著者
小野 正樹
出版者
筑波大学留学生センター
雑誌
筑波大学留学生センター日本語教育論集 (ISSN:13481363)
巻号頁・発行日
no.18, pp.1-15, 2003-02-22

モダリティ研究の枠組みで、「ト思う」と「のだ」についてコミュニケーション機能の違いを追求した。両者とも「寒いと思います」「寒いんです」のように、話し手の主観を伝えることができるが、用法の比較を行うと、「ト思う」述語文の方が聞き手を配慮し、かつ、わきまえ性が高い。そして、両者の原理を明らかにするために、両者が連続した場合を観察すると、「ト思う」が「のだ」に先行する「と思うんです」の場合には主張の文機能となるが、「んだと思います」では理由説明の文機能となり、理由がスコープされるが、その理由が明示的な場合には不自然になることを述べた。
著者
高橋 純子
出版者
筑波大学留学生センター
雑誌
筑波大学留学生センタ-日本語教育論集 (ISSN:13481363)
巻号頁・発行日
no.17, pp.115-125, 2002

これは、筑波大学留学生センター補講「会話4」(日本語中級後半レベル)クラスにおいて実施したビデオドラマ制作活動についての報告である。発話には2つの種類がある。それは、1)公の場でのスピーチなど、あらかじめ準備された発話、2)討論や友人との日常会話など状況によって刻々と変化していく状況依存型の発話である。日本人学生との共同作業によるドラマ制作活動は、身振りや態度など非言語コミュニケーションとともに、この2つの発話能力を高めることができるであろうと考えた。さらに、このレベルの学習者の発音やイントネーションなど音声面での矯正を行うのはなかなか難しいものであるが、よい作品を創るという目的のためには、学習者は発音やイントネーションに気を配って、何度も台詞を練習するはずだ。実際、撮影中ある場面を扱い、効果的に学習者の間違いを指摘し、説明し、指導することができた。本稿では、ドラマ制作過程の観察と学習者と活動に協力してくれた日本人学生の意見・感想から何が学べるのかをさぐっていく。そして、ビデオドラマ制作活動の意図とその実際の成果、留意点、改善点について述べる。ビデオの使い方として、1)テレビドラマなどからのモデル会話場面を見せる。2)日本語の進歩の様子を知るため、または、習慣化されてしまっている間違いに気づくため、学習者の演じているところを撮影し見せる、という2つを併用することが効果的であろう。相手や場によって話し方を変える待遇表現を学ぶ場を提供するという点でドラマ制作は有効だと言える。
著者
大場 美和子 中井 陽子 土井 眞美
出版者
筑波大学留学生センター
雑誌
筑波大学留学生センター日本語教育論集 (ISSN:13481363)
巻号頁・発行日
no.18, pp.33-58, 2003

本研究は、会話への積極的な参加を示す方法の1つとして「残念ですね」を例にとり、日本人との接触場面において許容される、「あいづち+a[?]」としての使用条件の分析を行い、会話指導へつなげる方法を考察するものである。なお、本稿では、使用条件の分析結果について報告する。分析では、まず、①誰が「残念」か、②「残念」の感情を引き起こした原因の領域、③誰の行為/状況か、④人間関係という項目から、どのような状況で「残念ですね」が使用できるのかを分析した。この結果、①②の組み合わせから「残念ですね」が使用可能となる3つの型と③④との関係から、1)③誰の行為/状況か、2)④人間関係、3)「ね」の使用、に制限がみられた。次に、「残念ですね」が何に対して使用できるのかについても分析し、SL-SL、S-Lの場合は、ある「行為の不実現」、「行為の絡んでいない何かを失う/失った状況」の2つに対して、自分の感情として「残念ですね」を発話するのに対し、L-LはLのある「行為の不実現」に対してのみ、Lへの同情の気持ちとして「残念ですね」を発話できるということが明らかになった。
著者
小川 多恵子 小宮 修太郎 高橋 純子 長能 宏子 平形 裕紀子 三井 豊子
出版者
筑波大学留学生センター
雑誌
筑波大学留学生センター日本語教育論集 (ISSN:13481363)
巻号頁・発行日
no.13, pp.185-210, 1998-02-20

留学生は何を期待し,どんな予想をして留学してきているのだろうか。彼等の留学目的,日本語学習目的とその取り組み方を知ることができれば,適切な対応ができ,よりよい学習環境が提供できるであろう。留学生の実像を知るため6 ヶ月の日本語集中コース開始時と終了時の二回アンケート調査を行うことにした。本稿では,そのうちコース開始時における学習者の留学目的,日本語学習の目的と動機及び日本語学習観などについての調査を行い,その結果を考察した。In order to seek ways to provide more adequate treatment and better learning enviroment for foreign students, this paper explores what students had expected and foreseen before coming to Japan, what purpose and prospests they have, how strongly they are motivated in studying Japanese, and what attitude they have towards language learning.