著者
加藤 里美
出版者
Japan Management Diagnosis Association
雑誌
日本経営診断学会論集 (ISSN:18834930)
巻号頁・発行日
vol.10, pp.29-35, 2010

本論文の目的は,岐阜県のA社における中国人研修生・技能実習生,彼らとともに働く日本人従業員を対象に,改善や品質管理に関する会社や職場での意識と,日本人従業員と中国人研修生・技能実習生との協働の関係を踏まえた上で,分業体制への改善に関する日本人従業員の意識を明らかにしていくことにある。外国人研修生・技能実習生を対象とした研究のほとんどが彼らへの聞き取り調査を中心としており,質問紙調査を用いた研究が極めて少ないこと,また協働する日本人従業員の意識に焦点を当てていないことから,本論文による結果は,中国人研修生・技能実習生を雇用する企業に何らかの示唆を与えることができると考える。
著者
今井 範行
出版者
Japan Management Diagnosis Association
雑誌
日本経営診断学会論集 (ISSN:18834930)
巻号頁・発行日
vol.12, pp.138-144, 2012

本稿では,近年の企業経営における環境意識の高揚を背景とした,管理会計領域における環境管理会計の興隆,とりわけ生産・物流プロセスを対象とするマテリアルフローコスト会計の発展とその特徴を明確化するとともに,環境貢献性を有する効率的生産方式であるトヨタ生産システムとの関係に関する考察を行う。そのうえで,トヨタ生産システムとマテリアルフローコスト会計の統合的進化を促進しうる新たな管理会計概念として,「マテリアルフロータイムコスト」の概念を提唱する。
著者
西崎 信男
出版者
日本経営診断学会
雑誌
日本経営診断学会論集 (ISSN:18834930)
巻号頁・発行日
vol.15, pp.23-28, 2015

2012年英プレミアリーグのManchester United(MANU)がニューヨーク証券取引所(NYSE)に上場,そして新株発行による資金調達を行った(IPO)。安定性に欠け収益性にも問題があるサッカークラブが,投資家保護が徹底し世界で最も厳しいNYSEになぜ上場できたのか? そこには新規創業を促進し,雇用を産み出すために,証券発行市場,流通市場の規制を緩和して(Jobs Act),成長企業に米国資本市場を再開放するとの米国政府の強い決意があった。米国側には規制緩和のシンボルとして,MANU側にはオーナーの資金繰り問題,広告塔としての上場があった。サッカークラブのファイナンスと米国ベンチャー企業施策を論じる。単なるプロスポーツクラブの上場ではない。その背景に世界各国の資本を巡る取引所経由の戦いがある。
著者
清水 恵一
出版者
日本経営診断学会
雑誌
日本経営診断学会論集 (ISSN:18834930)
巻号頁・発行日
vol.11, pp.183-188, 2012

本論文のねらいは,提携の概念とパースペクティブについて考察を加え,統合化を試みることにある。具体的には,第1に,提携の定義や種類を明らかにしている。第2に,提携の動機としてのパースペクティブについて考察を行っている。ここでは特に,従来議論されてきたパースペクティブの類型化が中心となっている。第3に,パースペクティブに基づいた提携を行う利点や欠点について明らかにしている。本論文は,こうした作業を通じて,提携の全体像を再構築するとともに,今後の実証研究に向けた一助とする。
著者
川村 悟
出版者
日本経営診断学会
雑誌
日本経営診断学会論集 (ISSN:18834930)
巻号頁・発行日
vol.13, pp.37-43, 2013

中小企業診断士には,フリーランスとして活躍する「独立診断士」,企業に所属する「企業内診断士」という二つの属性がある。後者の企業内診断士は,所属企業の副業禁止規定によって,企業外において診断サービスを提供しても,有償で活動を行うことが難しい。したがって,無償の診断を余儀なくされ,サービス品質を向上しにくい問題が存在する。本報告では,診断報酬の有償化によって企業内診断士のサービス品質向上が実現できることを検証する。有償化が引き金となり,「企業内診断士のモチベーション向上」と「中小企業の要求品質向上」が相互に作用する好循環が生まれ,中小企業診断士の専門性発揮や中小企業の経営改善に貢献しうる可能性を示す。
著者
髙村 清吾 高野 研一
出版者
日本経営診断学会
雑誌
日本経営診断学会論集 (ISSN:18834930)
巻号頁・発行日
vol.17, pp.75-81, 2017

本研究は,過去の倒産企業に共通した組織風土を導き出すことを目的としている。このため,公開されたデータベースから,対象とする倒産企業76社を抽出し,企業倒産に至った根本原因(本源的な倒産原因)を突き止める「根本原因分析」を行うとともに,倒産原因の本源的な問題である経営者問題(倒産要因におけるハザード)を中心に,「数量化III類」を適用し,本質的な問題である経営者問題に関係する企業の組織風土について考察を行った。考察の結果,「傲岸不遜,士気低下,私利私欲」の経営者問題に係る「腐敗堕落」型の組織風土が倒産企業に共通する根本原因との結論に至った。
著者
田原 静
出版者
日本経営診断学会
雑誌
日本経営診断学会論集 (ISSN:18834930)
巻号頁・発行日
vol.17, pp.48-54, 2017

