ケア児数には有意差がなかった。他施設・多職種連携困難は,「退院調整会議での連携に困難を感じる」が都市部より郡部が有意に多かった。また,診療報酬が算定できないサービスの実施は「受診時の訪問看護師の同席」が都市部より郡部が有意に多かった。結論:どの地域でも訪問看護St.が機能しやすい仕組づくりの必要性が確認された。
著者
金田 明子 叶谷 由佳
出版者
一般社団法人 日本プライマリ・ケア連合学会
雑誌
日本プライマリ・ケア連合学会誌 (ISSN:21852928)
巻号頁・発行日
vol.46, no.1, pp.12-19, 2023-03-20 (Released:2023-03-24)
参考文献数
17

目的:エンド・オブ・ライフ期(EOL期)にある在宅療養要介護高齢者のケアマネジメント実践の関連要因と効果的な研修について検討する.方法:全国の居宅介護支援事業所から2,540事業所を無作為抽出し,各1名の介護支援専門員に自記式質問紙の回答を求めた.ケアマネジメント実践は,EOL期の在宅療養要介護高齢者のケアマネジメント実践尺度(EOLCM尺度)を用いて評価した.二変量解析にて関連要因を明らかにし,重回帰分析を行った.結果:EOLCM尺度得点に寄与する順に,疾患の研修受講経験,多職種連携の研修受講経験,性別,看護の研修受講経験,訪問看護事業所の併設,経験年数,チームビルディングの研修受講経験が示された.結論:寄与が示された研修内容を優先的に行うこと,訪問看護師を活用することによってEOL期の在宅療養要介護高齢者のケアマネジメント実践の質が向上する可能性が示唆された.
著者
部谷 知佐恵 岡田 摩理 泊 祐子 赤羽根 章子 遠渡 絹代 市川 百香里 叶谷 由佳 濵田 裕子
出版者
一般社団法人 日本看護研究学会
雑誌
日本看護研究学会雑誌 (ISSN:21883599)
巻号頁・発行日
pp.20211206162, (Released:2022-08-03)
参考文献数
33

目的:全国の小児の訪問看護を行う訪問看護ステーション(以下,訪問St.)において診療報酬を算定できないサービスの実態と算定の必要があると考えるサービスについて明らかにする。方法:全国の小児利用者のいる訪問St.に診療報酬を算定できないサービスの実施状況と必要性に関する質問紙調査を行い,455か所の訪問St.の記述統計および自由記述の内容分析を行った。結果:診療報酬を算定できないサービスは78.7%の訪問St.で実施されており,実施による小児のメリットは【状態が変化しやすい小児の体調悪化のリスク回避ができる】【状況の変化に合わせて小児の成長発達が促進できる】【医療的ケア児と家族の生活が安定する】【小児と家族の状況に応じた支援体制が構築できる】があった。結論:多くの訪問St.が,診療報酬の算定ができなくても小児にとってのメリットがあることでサービスを提供しており,算定の必要性を感じていた。
著者
藤井 千里 赤間 明子 大竹 まり子 鈴木 育子 細谷 たき子 小林 淳子 佐藤 千史 叶谷 由佳
出版者
一般社団法人 日本看護研究学会
雑誌
日本看護研究学会雑誌 (ISSN:21883599)
巻号頁・発行日
vol.34, no.1, pp.1_117-1_130, 2011-04-01 (Released:2016-03-05)
参考文献数
42

本研究の目的は,訪問看護ステーションの収益と管理者の経営能力との関連を明らかにすることである。全国のステーション管理者を対象に質問紙調査を行い,有効回答数64ヶ所のデータを集計分析した。 その結果,次のことが明らかとなった。管理者が収支を予測したり,経営戦略の策定,経理・財務を理解している割合や他職種にステーションの過去の実績を示す,利用者獲得に向けた活動の評価について実施している割合が低かった。一方,従事者数や利用者数が中央値より多い,管理者が経営学を学んでいる,経営戦略や経営計画を策定し,採算性の評価をしている,必要な情報を収集・分析し,有効に活用しているステーションは,有意に収益が高かった。 以上より,ステーションの経営の安定化には,計画に基づいた事業の実施とその評価,利用者だけではなく,医師や介護支援専門員等の専門職を顧客と位置づけて営業活動を実施していくことの重要性が示唆された。
著者
泊 祐子 岡田 摩理 遠渡 絹代 市川 百香里 部谷 知佐恵 濵田 裕子 叶谷 由佳 赤羽根 章子
出版者
一般社団法人 日本看護研究学会
雑誌
日本看護研究学会雑誌 (ISSN:21883599)
巻号頁・発行日
pp.20210123121, (Released:2021-07-09)
参考文献数
23

