著者
宮本 俊光
出版者
東北数学教育学会
雑誌
東北数学教育学会年報 = Journal of Tohoku Society of Mathematics Education (ISSN:0910268X)
巻号頁・発行日
no.42, pp.74-83, 2011-03-31

教科書を分析するには様々な問題が横たわっているため,客観的に分析する事は極めて困難である。そこで,我が国初の算数科国定教科書である第一期国定教科書について,その教材の内容を構成する原理について離散量に関わる全数に制限して議論を展開する。その際,数え主義として有名な藤原利喜太郎とタンクとクニルリングの数え主義について述べ,さらに第一期国定教科書の内容を構成する原理である数計算について整理する。そして,その批判形成について触れながら,現在の数教育の特徴を見る鏡として,数え主義に立ちかえり第一期国定教科書のそれについて整理する。
著者
後藤 学
出版者
東北数学教育学会
雑誌
東北数学教育学会年報 = Journal of Tohoku Society of Mathematics Education (ISSN:0910268X)
巻号頁・発行日
vol.48, pp.55-65, 2017-03-31

小学2年生で学習する加法と減法の相互関係では,式を用いて説明することをねらいとしている。文章題において,解を求めるために文脈が表す言葉や表現と逆の演算を行う必要がある問題を逆思考問題と呼ぶが,低学年児童には難しいことが知られている。また,説明の手段としてテープ図が用いられるが,文脈に沿って未知数を用いて立式をしたり,テープ図を描いたりすることがうまく結びついておらず,問題点の指摘も多い。本研究では,逆思考文章題の問題解決過程を調査し,全体集合と部分集合を学習した後の思考過程の様相を分析する。
著者
大澤 弘典
出版者
東北数学教育学会
雑誌
東北数学教育学会年報 = Journal of Tohoku Society of Mathematics Education (ISSN:0910268X)
巻号頁・発行日
no.34, pp.25-34, 2003-03-31

数学的遠近法の教材化について,先行実践(大澤,2001,2002 ; 小関,2001,2002 等)に見られる「既習内容の深化」とは異なる視座からの教材化の可能性を模索した。数学的遠近法を「文化的な遺産」の一つとして捉え,Albertiによる作図法への注視を試みた。彼の作図法を学習者は具体的にどのように理解しうるのか。そこでの学習者の振る舞いおよび中学校数学の関与の可能性を分析・考察した。その結果,次の知見を得た。学習者は彼の作図法を手続きとして容易こ理解できる反面,その手続きの意味の把握に際し幾つかの疑問や困難さを持ちうる。学習者の抱くそれらの疑問の解消に,中学校数学は少なからず貢献しうる。Alberti の作図法を題材とした授業は,中学校においても十分に可能であることがわかった。
著者
茂泉 優
出版者
東北数学教育学会
雑誌
東北数学教育学会誌
巻号頁・発行日
vol.50, pp.52-62, 2019-03-31

本稿の目的は,数学学習において小集団学習を実施し,学習者の学習観や授業観,協同や競争の概念および満足度を調査することで,効果的な小集団学習の方向性について明らかにすることである。そのために,高等学校にてTGT方式による小集団学習を実施した。実施にあたり,拡散的思考を必要とする課題を扱い,集団間の競争を用いた。分析にあたっては,先行研究に依拠した尺度を用いた。その結果,以下の3点が導かれた。第一に,協同と競争が対極にある傾向が見られた。第二に,複数の学習観や授業観が存在し,志向に応じた教授法が示された。第三に,本小集団学習は,数学学習内容を習得するのに有用であり,社会性を向上させることが分かった。The purpose on writing is to put small-group learning into effect in mathematics study and investigate learner’s view of learning, view of class and concept of cooperation and competition and degree of satisfaction and is to reveal directionality of effective small-group learning. Small group learning by Teams-­Games­-Tournament was conducted in a high school for it. When it was put into effect, I dealt with a problem which requires divergent thinking and used competition between the group. The linear measure which depended on the previous research was used in case of an analysis. As a result, the following three points were indicated. The First point is that the tendency cooperation and competition is in the opposite side can be seen. The Second point is that more than one view of learning and view of class existed, and a teaching method according to the intention was indicated. The Third point is that this small-group learning is useful acquiring mathematics study contents, and the sociality is improved.
著者
板垣 芳雄
出版者
東北数学教育学会
雑誌
東北数学教育学会年報 (ISSN:0910268X)
巻号頁・発行日
no.40, pp.35-62, 2009

大正から昭和の敗戦前に、数学のベストセラー受験参考書を書いたカリスマ塾教師、藤森良蔵は「考へ方研究社」の事業として高等数学の普及(大学教育の開放)にも力を入れた。高校受験生や理工系の学生がエリートであった旧制度の時代から遠く、庶民が市民となって大量に進学するようになった現在、学校で教える数学にも内容と質の上での脱皮が迫られている。教師の意識改革を考えるとき、良識の指導への取り組みの姿勢から時代を越えて教えられることが多々ある。授業の質の差異を一つのエピソードで語り、2次方程式が立つ問題について授業展開の案を示して「下から」の印象づけ指導を提唱する。