著者
佐藤 真人
出版者
日本宗教学会
雑誌
宗教研究 (ISSN:03873293)
巻号頁・発行日
vol.81, no.2, pp.359-383, 2007-09-30

神仏隔離の意識ははやく『日本書紀』の中にも認められており律令神祇制度の形成期から神道の独自性を支える要素であったと推測される。神仏習合が頂点に達した称徳朝に道鏡による宇佐八幡宮託宣事件が王権の危機を招いたことにより神仏隔離は一層進展した。天皇および貴族の存立の宗教的根拠である天皇の祭祀の場において仏教に関する事物を接触させることは、仏教的な国王観の受容を許すことになる。そこに神仏隔離の進展の大きな要因があった。さらに九世紀には『貞観式』において、朝廷祭祀、とりわけ天皇祭祀における隔離の制度化が達成された。この段階では平安仏教の発達によって仏教が宮中深く浸透したことや、対外危機に起因する神国思想が作用したと考えられる。平安時代中期以降は、神仏習合の進展にもかかわらず、神仏隔離はさらにその領域を広げていった。後世の展開を見ると神仏隔離は天皇祭祀の領域に限られるものではなく、貴族社会に広く浸透しさらには一般社会にも規範として定着していき今日の神道を形作る大きな要因となった。
著者
大平 哲也 服部 司 佐藤 真人
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. DE, データ工学 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.109, no.293, pp.9-14, 2009-11-12

サイバーエージェントが展開する「Ameba」は650万人の会員ユーザーを集めるブログを中心とした国内最大規模のインターネットサービスであるが、ユーザー数に比例して日々蓄積されるデータがブログ記事のテキストデータで30GB/月(2009/10月現在)を超える膨大なものになっている一方、社内でのデータ解析やその再利用が遅れていた。対策の一環として、2009年1月に研究開発を行う組織(インキュベーションラボラトリー)を新設し、社内に蓄えられた膨大なデータの解析と、解析結果を基にしたコンセプトアプリの開発ならびに現場への応用を進めている。その一例として、ブログサービス内でのトレンドワードの解析を実施している「Keyword Tracker」と、汎用的なspamフィルタリングプラットフォームとして構築を進めている「spamフィルターAPI」について、採用している技術的なアプローチの紹介とデータを解析してみて得られた結果ならびに知見の報告を行う。
著者
佐藤 真人
出版者
関西大学
雑誌
關西大學經済論集 (ISSN:04497554)
巻号頁・発行日
vol.55, no.4, pp.515-527, 2006-03-10

完全雇用の制約を受けず、投資需要が主要に状況を決定する成長過程について「賃金主導型成長」(wage-led growth)が資本主義の一形態として注目され、また教科書でも大きな扱いを受けている。賃金主導型成長の第一印象は逆説的である。そこで基本的なカレツキー型モデルに拠って賃金主導型成長とは何か、なぜそういうことが起るのかを考察する。賃金主導型成長が起る条件として投資関数の形は重要であるが、より重要なのは分析の基礎にある、いわゆる「費用の逆説」である。この逆説にとって投資関数のパラメタが時間的に変化しないという分析便宜上の仮定の役割は大きい。したがって「費用の逆説」の問題性が浮上する。「費用の逆説」の経済的メカニズム、さらにカレツキー・モデルの検討が必要である。
著者
佐藤 真人
出版者
日本倫理学会
雑誌
倫理学年報 (ISSN:24344699)
巻号頁・発行日
vol.70, pp.105-118, 2021 (Released:2021-06-14)

L’influence stoïcienne sur la philosophie de Descartes est notée chez les plusieurs commentateurs. Elle se borne pourtant dans la plupart de cas, à notre connaissance, à la morale ou à l’unité de sciences; d’où l’interprétation selon laquelle « suivant la nature » équivaut à « obéir à l’ordre des choses », ce qui est la principale sagesse. Mais, malgré un certain nombre de points communs avec la philosophie stoïcienne, le concept cartésien de la nature se limite-t-il à la sphère éthique ou à l’épistémologie ? Les stoïciens étudient, aussi bien que Descartes, la nature au sens physique, bien évidemment. Et l’un des objectifs ultimes de cette recherche est également chez les deux de contempler la grandeur de Dieu. Quoique la recherche stoïcienne de la nature se renferme dans cette contemplation ou dans la réflexion intérieure, la recherche cartésienne de la nature inclut aussi bien le côté actif de l’art humain que le côté passif de la contemplation, de sorte que la technique est une science inséparable, de même que l’éthique qui en provient, de la considération sur la nature. Étant donné les sens multiples de nature chez Descartes, « l’institution de la nature » pourrait donner aussi plusieurs résultats. Cet article a pour but de présenter, en envisageant ce que la nature peut nous instituer, que trois manières de répondre à l’institution de la nature résident dans trois connaissances pratiques, à savoir, la morale envers la nature de l’homme, la médecine envers la nature individuelle du corps et la technique physique envers la nature en général, et que la philosophie naturelle chez Descartes présente bien, au-delà de l’aspect passif de la recherche stoïcienne, la méthode active et pratique, au moyen de notre libre arbitre en tant que cause efficiente visà- vis de la nature, non seulement pour étudier la nature, mais aussi pour la compléter et la changer.
著者
佐藤 浩子 佐藤 真人 平林 香 大山 良雄 紫野 正人 田村 遵一
出版者
一般社団法人 日本東洋医学会
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.70, no.2, pp.113-118, 2019 (Released:2019-12-20)
参考文献数
22

