著者
栗本 康司
出版者
秋田県立大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
2000

本研究の目的は、廃棄CCA処理木材を液化し、得られた液化生成物からCCA薬剤を完全に除去回収すると共に残った液化物を接着剤や発泡体として利用することを検討した。1.CCA処理木材の調製CCA含有濃度の異なった防腐処理木材を,ベイスギを用いて調製した。液化試料には処理材をウィレーミルで粉砕し0.5-1mmの粒度にしたものを使用した。2.最適液化条件の検討液化溶媒として10%のグリセリンを含むPEG#400を用い、液化条件の検討を行った。本研究での最適な液化条件は、短時間かつ低温度で、木質部のすべてが液化することである。液化率には、反応温度、反応時間、触媒濃度、液比が影響を与えた。液化率を90%以上にするためには150℃以上の反応温度と45分の反応時間を必要とした。触媒濃度は3%が最適であった。液化率が100%に達しなかったのは、一部のCCA薬剤が未溶解であるあるためである。液化物をアルカリ(NaOH)で中和し,液化に用いた触媒を中和すると同時に,CCA薬剤を不溶性の塩として液化物から除去することができた。3.ポリウレタン樹脂の調製とその特性CCA薬剤を取り除いた液化物の水酸基価と水分を基にイソシアネートの配合量を決定し,ポリウレタンフィルムおよびフォームを調製した。フィルムおよびフォームの機械的特性は,液化物を含まない場合(コントロール)と比較して,イソシアネート量が少ないにも関わらず同等の強度を有した。耐熱性,加水分解性などについても,コントロールと比較して劣っている項目は見られなかった。
著者
川島 洋人
出版者
秋田県立大学
雑誌
新学術領域研究(研究領域提案型)
巻号頁・発行日
2011-04-01

本研究は,粒子状物質に含まれるアンモニウムイオン,硝酸イオン中の窒素安定同位体比と元素状炭素中の炭素安定同位体比を高精度に測定し,浮遊粒子状物質の起源推定を行うことを目的としている。特に2次生成粒子であるアンモニウムイオンや硝酸イオンにおいては,それらの前駆ガスから粒子への同位体分別係数を実験室もしくは野外でのサンプリングより算出し,発生源解析に応用することを目指している。平成24年度は,ガスから粒子化のメカニズム解明のために,グローブボックス内にてアンモニアガスから粒子化(アンモニウムイオン)の窒素安定同位体比の分別係数を測定した。その結果,冬季と夏季の温度の違いによる分別係数の変化量は5‰以内と非常に小さく,アンモニアの発生源による違いが大きいことが推察された(これらの結果は25年度に国際学術雑誌に報告予定)。また,実験室だけでなく,いくつかの発生源の前駆物質であるガス状成分も野外にて同時測定を行った。これらの結果は,実験室における結果をほぼ再現していることがわかった。さらに,窒素酸化物と硝酸イオンの同位体分別係数も推定することが出来た。また,昨年行ってきた石炭中の炭素安定同位体比の結果は,浮遊粒子状物質の起源推定のために測定を行ったが,炭素安定同位体比の結果から,数億年前の石炭生成時期を予測することが可能であるということが推察された。
著者
小林 一三 蒔田 明史 星崎 和彦
出版者
秋田県立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

研究代表者等はこれまで一貫して寒冷地域におけるマツ材線虫病の発症メカニズムの解明に取り組んできており、以下の知見を得ることができた。1.寒冷地におけるマツ材線虫病感染による枯死木発生は,感染直後の夏場のみならず,晩秋から翌年(年越し枯れ)にかけて通年発生すること。2.材線虫病の媒介者であるマツノマダラカミキリの羽化時期は秋田市においては6月中旬から7月末,産卵時期はそれより約一ヶ月遅れの7月中旬から8月一杯であること。3.カミキリの産卵は,マツの幹下部よりも幹上部や枝に多いこと。4.温暖地では通常1年1化であるマツノマダラカミキリは寒冷地では2年1化になるものがあり,特に夏が冷涼であった年にはその比率が高まること。5.1年1化の場合カミキリ1頭が数万頭のザイセンチュウを媒介するが,2年がかりで羽化したカミキリの体内に存するザイセンチュウ数は著しく少なくなること。6.ツチクラゲ病や雪害枯死などの在来要因によって枯れた木も,マダラカミキリの産卵対象木となり得ること。7.年越し枯れ木の材線虫保有数は,当年枯れ木に比べると著しく少ないが,6月以降に枯れた場合には,マダラカミキリの産卵対象木となるため,防除対象にしなければならないこと。これらの知見をもとに,マツ材線虫病の防除のためには,媒介者であるマツノマダラカミキリの生態に即した防除法をとることが重要であり,従来の全量駆除に変わって,マダラカミキリの産卵対象となった木に的を絞って防除するマツ枯れ防除の「秋田方式」を提唱した。この方式は秋田県行政にも採用され,「松くい虫専門調査員」の制度を生み,マツ枯れ防除法の改善に結びついている。また,枯死木の処理に当たり,それらを資源として有効活用する炭焼きに取り組んできたが,その活動が人々の森への関心を呼び起こして,官民学の協働によるマツ林の保護につながることも示された。
著者
高橋 秀晴
出版者
秋田県立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

2007年10月31日に秋田県に寄託された小牧近江資料約20000点を用いて、小牧の執筆意識や推敲過程について考察した。また、プロレタリア文学系作家群及び鎌倉文士群からの書簡の分析を通じて小牧との交流状況を明らかにし、妻福子、長男左馬介との往復書簡によって、私人としての小牧を立体化した。他方、ハノイやパリを現地調査し、文献上得られていた知見を確認したり、新たに特定することに成功した。以上により小牧の全体像を明らかにし、その結果を、論文、口頭発表、書籍等という形で公表した。