著者
加勢田 博
出版者
関西大学経済学会
雑誌
関西大学経済論集 (ISSN:04497554)
巻号頁・発行日
vol.52, no.1, pp.17-31, 2002-06

19世紀のアメリカにおける交通・輸送の発展は、世紀前半においては、河川や運河の航行改良によって、また世紀後半には鉄道によって、工業成長に伴う著しい輸送需要の増大に対応することができた。本論文では、河川輸送が鉄道時代の到来とともにその役割をどのように変化させていったのかを概観する。
著者
若森 章孝
出版者
関西大学経済学会
雑誌
関西大学経済論集 (ISSN:04497554)
巻号頁・発行日
vol.50, no.1, pp.27-39, 2000-06

本稿は,第1に,「資本主義の黄金時代」(1945-74)をフォーディズムのロジックによって解明したレギュラシオン理論が,脱フォーディズムのさまざまな試みと冷戦体制の解体という1990年代の文脈の中で急速に進展した経済のグローパリゼーションとそれにともなう「勤労者社会の危機」をどのように理解しているか,グローパリゼーションの進行の中に資本蓄積の新しい源泉と新しい調整様式の萌芽を,それゆえ勤労者社会の新時代の可能性をどのように検出しているか,について考察する。本稿は第2に, 「勤労者社会の危機」をめぐるフランスの論争におげる4つの立場を検討し,グローパリゼーションの下で社会統合を確保するためには,公的討論による価値観の形成という意味での「政治的次元」と新しい市民権(市民権所得)が重要であることを指摘する。
著者
春日 淳一
出版者
関西大学経済学会
雑誌
関西大学経済論集 (ISSN:04497554)
巻号頁・発行日
vol.61, no.1, pp.29-53, 2011-06-10

本稿の目的は、N.ルーマン(Luhmann)が自らの社会理論に取り込んだ数学由来の概念「固有値」(Eigenwert)に着目し、その有効性をとくに現下の時代状況に照らして浮かび上がらせることである。はじめに数学概念と照合しつつ、ルーマンが「固有値」という語で指し示そうとしたものが何であるのか、そのイメージ把握に努める。しかし、得られるのはひとつの明確なイメージではなく、さまざまなイメージのいわば寄り集まりである。そこで固有値の集合を整序すべく、まずは機能(的下位)システム・レベルの固有値と全体社会レベルの固有値を区別する。議論を補強する意味でルーマンの固有値論とハイエクの自生的秩序論との対比をはさんだあと、このシステム・レベルの区別をふまえた固有値の入れ子構造ないしピラミッド状構成という整序図式を提示し、それにもとづいて固有値概念の有効性をいわゆる「改革」のケースについて検証する。