著者
木部 暢子 新田 哲夫 日高 水穂 五十嵐 陽介 三井 はるみ 椎名 渉子 田附 敏尚 井上 文子 熊谷 康雄
出版者
大学共同利用機関法人人間文化研究機構国立国語研究所
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2016-04-01

本研究では以下の2点を実施した。(1) 日本各地の方言の談話音声データを整備し、諸方言を横断的に検索することが可能な「日本語諸方言コーパス(COJADS)」を作成・公開した。COJADSは、文化庁が1977年から1985年にかけて行った「各地方言収集緊急調査」の談話データをソースとし、国語研が開発した検索アプリケーション「中納言」で検索するように設計されている。(2) (1)で構築したCOJADSを使って、「日本語諸方言における主語、目的語の標示形式の地域差に関する研究」や「丁寧形式「デス」の用法の地域差に関する研究」等を行い、データに基づく方言研究の例を提示した。
著者
三井 はるみ Harumi MITSUI
出版者
国書刊行会
雑誌
日本語科学
巻号頁・発行日
vol.25, pp.143-164, 2009-04

国立国語研究所全国規模での文法事象の分布図である『方言文法全国地図』から,順接仮定の条件表現を取り上げ,方言文法体系の多様性を把握するための研究の端緒として,(1)全国における分布状況の概観と結果の整理,(2)青森県津軽方言の「バ」や佐賀方言の「ギー」といった,特定方言で観察されるそれぞれに特徴的な形式を中心とした体系記述の試み,を行った。(1)では,方言特有の形式は少なく,「バ」「タラ」「ト」「ナラ」など共通語と同じ形式が,方言によって用法の範囲を異にして分布している場合が目立つことを述べた。(2)では,共通語で効いている語用論的制約が働かない例,多くの方言で区別されている「なら」条件文の意味領域を,区別せずに同一の形式でカバーする例等を示した。最後に,条件表現および方言の文法体系の多様性の記述に向けての方向性について触れた。
著者
鑓水 兼貴 田中 ゆかり 三井 はるみ 竹田 晃子 林 直樹
出版者
大学共同利用機関法人人間文化研究機構国立国語研究所
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2019-04-01

本研究は、首都圏における方言分布の形成過程の解明を目的とする。これまでの研究で、アンケート調査システムや、方言データベースのシステムを作成してきたが、そうした研究ツールを統合して、新しい調査・分析システムを構築する。首都圏における非標準形の分布を把握するためには、多くの言語項目、多くの回答人数による調査から分析する必要がある。過去の首都圏の方言資料と、新規の調査結果を組み合わせた分析を行うために、新しいツールの開発を行う。本研究において開発する調査・分析システムを利用して、これまでの研究で提案してきた首都圏の言語動態モデルについて検証を行う。
著者
竹田 晃子 三井 はるみ
出版者
国立国語研究所
雑誌
国立国語研究所論集 (ISSN:2186134X)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.77-108, 2012-11

国立国語研究所における「全国方言文法の対比的研究」に関わる調査資料群のうち,調査I・調査IIIという未発表の調査資料について,調査の概要をまとめ,具体的な言語分析を行った。調査I・調査IIIは,統一的な方法で方言文法の全国調査を行うことによって,方言および標準語の文法研究に必要な基礎的資料を得ることを目的とし,1966-1973(昭和41-48)年度に地方研究員53名・所員4名によって行われ,全国94地点の整理票が現存する。具体的なデータとして原因・理由表現を取り上げ,データ分析を試みることによって資料の特徴を明らかにした。3節では,異なり語数の比較や形式の重複数から,『方言文法全国地図』が対象としなかった意味・用法を含む幅広い形式が報告された可能性があることを指摘し,意味・用法については主節の文のタイプ,推量形への接続の可否,終助詞的用法の観点から回答結果を概観した。4節では,調査時期の異なる他の調査資料との比較によって,ハンテ類の衰退とサカイ類の語形変化を指摘した。「対比的研究」の調査結果は興味深く,現代では得がたい資料である。今後,この調査報告の活用が期待される。
著者
三井 はるみ
出版者
昭和女子大学短期大学部
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
1993

本研究は、千葉県の上総・安房地方に広がる「房総アクセント」の実態把握と体系記述を目的とした。「房総アクセント」は、京浜アクセント(金田一春彦による)の一変種でありながら、北奥方言アクセントなどと同じく母音の種類(広母音か狭母音か)が音調に関与するアクセントで、地域差も大きい。またその歴史的解釈をめぐっては、異なる立場からの論争がある。本研究では歴史的解釈に先立つものとして、1.特に語音と音調の関係について従来の報告より細部にわたる詳細なデータを収集する。2.代表的な地点の体系記述を行い、地域差を把握する。の2点を目標とした。金田一の「房総アクセント」の4分類などを参考に、10地点(市原市、東金市、茂原市、一宮町、大多喜町、鴨川市、君津市、白浜町、木更津市、館山市)を選び、それぞれ60歳代から70歳代の生え抜きの話者を対象に調査を行った。調査にあたっては、主として東北大学文学部編『アクセント調査票』を用い、場合によっては類別語彙を補充した。また読み上げ式調査を補完するものとして、上記のうち2地点では談話の収録を行った。現在読み上げ式調査、収録談話ともに、結果の整理を行っている。今後これらをもとに体系の記述に進む予定である。なお、今回の調査内容は比較的簡略なものであった。研究実施計画に記した、より詳細な内容の調査は今回行うことができず、今後の課題として残されている。