著者
大木 裕子
出版者
Japan Association for Cultural Economics
雑誌
文化経済学 (ISSN:13441442)
巻号頁・発行日
vol.2, no.2, pp.117-126, 2000-09-30 (Released:2009-12-08)
参考文献数
15

フランスではオーケストラの運営資金の大半が公的助成で賄われているため、民間企業をスポンサーとするアメリカとは異なり、景気に左右されることの少ない安定した経営が可能である。EUの統合により、国の境界線が低くなることによって、これまで伝統的な経営を行ってきたフランスのオーケストラの中にも危機感が強まり、ディレクタージェネラルが中心となって、積極的なマネジメントを行うオーケストラが現れてきている。
著者
宮治 磨里
出版者
Japan Association for Cultural Economics
雑誌
文化経済学 (ISSN:13441442)
巻号頁・発行日
vol.3, no.1, pp.91-101, 2002

本稿は、19世紀末のパリ・オペラ座がフランス第三共和政期に、どのようにその社会的機能を変容させていったのかを解明する試みである。現存するパレ・ガルニエは落成当時、特権階級のための社交場であったが、1880年代、90年代と、劇場を民衆のために開かれたものにしようという動きが活発化する。その結果、オペラ座に足を運んだ観衆層は、大ブルジョワジーから中層ブルジョワジーへと移行し、それがオペラ・レパートリーにも反映し、オペラ座に新しい風が吹くことになる。
著者
金武 創
出版者
Japan Association for Cultural Economics
雑誌
文化経済学 (ISSN:13441442)
巻号頁・発行日
vol.4, no.3, pp.31-40, 2005
被引用文献数
2

デジタル化された日本のポピュラー音楽 (J-POP) 市場は1998年まで確実に成長し、その後急速に衰退した。1999年から2003年にかけて、アーティスト部門では年間販売チャートの大幅な変化がみられると同時に、(出せば必ずヒットする) カリスマ型アーティストの存在が認められる。逆にレコード会社は寡占市場を形成しているが、このままでは共倒れを避けることはできないだろう。
著者
曽田 修司
出版者
Japan Association for Cultural Economics
雑誌
文化経済学 (ISSN:13441442)
巻号頁・発行日
vol.5, no.3, pp.47-55, 2007

公立文化施設は、従来アートの愛好家だけを対象としがちであり、公共財としてのアートという認識は一般的ではなかった。近年、ワークショップやアウトリーチなどの手法により、非愛好家に対してもアートの価値を目に見える形で提示する機会が増加している。これは、非愛好家を含む地域住民が地域文化形成への参加の保証を得ることにつながり、公立文化施設をめぐる異なる立場間の対立に「対話の可能性」をもたらすものと考えられる。
著者
秋葉 美知子
出版者
Japan Association for Cultural Economics
雑誌
文化経済学 (ISSN:13441442)
巻号頁・発行日
vol.3, no.2, pp.49-61, 2002

今日的意味でのパブリック・アート概念の成立は、1967年にNEA (全米芸術基金) が「アート・イン・パブリック・プレイス」プログラムを創設したことに起源をもつ。本稿は、このプログラムによる第一号作品として1969年にグランドラピッズ市に設置されたアレクサンダー・カルダーの彫刻「ラ・グランド・ヴィテス」をパブリック・アートの嚆矢と位置づけ、その設置に至る経緯を考察することにより、米国におけるパブリック・アートのオリジナル概念を論じる。
著者
河口 淑子 多治見 左近
出版者
Japan Association for Cultural Economics
雑誌
文化経済学 (ISSN:13441442)
巻号頁・発行日
vol.1, no.3, pp.59-68, 1999
被引用文献数
1

本研究は、情報誌"ぴあ"の音楽・演劇公演状況を分析することにより、関西圏の各都市における催し物の開催数や種類の分布の実態を明らかにすることを目的としている。人の流動状況や立地状況などの都市の性格と催し物の数やジャンルとの間には関係のあることがわかった。観客を供給する規模や地域的な広がりに違いはあるが、大阪市と京都市は催し物の供給に関して、関西圏の中心的な都市であることが分かった。また、都市の立地状況の違いにより、開催されるジャンルには違いがあることが把握できた。
著者
伊志嶺 絵里子
出版者
Japan Association for Cultural Economics
雑誌
文化経済学 (ISSN:13441442)
巻号頁・発行日
vol.5, no.1, pp.83-93, 2006

近年、日本の音楽祭の開催目的は多義化している傾向にあり、運営のあらゆる段階で市民参加が進むことにより、音楽祭の形態や企画内容も多様化している。こうした中、官民連携したマネージメントに必要なのは、ヒューマンウエアのレベルで市民参加を発展させる仕組みづくりを内包すること、そして行政は、すべてを地域住民に情報公開した上で、地域住民や音楽家との討議を重視し、全体をコーディネーションできる人材をもつことである。