著者
宗方 比佐子
出版者
桜花学園大学
雑誌
桜花学園大学研究紀要 (ISSN:13447459)
巻号頁・発行日
vol.2, pp.77-88, 2000-03-31

職業興味の構造に関する研究は,長い間Holland(1966)のRIASECモデルを中核としで展開されてきたが,最近になって2次元モデル,8角形モデル,球形モデルなど,いくつかの新しい理論展開がみられた。本稿では,職業興味構造に関する理論モデルの変遷を概観し,筆者らがこれまでに実施した職業興味調査の結果を,RIASECモデル,2次元モデル,8角形モデルのそれぞれの理論枠組のもとで再分析した。各モデルの適用可能性を検討し,日本の研究に適用する際の問題点を明らかにした。加えて,日本における職業興味研究の今後の課題を提示した。
著者
山中 正樹
出版者
桜花学園大学
雑誌
桜花学園大学研究紀要 (ISSN:13447459)
巻号頁・発行日
vol.3, pp.A23-A37, 2001-03-31

「千羽鶴」は、戦後川端文学の中でも特に高い評価を得た作品である。発表直後から、川端のいわゆる「古典回帰宣言」の文脈の中で、日本の古典や伝統美を描いた作品であると論じられて来た。確かに「千羽鶴」には「美しい」ものが描かれている。しかし同時に「醜い」ものも「美」と同様、あるいはそれ以上に描き出されている。いままでの<読み>では、「醜」は「美」をきわだたせるための相対的要素であるという視点からの論及が多かった。しかしそれは「醜い」ものを「美しいもの」に転化する、あるいはそう見せてしまう川端の戦略によるものである。「千羽鶴」の基底部には「ちか子のあざ」という「醜い」ものが厳然としてあり、それが菊治の意識を<呪縛>すると同時に、読者の<読み>すらも支配しているのである。本稿は、そうした「醜」というコードから「千羽鶴」を読み直す試みである。
著者
島田 昌彦 成田 弘成
出版者
桜花学園大学
雑誌
桜花学園大学研究紀要 (ISSN:13447459)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.A1-A17, 2002-03-31

サミュエル・P・ハンチントン著『文明の衝突』で予想するとおり、二一世紀は、世界の主要な八つの文明が抗争する時代になりつつある。世界が悲劇的な状況に陥ることを防ぐためにも、その中の一つとノミネートされている日本文明のこれからの義務責務とは何か明らかにしなくてはならない。「日本文明」の追究を最大の課題とする「日本学研究」はその組織的な研究体制を確立するため、国家の営為として「日本学研究大学院大学」を創設、併せて、「日本学研究国際学術シンポジウム」を開催、世界の英智を結集、地球の危機の克服に各国文明を超えて献身しなくてはならない。
著者
森本 司
出版者
桜花学園大学
雑誌
桜花学園大学研究紀要 (ISSN:13447459)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.93-103, 2002-03-31

この小論では,個別の言語活動のうち,対話をもとに考えられた理解モデルを,理解の「対話モデル」と呼ぶ。また,テキストにおける理解から考えられた理解モデルを,理解の「テキストモデル」ということにする。そして,両者がP.リクールにおいてどのような関わりを持つかを考察する。リクールの理解モデルが解決しようとしたことは少なくとも二つある。一つは,理解の「テキストモデル」を「対話モデル」から切り離したことであり,もう一つは解釈の対象(テキストの世界)を作者から解放したことである。一つ目の分離によって,作者からのテキストの解放が可能になった。この小論の目的は,リクールが理解の「対話モデル」と「テキストモデル」を理論的に切り離し,分断しすぎた点を問題にしたいということである。基本路線ではこのリクールの主張に従いつつ,細部に疑問が残ることを示した。