著者
齋藤 実
出版者
自由が丘産能短期大学
雑誌
産能短期大学紀要 (ISSN:09167218)
巻号頁・発行日
vol.38, pp.61-71, 2005-06-30
被引用文献数
1

2004年,我が国ではじめての包括的な内部告発者保護法である,「公益通報者保護法」が制定された。本法は,イギリスの公益開示法をモデルに参考にして制定されたものである。そこで,本論文ではイギリスの公益開示法を概観しながら,我が国の公益通報者保護のあり方を検討する。公益通報者保護法は,わが国で初めて一般的包括的に内部告発者を保護した法律であるという点は,高く評価できるものと思われる。しかし,通報対象事実の範囲が狭い点,外部通報の要件が厳格である点については,まだ改善の余地があると思われる。コンプライアンスを促進しようとしない会社に対して,メスを入れることこそが公益通報制度にとっては重要である。とするならば,本法による濫用的な内部告発を防ぎつつも,本法を改善し広く公益通報を認めて行くことが必要であろう。
著者
齋藤 実
出版者
自由が丘産能短期大学
雑誌
自由が丘産能短期大学紀要 (ISSN:18812244)
巻号頁・発行日
vol.39, pp.73-85, 2006-08-31

大学病院における医療事故が後を絶たない。特に,近年,大学付属病院が特定機能病院の承認を取消されるケースが何件か報告されている。これらのケースの多くは,内部通報制度が不十分であることに,大きな理由がある。そこで,医療事故を防止していくためのひとつの方策として,公益通報者保護法を活用し,病院内の透明性をはかることをあげることができる。その中でも特に重要なのは,院内の通報に頼るのではなく,外部通報制度により医療事故を防ぐことであろう。とはいえ,外部通報を行う場合,公益通報者保護法では,「通報対象事実」の内容,及び外部通報の要件で問題が生じる可能性があるため,外部通報制度に一定の限界があることは否めない。そのため,これらの要件を限定的に考えながら,誠実性の要件で利益調整を図り,外部通報制度の活用を図ることが必要であると考える。
著者
豊田 雄彦 鈴木 美香 石嶺 ちづる
出版者
自由が丘産能短期大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

本研究は就職活動体験を綴った「就職活動体験記」を通じた交流を通して、学生の働くことへのリアリティの醸成を目指し、そのポートフォリオの解析を通してキャリア教育プログラムの開発、改善を行おうとするものである。「就職活動体験記」およびその読者による「受け止め」の記述内容をテキストマイニングの手法を用いて分析することにより、「就職活動体験記」の記述およびその記述内容を通じた交流の効果を測定した。その結果、経済、雇用情勢の厳しい時期の就職活動体験は、自らの職業観・勤労観におよぼす変化が顕著に見られること。体験記の読者は就職活動の早期のイベントに興味を示す傾向があること。また早期に活動すべきと考えた読者は実際に早期に就職活動を開始する傾向があること。適切な授業プログラムの実施により、失敗体験を下級生に伝承し、下級生の就職活動に資することができることを確認できた。
著者
松本 潔
出版者
自由が丘産能短期大学
雑誌
自由が丘産能短期大学紀要 (ISSN:18812244)
巻号頁・発行日
no.41, pp.15-38, 2008-06

コミュニティ・ビジネスは,わが国では1990年代から注目を集め,現在では,社会起業家また社会的企業という概念とともに,その発展がみられる。しかしながら,コミュニティ・ビジネスに関する概念については,統一的なものは未だ存在せず,今後の研究にその明確な概念構築が望まれる。そして,本研究では,これらの概念の関係と位置づけについての考察を加え,これら概念の整理を試みる。そこで,まずこれまでのコミュニティ・ビジネスの概念形成がどのように行われてきたかを概観し,その関連において社会起業家,および社会的企業の概念について検討する。そして,このコミュニティ・ビジネスの概念的な特徴を踏まえて,「ソーシャル・キャピタル(社会関係資本)」および「場」のマネジメントの概念を考察し,それらの理論を援用することにより,組織理論におけるコミュニティ・ビジネスの新たな概念構築を試みるものである。最後に,コミュニティ・ビジネス概念の課題を検討し今後の可能性を展望する。