著者
加藤 里美
出版者
Japan Management Diagnosis Association
雑誌
日本経営診断学会論集 (ISSN:18834930)
巻号頁・発行日
vol.10, pp.29-35, 2010

本論文の目的は,岐阜県のA社における中国人研修生・技能実習生,彼らとともに働く日本人従業員を対象に,改善や品質管理に関する会社や職場での意識と,日本人従業員と中国人研修生・技能実習生との協働の関係を踏まえた上で,分業体制への改善に関する日本人従業員の意識を明らかにしていくことにある。外国人研修生・技能実習生を対象とした研究のほとんどが彼らへの聞き取り調査を中心としており,質問紙調査を用いた研究が極めて少ないこと,また協働する日本人従業員の意識に焦点を当てていないことから,本論文による結果は,中国人研修生・技能実習生を雇用する企業に何らかの示唆を与えることができると考える。
著者
今井 範行
出版者
Japan Management Diagnosis Association
雑誌
日本経営診断学会論集 (ISSN:18834930)
巻号頁・発行日
vol.12, pp.138-144, 2012

本稿では,近年の企業経営における環境意識の高揚を背景とした,管理会計領域における環境管理会計の興隆,とりわけ生産・物流プロセスを対象とするマテリアルフローコスト会計の発展とその特徴を明確化するとともに,環境貢献性を有する効率的生産方式であるトヨタ生産システムとの関係に関する考察を行う。そのうえで,トヨタ生産システムとマテリアルフローコスト会計の統合的進化を促進しうる新たな管理会計概念として,「マテリアルフロータイムコスト」の概念を提唱する。
著者
中島 康明
出版者
Japan Management Diagnosis Association
雑誌
日本経営診断学会論集 (ISSN:18834930)
巻号頁・発行日
vol.7, pp.15-25, 2007

いわゆる「まちづくり三法」の改正に伴い,我が国は新たな,ある意味で本格的な「まちづくり」法制の第一歩を踏み出すことになったが,現実の「まち」は様々な課題を抱えており,その道程はかなり厳しいものと窺える。市場型商店街の再活性化のためのビジョンづくりに関与した経験から,まちづくりを成功させるためには,(1)私利私欲を排除するための仕組みづくり,(2)役割分担の明確化と適材配置,(3)民と官を繋ぐインタープリターの存在,(4)行政職員の"経営"感覚,(5)官民組織の横断的・統合的な一体診断の必要性が課題として明らかになった。
著者
後藤 時政 井上 博進
出版者
Japan Management Diagnosis Association
雑誌
日本経営診断学会論集 (ISSN:18834930)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.243-254, 2006

本研究では, わが国大手企業の特許認識を調査するため, 2004年度四季報に掲載されていた上場企業の中から, 一般機械, 電気機器, 輸送用機器, 精密機器, 化学工業製品企業882社にアンケートを送り, 特許取得状況, 特許活用および特許トラブルの状況などについて調査した。本調査から得られた結果を中小企業の結果と比較しながら, 大手企業の特許認識の状況を明らかにし, その特許戦略について提言を試みた。
著者
小島 貢利
出版者
Japan Management Diagnosis Association
雑誌
日本経営診断学会論集 (ISSN:18834930)
巻号頁・発行日
vol.8, pp.159-163, 2008

本研究では,まず,日本経済の今後の推移について説明し,円が今後強くなる可能性は乏しいことを指摘する。さらに,外国為替証拠金取引(FX)の特徴に関して紹介し,投資家がFXにより気軽にグローバル投資を行うことができることを示す。また,株式市場とFXとの比較を行い,FXは,一年中,平日24時間取引可能であり,イベントリスクに対して,より迅速に対応可能な取引システムであることを説明する。最後に,円資産に固執することのリスクを,日本人は強く認識すべきであり,将来の円下落や国内低金利継続に対して,FXは有効な資産保護対策になりうることを主張する。
著者
庄司 真人
出版者
Japan Management Diagnosis Association
雑誌
日本経営診断学会論集 (ISSN:18834930)
巻号頁・発行日
vol.11, pp.63-68, 2011

近年,企業と顧客の役割のとらえ方を見直す必要性が議論されてきている。企業だけが価値を生み出すのではなく,企業と顧客が共に価値を創造するという価値共創が注目されている。サービス・ドミナント・ロジックでは,顧客を価値の創造者として拡張することによって,顧客の持つ価値創造性について考察している。しかし顧客の価値創造の視点については十分に議論されていない。そこで,本稿では,経営診断という視点で,顧客の価値創造の役割について概念的に考察し,生み出される価値の問題,顧客の価値への関わりが価値創造で中心となることを提示する。
著者
西崎 信男
出版者
Japan Management Diagnosis Association
雑誌
日本経営診断学会論集 (ISSN:18834930)
巻号頁・発行日
vol.8, pp.145-151, 2008

