著者
狭間 香代子
出版者
関西大学人間健康学部
雑誌
人間健康学研究 : Journal for the study of health and well-being (ISSN:21854939)
巻号頁・発行日
no.14, pp.15-23, 2021-03-31

国際ソーシャルワーカー連盟及び国際ソーシャルワーク学校連盟は、2014年に新たに「ソーシャルワーク専門職のグローバル定義」を採択した。それまでの単なる定義ではなく、グローバルとしたことの背景には、西洋中心の価値観、思想を普遍的なものとして他の文化圏に拡大してきたことの反省がある。本稿では、日本文化の特性であるレンマ的論理を根拠にして、わが国のソーシャルワーク実践が欧米のソーシャルワーク理論と日本的文化をいかに融合しうるかという点について、論じた。狭間香代子教授退職記念号
著者
松下 啓子 黒田 研二
出版者
関西大学人間健康学部
雑誌
人間健康学研究 = Journal for the study of health and well-being (ISSN:21854939)
巻号頁・発行日
no.13, pp.55-68, 2020

本研究は先行研究から市民後見人の概念を構成する要素と要件を整理し、それをもとに市民後見人の新たな定義づけを試みることを目的としている。CiNii で「市民後見」、「社会貢献型後見人」、「区民後見人」をキーワードとして検索したところ158件がヒットした。そのうち関連の薄いものを除くと11件であった。さらに専門誌『実践成年後見』から手作業で3件を選択した。合計14件をレビュー対象とし、市民後見人を規定する記述を取り出して検討した。その結果、市民後見人の概念を構成する要素を「候補者個人の属性」、「地域性」、「支援組織による養成と継続した活動支援」、「活動形態」、「市民による権利擁護活動」、「報酬の意味」の6つに分類することができた。さらにこの6つの要素を「個人の要件」、「支援体制の要件」、「活動の要件」の3つの要件に整理した。これらの要素と要件から市民後見人の新たな定義を次のように提示した。「市民後見人とは自治体や自治体の委託機関が実施する養成研修を受講し、後見人として必要なスキルを身に付けた上、継続した支援を受けながら地域における福祉活動・権利擁護活動を実践する人々である。専門職の資格の有無は問わないが、これらの活動を職業として行うことはなく、地域での社会貢献として行う」黒田研二教授退職記念号
著者
原 政代 黒田 研二
出版者
関西大学人間健康学部
雑誌
人間健康学研究 (ISSN:21854939)
巻号頁・発行日
vol.11, pp.15-23, 2018-03-31

目的:本研究は、生活保護現業員の仕事のやりがい感に関連する要因を明らかにし、やりがい感を支援する方策を検討することを目的とした。方法:政令指定都市、中核市、特例市である3つの市の10か所の福祉事務所の生活保護現業員全数212人を対象に自記式質問紙調査を行った(有効回答数178人、有効回答率85.6%)。調査内容に含まれる項目のうち、仕事のやりがい感(5件法で質問し回答に1点~5点を付与)を従属変数とした。回答者の属性、職場内の事例検討等の実施、受給者への健康支援の対応、受給者に対する支援関係の基本姿勢、他部門・他機関・他職種等との連携から独立変数を設定して分析を行った。まず、2変数間の関係をt 検定、分散分析、相関係数により調べ、仕事のやりがい感に有意に関連を示す変数を見い出し、次にそれらを独立変数としたステップワイズ(漸増法)の重回帰分析を行った。結果:2変数間の関係の分析の結果、仕事のやりがい感と回答者の所属自治体、専門職資格の有無、職場での支援困難事例の相談・検討、定期的な事例検討、健康支援得点、支援関係得点、行政内連携、および医療・介護との連携との間に、有意な関連が見出された。所属自治体を除く7変数を独立変数とする重回帰分析により、仕事のやりがい感に対し、健康支援得点、支援困難事例の相談・検討、行政内連携が有意な関連を示した。結論:生活保護現業員の仕事のやりがい感を支援するには、受給者との関係で健康支援の観点を重視すること、支援困難事例の検討等のスーパーバイズを重視した職場環境づくり、さらに関係部門・機関との連携を図ることが重要である。支援者自らが仕事のやりがい感を感じることは、受給者のQOLの向上を図る上においても重要であろう。[Objective] This study aims to clarify factors affecting the feeling that their work is worthwhile among caseworkers engaged in livelihood protection programs and to identify measures to promote this feeling. [Method] A questionnaire survey was conducted at 10 welfare offices in 3 municipalities. The survey participants were 212 caseworkers, of whom 208 returned questionnaires. Statistical analyses were performed for 178 questionnaires, as the valid response rate was 85.6%. The caseworkers' feeling that their work was worthwhile was evaluated using a five-point scale to obtain the worthwhile work score (WWS). In the statistical analyses, WWS was used as the dependent variable, and the relationship between WWS and each independent variable was analyzed using t-test, analysis of variance, and correlation coefficients to identify statistically significant variables. A multiple regression analysis was then conducted using significant independent variables. [Results] The following variables exhibited a statistically significant relationship to WWS: municipalities, professional qualifications, consultation regarding difficult cases, regular case study meetings, health support score, helping relation score, collaboration within the local government, and collaboration with medical and long-term care. The multiple regression analysis using seven variables as independent variables excluding municipalities revealed that health support score, consultation regarding difficult cases, and collaboration within the local government were significantly related to WWS. [Conclusion] To promote the feeling that their work is worthwhile among caseworkers, it is important for them to develop an attitude of respect for the health and well-being of their recipients. In addition, job environments that ensure supervision and consultation, and increased collaboration with the relevant government department and facilities are important. Promoting the feeling that their work is worthwhile among caseworkers will also contribute toward the improvement of recipients' QOL.
著者
小室 弘毅
出版者
関西大学人間健康学部
雑誌
人間健康学研究 : Journal for the study of health and well-being (ISSN:21854939)
巻号頁・発行日
vol.15, pp.19-34, 2022-03-31