中咽頭癌術後,化学放射線療法後の嚥下困難に対し漢方治療が効果的であった症例を経験した。症例は61才女性。 中咽頭癌に対し左扁桃摘出,両側頚部郭清術,続いて化学放射線療法を施行された。治療後に自覚した嚥下困難と口腔乾燥に対し,漢方治療を試みた。半夏厚朴湯エキスを食直前に内服後,嚥下が容易となり摂食時間が短縮した。 麦門冬湯エキスを合方後,口腔乾燥が軽減した。体重が増加し,職場復帰の一助となり得た。近年,癌補助療法や緩和医療として漢方治療の併用が行われるようになった。中咽頭癌そのものによる,あるいは癌治療に伴う嚥下障害・口腔乾燥に対し,漢方治療は症状の軽減に役立ち,患者のQuality of Life を向上させる一助になりうると考えられた。
著者
佐藤 真人
出版者
關西大学經済學會
雑誌
關西大學經済論集 (ISSN:04497554)
巻号頁・発行日
vol.65, no.3, pp.251-281, 2015-12-10

近年長引く不況の下、景気回復が課題、又そのための政策が争点となっているが、企業の内部留保の扱いは有効需要の面における一つの焦点である。また企業経営のあり方の面からは、資金が有効に活用されていないのではないか、あるいは株主、被雇用者への報酬は十分かとの問題提起がある。本稿は、このような議論には直接は関らず、ただ戦後日本の内部留保の推移を資本蓄積との関係で観察する。内部留保は資本蓄積と順行しているか、逆行しているか?活発な資本蓄積は、必要な資金を考えると内部留保の余裕をなくす(逆は逆)、即ち両者は逆行との素朴な推論が成り立つ。他方、活発な資本蓄積は結果的に利潤、即ち内部留保の豊かな原資をもたらし、逆に豊かな内部留保は資本蓄積を促す、即ち順行も考えられる。本稿は、これらの仮説を念頭に置きながら統計との整合性を確かめる、あるいは統計間の整合的理解を試みる。観察の結果、企業の資本金規模による違いの大きさ(大、中規模クラス対小規模クラス)、及び資本蓄積との関係については観察する期間の長さによる違いの大きさ(長期における逆行、短期における順行)が明らかになる。
著者
佐藤 真人
出版者
關西大学經済學會
雑誌
關西大學經済論集 (ISSN:04497554)
巻号頁・発行日
vol.58, no.3, pp.101-142, 2008-12-05
著者
佐藤 真人
出版者
日本宗教学会
雑誌
宗教研究 (ISSN:03873293)
巻号頁・発行日
vol.81, no.2, pp.359-383, 2007-09-30 (Released:2017-07-14)

神仏隔離の意識ははやく『日本書紀』の中にも認められており律令神祇制度の形成期から神道の独自性を支える要素であったと推測される。神仏習合が頂点に達した称徳朝に道鏡による宇佐八幡宮託宣事件が王権の危機を招いたことにより神仏隔離は一層進展した。天皇および貴族の存立の宗教的根拠である天皇の祭祀の場において仏教に関する事物を接触させることは、仏教的な国王観の受容を許すことになる。そこに神仏隔離の進展の大きな要因があった。さらに九世紀には『貞観式』において、朝廷祭祀、とりわけ天皇祭祀における隔離の制度化が達成された。この段階では平安仏教の発達によって仏教が宮中深く浸透したことや、対外危機に起因する神国思想が作用したと考えられる。平安時代中期以降は、神仏習合の進展にもかかわらず、神仏隔離はさらにその領域を広げていった。後世の展開を見ると神仏隔離は天皇祭祀の領域に限られるものではなく、貴族社会に広く浸透しさらには一般社会にも規範として定着していき今日の神道を形作る大きな要因となった。
著者
佐藤 真人
出版者
關西大学經済學會
雑誌
關西大學經済論集 (ISSN:04497554)
巻号頁・発行日
vol.60, no.4, pp.105-128, 2011-03-10

本稿は、資本主義的蓄積の敵対的性格の一側面の分析として、戦後日本の資本主義的発展に伴う資本利益率格差の推移に実証面から第一次的に接近する。資本利益率は、経済学において伝統的な利潤率とは区別されるが、企業経営分析では一般的であり、当事者の意識により近い点で独自の意義を持つ。また資本利益率の中では、総資本営業利益率、税引き前当期純利益率、及び自己資本営業利益率に注目する。さらに自己資本営業利益率との関係で登場する自己資本比率(=資本/資産=1-負債/資産)、及びその格差にも触れる。 本稿の設問を直裁に表すと、戦後日本の資本利益率、及びその格差は、どのように推移しているか。またそれらは資本主義的発展と、どの様な相関があるかということである。この観点からの観察と分析の結果、資本利益率(及び格差)と経済全体の資本主義的発展を表す諸変数との間に多少の条件付で強い負の相関関係が確かめられる。その単純化した経済的意味は、経済全体の資本主義的発展が急速な時期は資本金規模別資本利益率 格差が縮小する(逆は逆)ということである。