目的:医療的ケアのある重症児を看ている小児専門訪問看護ステーションの専門的役割と機能を明らかにすることである。今後,小児の訪問を新たに始める場合の準備の目安や,重症児と家族をケアする看護師の指針となると考えられる。方法:小児を専門としている訪問看護ステーション5か所の看護管理者5人にインタビューを行い,質的に分析を行った。結果:小児専門訪問看護ステーションは,【重症児の特徴をふまえた高度なケアの実施】と【家族全体の生活を支える援助】から成る『重症児と家族を支える小児専門訪問看護の役割』をもち,その土台には『小児専門としての役割を果たすための訪問看護ステーションの機能』として【小児在宅のプロの育成】と【家族のニーズに応える体制づくり】があった。結論:小児専門訪問看護の教育的機能と相談機能を推進することは,小児の訪問看護の拡大と質の向上につながると考えられる。
著者
半田 美織 日下 和代 叶谷 由佳 佐藤 千史
出版者
公益社団法人 日本看護科学学会
雑誌
日本看護科学会誌 (ISSN:02875330)
巻号頁・発行日
vol.23, no.4, pp.20-30, 2004-01-13 (Released:2012-10-29)
参考文献数
20
被引用文献数
6 1

本研究はデイケアに通所中の精神障害者59名を対象とし, アンケートと面接調査, 参与観察により主観的QOLや影響要因を分析することによって, 障害者の抱える問題を明確化し, デイケアにおける援助について検討することを目的とした.その結果, 以下のことが明らかになった. (1) 入院経験のある人はない人に比べて生活満足度が低かった. (2) 疾患によって心理的機能の満足度が異なる. (3) 同居者や相談相手がいる人, 相談相手に家族やクリニック以外の友人が含まれている人の生活満足度が高かった. (4) 食事を週1回以上は自分で作る人は心理的機能領域で, 家族が食事を作ってくれる人は身体的機能領域で満足度が高かった. (5) 障害受容の満足度は全体的に低く, その満足度が高い人は生活満足度が高かった. これらから, 対人関係や自尊心, 自己認知概念などの要因は生活満足度への影響が大きく, これらの要素に対する援助の重要性が示唆された.
著者
片山 聡子 叶谷 由佳 日下 和代 佐藤 千史
出版者
一般社団法人 日本看護研究学会
雑誌
日本看護研究学会雑誌 (ISSN:21883599)
巻号頁・発行日
vol.26, no.1, pp.1_147-1_161, 2003-04-01 (Released:2016-03-31)
参考文献数
39

精神障害者小規模作業所通所者の生活満足度と個人的特性,客観的QOLとの関係を明確にすることを目的に首都圏の精神障害者小規模作業所7カ所に通所する精神障害者58名を対象とし,面接調査を行った。 その結果,以下のことが明らかになった。 作業所通所者の項目別生活満足度で,最も得点が高かったのは作業所に対する満足度の項目であり,最も得点が低かったのは障害者として扱われることに対する満足度であった。 生活満足度総得点と総入院期間とは負の相関があり,生活満足度と情緒的サポート得点は正の相関があった。 情緒的サポート,手段的サポートのいずれも家族の占める割合が大きかった。 調査結果から,地域で生活している精神障害者に対し,病院においては入院早期から地域に患者を帰す援助,入院施設と作業所との連携,精神障害者と家族との関係を改善させる援助,地域にノーマライゼーションを浸透させる働きかけが重要であることが示唆された。
著者
出羽 恵子 叶谷 由佳 佐藤 千史
出版者
一般社団法人 日本看護研究学会
雑誌
日本看護研究学会雑誌 (ISSN:21883599)
巻号頁・発行日
vol.27, no.4, pp.4_101-4_107, 2004

