- 著者
-
丹羽 仁史
- 出版者
- 特殊法人理化学研究所
- 雑誌
- 特定領域研究
- 巻号頁・発行日
- 2002
テトラサイクリンで転写因子Oct-3/4の発現を調節することが可能なES細胞ZHBTc4において、テトラサイクリン投与後0,24,48、72、96時間目の細胞からそれぞれRNAを精製し、これを始原生殖細胞由来cDNAマイクロアレイで解析し、全ての結果の収集を完了した(理化学研究所・阿部博士との共同研究)。一方で、これらのサンプルをNIHの洪博士との共同研究により、23K cDNAマイクロアレイを用いても解析を進めている。今後、全てのデータの収集が完了次第、その解析に着手する予定である。テトラサイクリンで転写因子Gata6の発現を調節することが可能なES細胞G6SKOについては、その発現によって誘導される細胞が壁側内胚葉であることを最終的に確認した(Fujikura J et al.,Genes Dev.,2002)ので、現在マイクロアレイ解析用の時系列RNAサンプルを収集している。また、最近ES細胞における遺伝子マーキングによる解析から、従来均一と考えられていたOct-3/4を発現する未分化細胞集団が、さらに遺伝子発現パターンの異なるサブグループに分離可能であることを見出した。現在、これらのサブグループを系統的に純化する方法の開発を進めており、その進捗を見た後に、マイクロアレイを用いた系統的遺伝子発現解析に進む予定である。マイクロアレイ法による遺伝子発現解析の有効性は、洪博士との共同研究によるES細胞とTS(trophoblast stem)細胞の遺伝子発現比較検討により確認することが出来ているので(Tanaka, TT et al., Genome Res.,2002)、今後同様の手法を用いた上記サンプルの解析結果から、細胞分化のメカニズムの一端が明らかにされるであろう。