荒川修作(1936-2010)は、パートナーのマドリン・ギンズとともに「天命反転 Reversible Destiny」という基本概念を掲げ、活動してきた現代芸術家である。彫刻作品、絵画を経て、1990年代から荒川は建築作品を発表していく。それが現代芸術の中でも荒川を特異な存在にしている。しかし建築は荒川が、人が死ぬという天命を反転させる「天命反転」を実現するために欠かせないものであった。本稿は、荒川が建築により実現しようとした天命反転という概念・思想を教育学の観点から考察することを目的としている。はじめに、教育学における荒川研究と荒川そのものに焦点を当てる。次に本稿と関係する荒川の天命反転思想における「天命反転」「人間となる有機体」「建築する身体」といった重要概念について検討する。そのうえで、荒川が実際に子どもとかかわっている映像作品を分析することで、教育者としての荒川の子どもとのかかわりと子どもへのメッセージについて考察する。最後に荒川の天命反転思想と建築の教育学的可能性について論じる。
著者
武石 卓也 山縣 文治
出版者
関西大学人間健康学部
雑誌
人間健康学研究 : Journal for the study of health and well-being (ISSN:21854939)
巻号頁・発行日
vol.13, pp.97-108, 2020-03-31

本研究の主たる目的は特に、社会的養護のあり方をめぐって対立的な様相を呈している家庭福祉領域と家族社会学領域における主張の相違点を整理したうえで、家庭養護の拡充にむけた論点を提示することにある。近年、日本における社会的養護は、国際動向の影響などにより、子どもの権利条約の理念に基づく社会的養護の整備に向けて抜本的な改革が図られることになった。家庭養護の拡充が国の方針として打ち出され、里親等への委託の推進や施設の小規模化といった家庭養護の拡充が着実に進展している。こうした動向のなかで、家族社会学研究者の一部から、家庭養護志向に内在する構造的視点や規範的視点などから、批判的な見解が寄せられている。その主たる論点は、1980年代以降の家族社会学における主要なパラダイムとして定着した近代家族論および子育ての社会化論における知見に基づくもので、「家族主義」「実子主義」といった近代家族規範をキー概念として、家庭養護を拡充するにあたっての懸念事項が提示されている。子どもの権利条約に基づく家庭養育の重要性に主眼を置く子ども家庭福祉領域と、家庭での子育てが抱える課題に主眼を置く家族社会学領域の議論は、対立的な側面を有している。家庭養護の拡充にむけては、「家庭養護対施設養護」といった対立的な議論に終止符を打ち、双方の領域が批判的な主張を超えた建設的な議論を展開していく必要がある。家庭養護を子どもの最善の利益を保障するためのシステムとしてだけではなく、社会的養護の核に据えるためには、家族社会学が懸念を示す家庭養護が内包する構造的課題、規範的課題に配慮しつつ、子どもの安定した生活環境やパーマネンシー保障の実現にむけた社会的養護のしくみを構築していくことが期待される。
著者
狭間 香代子
出版者
関西大学人間健康学部
雑誌
人間健康学研究 : Journal for the study of health and well-being (ISSN:21854939)
巻号頁・発行日
vol.14, pp.15-23, 2021-03-31

国際ソーシャルワーカー連盟及び国際ソーシャルワーク学校連盟は、2014年に新たに「ソーシャルワーク専門職のグローバル定義」を採択した。それまでの単なる定義ではなく、グローバルとしたことの背景には、西洋中心の価値観、思想を普遍的なものとして他の文化圏に拡大してきたことの反省がある。本稿では、日本文化の特性であるレンマ的論理を根拠にして、わが国のソーシャルワーク実践が欧米のソーシャルワーク理論と日本的文化をいかに融合しうるかという点について、論じた。
著者
三浦 敏弘 小田 慶喜
出版者
関西大学人間健康学部
雑誌
人間健康学研究 (ISSN:21854939)
巻号頁・発行日
vol.3, pp.19-29, 2011-11-30

Individuals with disabilities have always participated in society, but for various reasons they have become more visible in the 21st century than in those previous. Naturally, the handicapped person has the same right as able-bodied people to play sports and live healthily. Especially, it is necessary to do sports to create a healthier lifestyle for all people, including the disabled, ranging from infants up to senior citizens. The students in the Department of Health and the Well-being at Kansai University have to learn the special techniques and mentality required to support challenged people in this cause. We are planning and executed "adapted" sports for challenged people. Specifically, Therapeutic Recreation, Project Adventure, Nature Game, Sitting Volley-ball, Flying Disc, Goal Ball, Sports Chanbara, Wheelchair Marathon and Blind Running are all contained within our program.