- 著者
-
川島 洋人
- 出版者
- 秋田県立大学
- 雑誌
- 新学術領域研究(研究領域提案型)
- 巻号頁・発行日
- 2011-04-01
本研究は,粒子状物質に含まれるアンモニウムイオン,硝酸イオン中の窒素安定同位体比と元素状炭素中の炭素安定同位体比を高精度に測定し,浮遊粒子状物質の起源推定を行うことを目的としている。特に2次生成粒子であるアンモニウムイオンや硝酸イオンにおいては,それらの前駆ガスから粒子への同位体分別係数を実験室もしくは野外でのサンプリングより算出し,発生源解析に応用することを目指している。平成24年度は,ガスから粒子化のメカニズム解明のために,グローブボックス内にてアンモニアガスから粒子化(アンモニウムイオン)の窒素安定同位体比の分別係数を測定した。その結果,冬季と夏季の温度の違いによる分別係数の変化量は5‰以内と非常に小さく,アンモニアの発生源による違いが大きいことが推察された(これらの結果は25年度に国際学術雑誌に報告予定)。また,実験室だけでなく,いくつかの発生源の前駆物質であるガス状成分も野外にて同時測定を行った。これらの結果は,実験室における結果をほぼ再現していることがわかった。さらに,窒素酸化物と硝酸イオンの同位体分別係数も推定することが出来た。また,昨年行ってきた石炭中の炭素安定同位体比の結果は,浮遊粒子状物質の起源推定のために測定を行ったが,炭素安定同位体比の結果から,数億年前の石炭生成時期を予測することが可能であるということが推察された。