経済発展に伴い、第3次産業がGDPで6割超を占める先進国の経済構造では、サービス業活性化が不可欠である。一大サービス産業である英国プロサッカーを見る。無形性等サービスの特質から、スタジアムはサービス提供システムで重要な役割を担う。有料TV発達等も加わり、サッカーは「スポーツからビジネスへ脱皮」した。そこでは自前のスタジアムが、差別的優位性を発揮している。クラブの売上高の中で、景気に左右されない入場料は経営の基盤である。入場者数を増大させるためには、ファンのクラブへの思い入れを毀損しないことである。そのためには、スタジアムを単なる「経営資源」ではなく、「地域共有資産」と位置づけることが重要である。
著者
辻 朋子
出版者
Japan Management Diagnosis Association
雑誌
日本経営診断学会論集 (ISSN:18834930)
巻号頁・発行日
vol.8, pp.9-14, 2008
被引用文献数
1

本研究は,不可視のサービス機能の変容を通して,共同体を閾値の突破に向けていかにファシリテートするかの試みである。まず,触媒機能を持つヒトや組織を"セレンディピティ"とし,これを共同体に組み込む支援を通して不可視サービスの可視化過程を導く。次にそうした,一連のプロセスはゆらぎとしての混沌から秩序が形成されるオートポイエーティック・システムであり,これが自己組織化の本質であることを論証する。結論として仕事を分割するための分業が支配する"不幸せなコミュニティモデル"に対し,補い合うための協働から創発されるのが"幸せなコミュニティモデル"であり,それを誘発させるのがファシリテータの役割であることを示す。
著者
洪 萬杓
出版者
Japan Management Diagnosis Association
雑誌
日本経営診断学会論集 (ISSN:18834930)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.319-329, 2006

ロシア革命以来, 人類史に始めて登場した旧社会主義体制が 「崩壊」 し十数年が経過したが, 今や市場経済のみが唯一の普遍的原理となりつつある。果たして, そのようにほとんど未来永劫, 人類史の今後を規定していくと結論付けてもよいのだろうか。歴史の現段階においては, 「現実社会主義」 自体が資本主義と存否を懸けて対決する体制と言うよりは, 先進資本主義にやや遅れて近代的国民国家を形成させた 「近代化のもうひとつの道」 であった, と総括することが可能になった。このようなことを踏まえると, 人類史はいま一度, 市場経済の論理が専一的に貫徹するのではない 「新しいゲマインシャフト」 を志向する可能性を東アジアの中のヴェトナム社会から 「試論」 を定立させ, 「命題」 として考えてみた。
著者
ナサンデルゲル ツェレンダシ
出版者
Japan Management Diagnosis Association
雑誌
日本経営診断学会論集 (ISSN:18834930)
巻号頁・発行日
vol.8, pp.178-183, 2008

本稿では、移行経済における消費者のマーケティングに対する態度を図ることを目的として掲げ、モンゴルの消費者を対象に、調査を行い、それに基づいて、モンゴルにおける消費者のマーケティングに対する態度を検証した。具体的には、GaskiとEtzelの開発した消費者態度尺度を評価し、モンゴルにおける消費者のマーケティングに対する態度をマーケティングミックスの4つの要素に対する態度を図ることにより、計測し、その結果を同じ調査が実施された国々の結果と比べることを試みた。
著者
原田 保
出版者
Japan Management Diagnosis Association
雑誌
日本経営診断学会論集 (ISSN:18834930)
巻号頁・発行日
vol.7, pp.3-14, 2007

昨今,流通業の競争戦略は熾烈であるが,それでも次から次へと新たな覇権企業が立ち現われてきた。そうなると,最初は辺境から生まれた,まさに取るに足らないような企業がいかにして短期間で業界のヘゲモニーを確立できるのか,という疑問が湧いてくる。そして,これに応えるべき解が本稿で示される「コンテクスト・ドリブン・ビジネスモデル」に見出される,ということが著者の主張である。 なお,著者はかねがねビジネスモデルとはコンテンツ(提供内容)とコンテクスト(提供方法)からなるものと考えているが,後者のコンテクストとはコンテンツが保持する潜在的価値を顕在化するための,あるいは価値を増大するための装置である,ということにその戦略性が見出されるのである。このある種の装置としてのコンテクストの優位性によって成功した企業が,すなわち,そのポジションを「辺境」から「中心」に転換した代表例が「ファースト・リテイリング」「良品計画」「デル」「吉野家」「ディズニーランド(拠点名)」である,と考えることができる。
著者
バーサンフー ジャムサランジャワ
出版者
Japan Management Diagnosis Association
雑誌
日本経営診断学会論集 (ISSN:18834930)
巻号頁・発行日
vol.7, pp.348-359, 2007
被引用文献数
1

本研究では,Web上の製品評価クチコミデータをもとに商品のブランド力を可視化することを目的とする。ブランド力の構成要素として「ブランド認知」,「ブランド・イメージ」,「知覚品質」,「ブランド・ロイヤルティ」に関するフレーズをクチコミデータから抽出し,対象ブランドにおけるそれらの出現割合の比較を行った。また,評価ポイントの高位(5位)と低位(2位)の割合を定量化し,ブランド力の時間的変化の可視化を試みた。その結果,ブランド力の可視化にWeb上に累積されたクチコミデータは有用であることが確認された。