著者
末武 康弘 得丸 さと子(智子)
出版者
法政大学現代福祉学部
雑誌
現代福祉研究 (ISSN:13463349)
巻号頁・発行日
no.12, pp.141-163, 2012-03

本稿は、パーソンセンタード/フォーカシング指向セラピー(PC/FOT)の中で生起する現象について「セラピスト TAE 」―サイコセラピー実践を検討するために TAE をアレンジした方法―を用いた質的分析のパイロット研究の成果を報告するものである。共同研究者の1人はTAEを用いた質的研究法(得丸,2010a)を開発する中で、TAEがセラピストに重要な意味を与えることを見出してきた。そしてセラピストのためのTAEセッションが考案され、「セラピストTAE 」と名づけられた。「セラピストTAE」では、ガイドの助けを借りながらセラピストが自身の臨床体験やクライアントとの相互作用を分析し、セラピーについての理論化を試みる。このパイロット研究においては、PC/FOTのセラピストであるもう1人の共同研究者の、6名のクライアントとのセラピー体験と面接記録が分析された。
著者
図司 直也 zushi Naoya
出版者
法政大学現代福祉学部
雑誌
現代福祉研究 (ISSN:13463349)
巻号頁・発行日
no.13, pp.127-145, 2013-03

現代日本の農山村地域は、過疎化、高齢化が全国に先んじて進み、そこでは集落機能の維持に必要な人手が不足し、次世代の確保が危ぶまれている。その反面、2000年代に入り、農山村地域に向かう若者の存在が目立ち始め、近年では国主導のもとで、「地域おこし協力隊」のように地域サポート人材導入事業が施策化され、急激な広がりを見せる。しかし、「人」を施策対象に据えているために、受入地域と若者のマッチングや、若者と地域の成長を意識したプログラムづくりなど、民間の先発的な取り組みの工夫に学ぶ必要があり、若者移住を目指す以前に、まず若者が地域に馴染む最初の段階を大事にする姿勢が求められる。さらに、地域サポート人材を志す若者の目的や動機、任期中の展開、さらに任期後の動向について、相互を結び付けて検討する動態分析が未着手であり、本研究では、応募動機と任期後の進路展開に関する実態調査から今後求められる分析視角を検討した。
著者
岩田 美香
出版者
法政大学現代福祉学部
雑誌
現代福祉研究 (ISSN:13463349)
巻号頁・発行日
no.11, pp.223-240, 2011-03

本報告は、児童自立支援施設入所児童に関する入所前の生活実態と意識について、同様の調査を行った少年院生との比較から分析を行った。その結果、児童自立支援施設入所児童は、親と一緒に暮らしていても、児童から見ると不十分なケアしか受けておらず、そのために具体的な生活場面においての不満が多くあがっていた。また、その保護者が十分に機能できない中で、児童にとって学校の先生や施設の先生の存在は大きく、家族以上に頼りにされていた。今後は、施設退所に向けた、さらには退所後の家族援助が重要になると同時に、予防的な視点から、施設を利用する前の学校や、それ以前であれば保育所や幼稚園といった段階における、教育や保育に加えたソーシャルワークとしての家族援助の展開が要請される。