病院の言葉遣いに対する指導内容と実際の看護職の言葉遣いに対する患者満足度の関連を明確にするために,東京23区・大阪市・島根県・鳥取県で一般病床数100床以上の全病院の看護管理者を対象とし,看護職の「様」呼称・敬語使用の統一状況と,それらのうち,敬語使用統一病院の入院患者(以下,統一群)と不統一病院の入院患者(以下,不統一群)に対し,看護職の実際の言葉遣いと患者満足度を調査した。 「様」呼称統一の割合は入院において低く,敬語使用統一の割合は外来,入院とも高かった。「統一群」の患者は看護職からより丁寧な言葉で話されていることが有意に多かった。「統一群」の患者はより丁寧な言葉遣いを希望することが有意に多く,「統一群」・「不統一群」間で病院や看護職への患者満足度に有意差はなかった。看護職の言葉遣いがより丁寧であるほど,病院や看護職への患者満足度が有意に高かった。
著者
出羽 恵子 叶谷 由佳 佐藤 千史
出版者
一般社団法人 日本看護研究学会
雑誌
日本看護研究学会雑誌 (ISSN:02859262)
巻号頁・発行日
vol.27, no.4, pp.101-107, 2004-09-10
参考文献数
8

病院の言葉遣いに対する指導内容と実際の看護職の言葉遣いに対する患者満足度の関連を明確にするために,東京23区・大阪市・島根県・鳥取県で一般病床数100床以上の全病院の看護管理者を対象とし,看護職の「様」呼称・敬語使用の統一状況と,それらのうち,敬語使用統一病院の入院患者(以下,統一群)と不統一病院の入院患者(以下,不統一群)に対し,看護職の実際の言葉遣いと患者満足度を調査した。<br> 「様」呼称統一の割合は入院において低く,敬語使用統一の割合は外来,入院とも高かった。「統一群」の患者は看護職からより丁寧な言葉で話されていることが有意に多かった。「統一群」の患者はより丁寧な言葉遣いを希望することが有意に多く,「統一群」・「不統一群」間で病院や看護職への患者満足度に有意差はなかった。看護職の言葉遣いがより丁寧であるほど,病院や看護職への患者満足度が有意に高かった。
著者
赤間 由美 森鍵 祐子 大竹 まり子 鈴木 育子 叶谷 由佳 細谷 たき子 小林 淳子
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.61, no.7, pp.342-353, 2014 (Released:2014-08-08)
参考文献数
23
被引用文献数
1

目的 生活保護現業員のメンタルヘルスの実態を把握し,メンタルヘルスと関連が予測される労働状況,研修講習会の参加状況,生活習慣,疾病の有無,ソーシャルサポート,自己効力感との関連を明らかにする。方法 全国の福祉事務所(1,230か所)を,設置主体,地域別に降順に並び替え,等間隔抽出法により20%,246施設を抽出し,各施設 5 人ずつ計1,230人の生活保護現業員を調査対象とする無記名自記式質問紙調査を行った。調査項目は,基本属性,労働状況,ソーシャルサポート(家族・友人,上司,同僚),研修会・講習会への参加,疾病の有無,生活習慣,生活保護現業員としての自己効力感,生活保護現業員のメンタルヘルス(GHQ28)とした。GHQ28得点を従属変数とし,区分点で GHQ 5 点以下を GHQ 低群,GHQ6 点以上を GHQ 高群として 2 群に分け,独立変数との関連を t 検定,χ2 検定または Fisher の直接確率法により確認した。 単変量分析の結果,性差が認められたことから,男女別に GHQ28得点の高群,低群の 2 群を従属変数とし,有意性が認められた変数を独立変数とする,多重ロジスティック回帰分析(変数増加法ステップワイズ尤度比)を行った。結果 有効回答数は506人,男性410人,女性96人で,GHQ 高群は66.0%,低群は34.0%とメンタルヘルス不調の者の割合が高かった。 分析の結果,生活保護現業員男女ともに,10時間以上の労働時間の者は 9 時間以下の者に比べて,また自己効力感の低い者は高い者に比べてメンタルヘルスが有意に不調であった。男性生活保護現業員では,適度な睡眠時間が取れている者,同僚および,家族・友人のサポートが得られている者,社会福祉士資格を有する者のメンタルヘルスが良好であった。女性生活保護現業員では,年齢が高くなるほどメンタルヘルスが悪化していた。また家庭訪問を最多業務としている者のメンタルヘルスが良好であった。結論 以上のことから,残業時間への配慮,サポート的なコミュニケーションや自己効力感を育む環境づくりが求められる。男性では,適度な睡眠時間の確保,女性ではワークライフバランスを意識した働き方等,性差を考慮したメンタルヘルス対策が示唆された。
著者
鈴木 英子 叶谷 由佳 石田 貞代 香月 毅史 佐藤 千史
出版者
日本保健福祉学会
雑誌
日本保健福祉学会誌 (ISSN:13408194)
巻号頁・発行日
vol.10, no.2, pp.19-29, 2004-03-30

