著者
堀内 正昭
出版者
昭和女子大学短期大学部
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

本研究は、2004年に発見された仮議事堂(初代国会議事堂:竣工1890年)の図面をきっかけに、関連文献の収集と分析を通じて仮議事堂を建築史的に復元考察しようとするものであり、研究期間中に日本建築学会を中心に計6件の論文を発表した。まず、今回発見された図面は仮議事堂の実施原図であること、工事中に設計変更がなされて竣工したことを明らかにした。また、当初の煉瓦造から木造に変更かつ縮小されたが、原案を設計したパウル・ケーラーのプランニングが継承されていたことを明らかにした。次に、わずかに遺された写真や明治期の錦絵をはじめとする絵画資料ならびに類例建築から、仮議事堂の小屋組は、当時わが国で「ドイツ小屋」と呼ばれていた技法を用いて、それをタイ・バーで補強した混合構造で造られていたと考えられること、その構法は、同時代のドイツに建てられた祝典会場のそれに酷似していたこと、それは第1回帝国議会開催に間に合わせるという工期の問題があったからに他ならず、双方とも仮設建築であったことに起因することを明らかにした。さらに、仮議事堂の屋根葺き材についてはこれまでスレート葺きと推察されてきたが、本研究では、当時のドイツでこの種の仮設建築にアスファルト・ルーフィングを用いた例が複数あり、わが国では時期的にルーフィング仕様が可能であったことから、工事の最終段階で変更がなされた可能性の高いことを考察した。こうした研究成果を通じて、期間中にとくに貴族院議場とその周辺の50分の1の模型を製作した。唯一遺された仮議事堂の外観写真を参考に、この模型を使ってとくに複雑な起伏を見せる議場周りの屋根伏せを復元的に考察するとともに、建物全体の屋根形状を明らかにした。
著者
堀内 正昭
出版者
昭和女子大学短期大学部
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1997

筆者は本研究課題に対して、法務省旧本館を取り上げ、とくに構法に関する研究を行った。まず、法務省旧本館(1888〜1895)に採用された碇聯鉄構法は、わが国において明治10年代にフランス人技師レスカスによって導入された。このレスカスの業績は地震国の耐震構法としてドイツでも知られ、ドイツ人建築家エンデ&ベックマンは、碇聯鉄構法を煉瓦造を前提にした場合に、セメント・モルタルとの併用で最強の耐震性を発揮する構法として旧本館に採用したのだった。従来、碇聯鉄構法は帯鉄を煉瓦壁の中に挿入して用いたと考えられていたが、旧本館では煉瓦壁中のみならず、火打ち梁のように建物のコーナーを固めていたことがわかった。なお、旧本館は現存最古の採用例となる。また、旧本館の廊下には防火床構法であるヴォールト煉瓦床が採用されたほか、3階床には煉瓦で被覆した鉄梁、さらに鉄筋コンクリートで補強した梁が用いられた。このように、旧本館は、1890年代以降に普及したとされる耐震ならびに防火床構法をすべて備えた先駆的な建物であった。次に、旧本館の床組は、建築仕様書によると、振れ止めで補強され、響き止めのために石炭殻が敷かれていたという。この種の床組は当時ドイツ式と呼ばれた。19世紀末のベルリンでは、根太に長さ6m以上の梁を用いた場合、90cmの間隔で根太を入れ、振れ止めで補強された。旧本館の根太の長さは762cmで、約92cmの間隔で配置されていたことから、床組の構法をドイツ式としてよい。さらに、旧本館の小屋組は、束を左右から方杖で支えたり、数多くの斜柱で支えている点でドイツに類例のないものであり、そこで用いられた部材はドイツのものよりも大きかった。そうなった理由は、日本では小屋裏を積極的に使用する必要が無かったことと、日本の耐震技術の発達を促したとされる濃尾地震(1891)を工事中に経験したことで、小屋組の耐震設計が強化されたからだと考えられる。
著者
三井 はるみ
出版者
昭和女子大学短期大学部
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
1993

本研究は、千葉県の上総・安房地方に広がる「房総アクセント」の実態把握と体系記述を目的とした。「房総アクセント」は、京浜アクセント(金田一春彦による)の一変種でありながら、北奥方言アクセントなどと同じく母音の種類(広母音か狭母音か)が音調に関与するアクセントで、地域差も大きい。またその歴史的解釈をめぐっては、異なる立場からの論争がある。本研究では歴史的解釈に先立つものとして、1.特に語音と音調の関係について従来の報告より細部にわたる詳細なデータを収集する。2.代表的な地点の体系記述を行い、地域差を把握する。の2点を目標とした。金田一の「房総アクセント」の4分類などを参考に、10地点(市原市、東金市、茂原市、一宮町、大多喜町、鴨川市、君津市、白浜町、木更津市、館山市)を選び、それぞれ60歳代から70歳代の生え抜きの話者を対象に調査を行った。調査にあたっては、主として東北大学文学部編『アクセント調査票』を用い、場合によっては類別語彙を補充した。また読み上げ式調査を補完するものとして、上記のうち2地点では談話の収録を行った。現在読み上げ式調査、収録談話ともに、結果の整理を行っている。今後これらをもとに体系の記述に進む予定である。なお、今回の調査内容は比較的簡略なものであった。研究実施計画に記した、より詳細な内容の調査は今回行うことができず、今後の課題として残されている。
著者
駒谷 真美
出版者
昭和女子大学短期大学部
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2007

本研究の内容本研究の背景として、博士論文(お茶の水女子大学大学院,2006,駒谷)で、幼児期と児童期それぞれの時期に適応したメディアリテラシー(以下MLと略す)教育を日本で初めて開発し、「ML教育と子どもの生態学的環境モデル」を構築した。更なる研究の萌芽を育成する視点から、幼児教育と小学校教育の場でのML教育の普及を期待し、その方略として、教育学的視点から幼稚園年長児から小学校1年生までを対象に、接続期を意識したML教育の幼小連携カリキュラムを開発した。平成19年度は、米国でのML教育のカリキュラムとレッスンスタディの技法を研修し、本研究のカリキュラム試案をまとめた。平成20年度は、【接続期前期】のカリキュラムを玉川学園幼稚部で実践した。平成21年度は、【接続期中期】と【接続期後期】のカリキュラムの継続実践を行った。本研究の意義と重要性国内外では初めてML教育において接続期を意識し、幼児期から児童期の統合性と継続性を持つ幼小連携カリキュラム「メディアであそぼ!」を開発した点に、本研究の意義を見出せる。具体的には、玉川学園幼稚部で【接続期前期】(年長児後半)プロジェクト「好きな遊びのCMを作ろう!」(グループで遊んでいるCMを作成し発表)、同学園初等部で【接続期中期】(小学1年入学~ゴールデンウィーク前)プロジェクト「自分CMを作ろう!」(各自自己紹介のCMを作成し発表)、【接続期後期】(ゴールデンウィーク後~1学期末)プロジェクト「クラスのニュース番組を作ろう!」(初めてのグループ活動で、入学以降クラスで体験した行事や勉強について、ニュースを作成し発表)を実践した。「メディアであそぼ!」は、幼稚園では「ことば」「表現」の領域、小学校では「国語科」に該当する。全実践をビデオカメラで記録しテープ起こしを行い、事前事後アンケートやインタビューを実施した分析結果から、時期を重ねるごとに、メディア活動の体験を通して「メディアは作られている」というML教育の基本概念に対する気づきが表出し、自己表現活動・グループ活動を通して「言語活動の充実」が認められるに至った。接続期におけるML教育の重要性が示唆された。