著者
春日 淳一
出版者
關西大学經済學會
雑誌
関西大学経済論集 (ISSN:04497554)
巻号頁・発行日
vol.55, no.3, pp.445-455, 2005-12

自分がどう出るかは相手の出方次第であり、相手から見ても同様であるとき、ダブル・コンティンジェントな状況にあるといわれる。コンティンジェンシー(不確定性)は事態をむずかしくする厄介者のようであり、除去すべきものと考えられがちである。パーソンズもその方向でダブル・コンティンジェンシーの問題をとらえた結果、満足な解決に至らず終わった。一方ルーマンは、ダブル・コンティンジェンシーがあるからこそ相互行為や社会システムが生まれるのだと見る。この魅力的な発想転換を、彼のいう「コンティンジェンシー概念の拡張」を手がかりにして読み解き、筆者なりにくだいて説明するのが本稿の主旨である。コンティンジェントなものは、必然的でもなければ、不可能でもないものである。その「不可能でない」に賭ける人間がいるかぎり、社会システムは生成するのである。
著者
春日 淳一
出版者
関西大学
雑誌
關西大學經済論集 (ISSN:04497554)
巻号頁・発行日
vol.56, no.1, pp.1-12, 2006-06-15

ルーマン理論はその独特の「難解さ」ゆえに敬遠されがちであるが、少し時間をかけて取り組めば、限りないポテンシャルを秘めた理論であることが分かる。本稿では、比較的読みやすいルーマンの初期の著作『手続を通しての正統化』を主要素材としてこの点を示唆するとともに、彼の理論の魅力について少々述べてみた。独立峰ルーマン岳に登るには、複雑化した概念装置が障壁となって立ちはだかる後期著作側からではなく、初期著作側それも良い邦訳のある初期著作側からはいるのが推奨ルートといえよう。
著者
春日 淳一
出版者
關西大学經済學會
雑誌
關西大學經済論集 (ISSN:04497554)
巻号頁・発行日
vol.50, no.3, pp.287-298, 2000-12-15

市場経済においては,貨幣を支払えば原則としていつでも誰でも望む商品を手にすることができる(コミュニケーション・メディアとしての貨幣の一般化)。しかし,いったん購入した商品を返品し支払った貨幣を取り戻すことは通常できない。貨幣支払いのこの不可逆性はそれ自体なんら目新しい事実ではないが,本稿では(1)貨幣支払いとその不可逆性を社会システム論の文脈でとらえたうえで, (2)物理学的なイメージをも借りて,支払いの不可逆性が経済システムにおける時間の一方向性と結びついていることを示し,最後に(3)不可逆性の文明論的帰結を述べる。出発点となるのは,ルーマンが経済システムの基本的出来事(システム要素としてのコミュニケーション)とみなした支払い/非支払いという対概念である。ルーマンは支払いと非支払いの対称性を強調するが,両者には意思決定を伴うか否かをめぐって「対称性の破れ」 が見られる。筆者は出来事/反出来事という対概念を用いて非支払いを2種に区別したのち,支払いと同時に生じる反出来事としての非支払いに着目し,それが支払いの不可逆性発生の「現場」となる様子を明らかにする。
著者
春日 淳一
出版者
関西大学
雑誌
關西大學經済論集 (ISSN:04497554)
巻号頁・発行日
vol.55, no.1, pp.133-151, 2005-06-15

「ゲマインシャフトとゲゼルシャフト」,「閉じた社会と開いた社会」といったように2項を対比させる説明図式は社会科学では昔からなじみ深いものであるが,2項対比をふたつ組み合わせた4次元の図式も,より精巧な分析用具としてしばしば用いられており,その代表例はパーソンズの理論に見られる。一方,衣・食・住,天・地・人,真・善・美といった日常的な3項対比はわれわれを3次元図式に誘う。4次元図式に勝るとも劣らぬ学問的な説得力をもつ3次元図式はいかにしてつくられるのか。これが本稿の中心テーマであり,ルーマンの図式を素材にして,レヴィ=ストロースの「料理の三角形」およびゴットハルト・ギュンターの「棄却値」(ないし「超言」)にヒントを得つつ3次元図式の強みを浮かび上がらせる。
著者
春日 淳一
出版者
関西大学
雑誌
關西大學經済論集 (ISSN:04497554)
巻号頁・発行日
vol.56, no.4, pp.403-418, 2007-03

本稿はルーマンの後期の著作に登場する新概念のひとつ「イリテーション」をとりあげ、その意味を明確にしようとするこころみである。まず、ルーマン理論の解説書等に手がかりを求めたのち、イリテーション概念を主題にした原典のいくつかにあたってみた。この概念自体のまとまった理論的説明は見いだせなかったが、時代状況とかかわらせた「イリテーションと価値」と題する論文が含蓄に富んでいるので、その内容を中心に関連概念を含めて解説した。「イリテーション」もまた、ルーマンのシステム論的思考法の枠組みにしっかり位置づけて理解することが肝心である、というのが得られた教訓である。
著者
春日 淳一
出版者
關西大学經済學會
雑誌
關西大學經済論集 (ISSN:04497554)
巻号頁・発行日
vol.37, no.2, pp.139-150, 1987-07-15
著者
春日 淳一
出版者
関西大学経済学会
雑誌
関西大学経済論集 (ISSN:04497554)
巻号頁・発行日
vol.61, no.1, pp.29-53, 2011-06-10

本稿の目的は、N.ルーマン(Luhmann)が自らの社会理論に取り込んだ数学由来の概念「固有値」(Eigenwert)に着目し、その有効性をとくに現下の時代状況に照らして浮かび上がらせることである。はじめに数学概念と照合しつつ、ルーマンが「固有値」という語で指し示そうとしたものが何であるのか、そのイメージ把握に努める。しかし、得られるのはひとつの明確なイメージではなく、さまざまなイメージのいわば寄り集まりである。そこで固有値の集合を整序すべく、まずは機能(的下位)システム・レベルの固有値と全体社会レベルの固有値を区別する。議論を補強する意味でルーマンの固有値論とハイエクの自生的秩序論との対比をはさんだあと、このシステム・レベルの区別をふまえた固有値の入れ子構造ないしピラミッド状構成という整序図式を提示し、それにもとづいて固有値概念の有効性をいわゆる「改革」のケースについて検証する。
著者
春日 淳一 KASUGA Junichi
出版者
関西大学教育学会
雑誌
関西大学経済論集 (ISSN:04497554)
巻号頁・発行日
vol.61, no.1, pp.29-53, 2011-06

本稿の目的は、N.ルーマン(Luhmann)が自らの社会理論に取り込んだ数学由来の概念「固有値」(Eigenwert)に着目し、その有効性をとくに現下の時代状況に照らして浮かび上がらせることである。はじめに数学概念と照合しつつ、ルーマンが「固有値」という語で指し示そうとしたものが何であるのか、そのイメージ把握に努める。しかし、得られるのはひとつの明確なイメージではなく、さまざまなイメージのいわば寄り集まりである。そこで固有値の集合を整序すべく、まずは機能(的下位)システム・レベルの固有値と全体社会レベルの固有値を区別する。議論を補強する意味でルーマンの固有値論とハイエクの自生的秩序論との対比をはさんだあと、このシステム・レベルの区別をふまえた固有値の入れ子構造ないしピラミッド状構成という整序図式を提示し、それにもとづいて固有値概念の有効性をいわゆる「改革」のケースについて検証する。