本研究の目的は、日本語版RAS (Rathus assertiveness schedule)を作成し、その因子構造を評価することである。 RASは、Rathusによって開発されたアサーティブネス行動を測定するための尺度であり、欧米では広く使われている。そのRASをback-translationとともに日本語へ翻訳し、看護学生103人のサンプルで検討した。その結果、日本語版RASはテスト-再テスト法(r=0.86 p<0.01)及び折半法(r=0.72〜0.80 p<0.01)で信頼係数が高かった。日本語版RASのクロンバックの信頼係数は0.82〜0.84 (p<0.01)であり、内的整合性が高かった。因子分析では、7因子が抽出され、原版のRASとは、若干の違いがあったものの妥当性が高い可能性が示唆された。
著者
半田 美織 日下 和代 叶谷 由佳 佐藤 千史
出版者
公益社団法人 日本看護科学学会
雑誌
日本看護科学会誌 (ISSN:02875330)
巻号頁・発行日
vol.23, no.4, pp.20-30, 2004-01-13
被引用文献数
5 1

本研究はデイケアに通所中の精神障害者59名を対象とし, アンケートと面接調査, 参与観察により主観的QOLや影響要因を分析することによって, 障害者の抱える問題を明確化し, デイケアにおける援助について検討することを目的とした.<BR>その結果, 以下のことが明らかになった. (1) 入院経験のある人はない人に比べて生活満足度が低かった. (2) 疾患によって心理的機能の満足度が異なる. (3) 同居者や相談相手がいる人, 相談相手に家族やクリニック以外の友人が含まれている人の生活満足度が高かった. (4) 食事を週1回以上は自分で作る人は心理的機能領域で, 家族が食事を作ってくれる人は身体的機能領域で満足度が高かった. (5) 障害受容の満足度は全体的に低く, その満足度が高い人は生活満足度が高かった. これらから, 対人関係や自尊心, 自己認知概念などの要因は生活満足度への影響が大きく, これらの要素に対する援助の重要性が示唆された.
著者
小林 淳子 赤間 明子 大竹 まり子 鈴木 育子 叶谷 由佳 藤村 由希子 右田 周平
出版者
山形大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

平成17年度は,妊娠を契機に禁煙した、あるいは喫煙を継続した女性喫煙者の「たばこに対する思い」を因子探索的に分析した。その結果,出産後まで禁煙を継続した女性では「子どものため,自分のため,他の人のために喫煙はやめるべき」という規範的意職と,「出産後のいたずら喫煙,育児の負担がなければ喫煙しない」という将来の再喫煙を避けるための対策の因子が抽出された。一方,再喫煙した女性では「また吸ってしまうかもしれない」という再喫煙の予感,「止めたいが止められない」という禁煙困難,「禁煙は考えていない」という無関心の因子が抽出された。「子どもと喫煙」に関するラベル数の割合が,禁煙継統群は喫煙再開群よりも明らかに高く,PRECEDEPROCEEDモデルの「実現要因」である喫煙環塊への対策に加えて,「前提要因」である「喫煙による子どもへの影響の認知」を高めるために,「強化要因」である医療関係者の役割の璽要性が示唆された。平成18年度は,地域における禁煙サポート源として看護職者が機能するために,看護職者よる禁煙・防煙支援の実態と関連要因を解明を目的とする質問紙調査を実施した。Y県内の55施設,所属する看護職1414名を分析対象とした。その結果、禁煙・防煙支援が業務としての位置づけられている407名(28.8%)、禁煙・防煙支援の経験あり267名(18.9%)と低率であり、禁煙支援・防煙支援の困難は189名(70.8%)が感じていた。同時に、禁煙・防煙支援の講習会の参加は250名(17.7%)に留まった。業務の位置づけがある群で支援経験ありは38.3%,位置づけが無い群では11.0%,しかし位置づけがあっても支援経験なしが61.7%を占めた。禁煙支援の自己効力感は100点満点で平均14.4(±12.3)点と低かった。以上の結果から,看護職者は禁煙支援・防煙支援を業務として位置づけられていても実施していない割合が高く,支援の自己効力感が低い点が課題であることが明らかとなった。