電子書籍サービス等のデジタル・コンテンツ提供サービスでは,従来の有形グッズの所有とは異なり,利用者は所有対象に対する所有権を持たない。本研究では,これらのサービスが作り出す不安定な所有の状況に対する消費者の意識と反応,またサービスの一環として提供される,所有権を伴わない消費対象に対し所有意識を持つケースがあることを明らかとした。この結果は従来のデジタル・コンテンツおよびアクセス・ベース消費の研究を補完し,サービスの価値や利用者の満足度に関する経営診断に新たな知見を与える可能性を開く。
著者
矢野 耕也 鈴木 英之 竹中 理
出版者
日本経営診断学会
雑誌
日本経営診断学会論集 (ISSN:18834930)
巻号頁・発行日
vol.8, pp.15-20, 2008

企業の与信を評価する際に,定性スコアリングシートを使用する場合がある。そのとき,定性的な評価に対して客観性を持たせることと,また与信を正しく評価可能とする尺度を与えることが課題であった。またスコアリングシートは評価項目が多いために,定量的な尺度で総合評価することが望ましいといえる。ここではスコアの配列を一種のパターンとして捉え,スコアから総合パターンの値を求める方法に品質工学のマハラノビスの距離を用いた。またパターンの規則性を可視化するために直交表の適用を図った。その結果,36項目の定性スコアを一元化した数値で求められ,また直交表から得られる要因効果図で,潜在構造を可視化することを達成した。
著者
新井 信裕
出版者
日本経営診断学会
雑誌
日本経営診断学会論集 (ISSN:18834930)
巻号頁・発行日
vol.18, pp.104-108, 2019

<p>日本に経営診断と云う用語が登場したのは,第二次世界大戦により荒廃した経済を復興するために,1948年に創設された「中小企業診断制度」においてであるとされる。その語源は当時の日本医学の主流であったドイツ医学のダイアグノーシス(診断)を充て,医師と患者との関係を,経営コンサルタントとその助言を得た企業との関係と見做したことによると説明されている。しかしながら狩猟・農耕・工業社会を経て,第4次文明社会に入り,ディスラプター(創造的破壊)に対応するためには,従来の経営診断を超えた高度の進化を目指す経営革新が求められているのであり,ここに従来のダイアグノーシスをコンサルティング・サイエンスへと進化させるよう提言することとする。</p>
著者
森下 俊一郎
出版者
日本経営診断学会
雑誌
日本経営診断学会論集 (ISSN:18834930)
巻号頁・発行日
vol.17, pp.115-121, 2017

おもてなしは日本独自の文化を反映した,提供者個々の器量や経験に依存する属人的なハイサービスと考えられている。一方,組織全体として従業員が優れたおもてなしを提供している旅館も散見される。先行研究では,おもてなしの個から個への伝承が中心に論じられ,組織的なマネジメントに関する論述は手薄である。本研究では,おもてなしで有名な「加賀屋」と「黒川温泉」を事例に,それらの優れたおもてなしを創出する要因を調査し,比較分析を行った。その結果,顧客志向の理念をおもてなしとして具現化し,個々の従業員に伝達,顧客へ実践され,そのフィードバックの共有と議論から,よりよいおもてなしを創出するマネジメントモデルを提示した。
著者
秋葉 武
出版者
日本経営診断学会
雑誌
日本経営診断学会論集 (ISSN:18834930)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.190-199, 2005-10-10 (Released:2010-06-15)
参考文献数
14

近年, 多くの地方自治体とNPO間で組織間関係が生成し, 維持されるようになった。反面, 両者間で多くのコンフリクト (Conflict) が発生している。中間支援NPOおよび地方公共団体へのフィールドワークをベースにして, 本稿では以下の点について論じる。つまり, 組織間関係に関して地方自治体からNPOへの事業委託をキーワードとして, 組織論的アブローチを用いて検証する。またコンフリクトに関して, 特に地方自治体の弱いガバナンス機能に焦点を当てて分析を試みた。
著者
魏 興福 田村 隆善 老平 崇了
出版者
日本経営診断学会
雑誌
日本経営診断学会論集 (ISSN:18834930)
巻号頁・発行日
vol.17, pp.108-114, 2017

中国政府は,国民生活の向上を図るため,不動産業を国の主要産業と位置づけ支援してきた。このため,中国では経済の発展に伴って不動産業は飛躍的に拡大し,多くの不動産企業が設立され,規模を拡大させてきた。そのなかで,中国不動産大手企業は,販売用不動産を中心とした棚卸資産を増大させ,棚卸資産回転率は日本の大手企業と比較して低い値となっている。しかし,中国不動産中堅企業についての経営財務状況についての分析はこれまでなされていない。また,中国では,2010~2014年にかけてGDP成長率と住宅投資伸び率は鈍化傾向にある。そのような中国経済の減速は,中国不動産企業,とくに中堅不動産企業ないしはそれより規模の小さい企業の経営財務に大きな影響を与えていることも懸念される。本研究では,中国不動産中堅企業の経営財務を分析し,大手企業と比較しての中堅企業の特徴を明らかにする。結果として,中堅企業は大手企業に比べて棚卸資産回転率が高く,事業の多角化が進んでいるなどの特徴を明らかにする。
著者
宮脇 敏哉
出版者
日本経営診断学会
雑誌
日本経営診断学会論集 (ISSN:18834930)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.397-410, 2005-10-10 (Released:2010-06-15)
参考文献数
20

果敢に挑戦するアントレプレナーなくして、乗敢に挑戦するベンチャー企業は発生しない。本稿では、まずアントレプレナーの定義をあげ、経灘学者、経営学者全般の考え方を提しした。次にアントレプレナーの出現から成長、発展を見でその人物像、資質と性格、能力と理念を検討した。さちに、アントレプレナーの教育と学歴、地域を検討してベンチャー企業発生の根源を検討した。検討の結果、アントレプレナーの出現には地域における影響が大きいことがベンチャー企業クラスター地域の京都、浜松を検討することにより理解できた。域域ビジネスあるいはベンチャー企業クラスター地域の特性をアントレプレナーを検討することにより解明したと考える。
著者
中島 康明
出版者
Japan Management Diagnosis Association
雑誌
日本経営診断学会論集 (ISSN:18834930)
巻号頁・発行日
vol.7, pp.15-25, 2007

いわゆる「まちづくり三法」の改正に伴い,我が国は新たな,ある意味で本格的な「まちづくり」法制の第一歩を踏み出すことになったが,現実の「まち」は様々な課題を抱えており,その道程はかなり厳しいものと窺える。市場型商店街の再活性化のためのビジョンづくりに関与した経験から,まちづくりを成功させるためには,(1)私利私欲を排除するための仕組みづくり,(2)役割分担の明確化と適材配置,(3)民と官を繋ぐインタープリターの存在,(4)行政職員の"経営"感覚,(5)官民組織の横断的・統合的な一体診断の必要性が課題として明らかになった。
著者
後藤 時政 井上 博進
出版者
Japan Management Diagnosis Association
雑誌
日本経営診断学会論集 (ISSN:18834930)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.243-254, 2006

本研究では, わが国大手企業の特許認識を調査するため, 2004年度四季報に掲載されていた上場企業の中から, 一般機械, 電気機器, 輸送用機器, 精密機器, 化学工業製品企業882社にアンケートを送り, 特許取得状況, 特許活用および特許トラブルの状況などについて調査した。本調査から得られた結果を中小企業の結果と比較しながら, 大手企業の特許認識の状況を明らかにし, その特許戦略について提言を試みた。
著者
小島 貢利
出版者
Japan Management Diagnosis Association
雑誌
日本経営診断学会論集 (ISSN:18834930)
巻号頁・発行日
vol.8, pp.159-163, 2008

本研究では,まず,日本経済の今後の推移について説明し,円が今後強くなる可能性は乏しいことを指摘する。さらに,外国為替証拠金取引(FX)の特徴に関して紹介し,投資家がFXにより気軽にグローバル投資を行うことができることを示す。また,株式市場とFXとの比較を行い,FXは,一年中,平日24時間取引可能であり,イベントリスクに対して,より迅速に対応可能な取引システムであることを説明する。最後に,円資産に固執することのリスクを,日本人は強く認識すべきであり,将来の円下落や国内低金利継続に対して,FXは有効な資産保護対策になりうることを主張する。
著者
庄司 真人
出版者
Japan Management Diagnosis Association
雑誌
日本経営診断学会論集 (ISSN:18834930)
巻号頁・発行日
vol.11, pp.63-68, 2011

近年,企業と顧客の役割のとらえ方を見直す必要性が議論されてきている。企業だけが価値を生み出すのではなく,企業と顧客が共に価値を創造するという価値共創が注目されている。サービス・ドミナント・ロジックでは,顧客を価値の創造者として拡張することによって,顧客の持つ価値創造性について考察している。しかし顧客の価値創造の視点については十分に議論されていない。そこで,本稿では,経営診断という視点で,顧客の価値創造の役割について概念的に考察し,生み出される価値の問題,顧客の価値への関わりが価値創造で中心となることを提示する。
著者
西崎 信男
出版者
Japan Management Diagnosis Association
雑誌
日本経営診断学会論集 (ISSN:18834930)
巻号頁・発行日
vol.8, pp.145-151, 2008

経済発展に伴い、第3次産業がGDPで6割超を占める先進国の経済構造では、サービス業活性化が不可欠である。一大サービス産業である英国プロサッカーを見る。無形性等サービスの特質から、スタジアムはサービス提供システムで重要な役割を担う。有料TV発達等も加わり、サッカーは「スポーツからビジネスへ脱皮」した。そこでは自前のスタジアムが、差別的優位性を発揮している。クラブの売上高の中で、景気に左右されない入場料は経営の基盤である。入場者数を増大させるためには、ファンのクラブへの思い入れを毀損しないことである。そのためには、スタジアムを単なる「経営資源」ではなく、「地域共有資産」と位置づけることが重要である。