著者
鈴木 寿之 大迫 尚晴 山﨑 曜 木村 清志 渋川 浩一
出版者
Kanagawa Prefectural Museum of Natural History (Kanagawa Prefectural Museum)
雑誌
神奈川県立博物館研究報告(自然科学) (ISSN:04531906)
巻号頁・発行日
vol.2022, no.51, pp.9-34, 2022 (Released:2022-03-29)

琉球列島八重山諸島の河川渓流域に生息するハゼ科ヨシノボリ属魚類の2 新亜種(Rhinogobius aonumai aonumai とRhinogobius aonumai ishigakiensis)をふくむ1 新種 Rhinogobius aonumai (新標準和名パイヌキバラヨシノボリ)を記載した。Rhinogobius aonumai aonumai (新標準和名イリオモテパイヌキバラヨシノボリ)は西表島のみに分布し、背鰭前方鱗数9–15、縦列鱗数32–37、脊椎骨数11+15–17=26–28(モードは27)、第2 背鰭前端の2 個の坦鰭骨は第10 脊椎骨の神経棘をまたぐ、腹鰭第5 軟条は最初に3 または4 分岐(ふつう4 分岐)する、頬の孔器列は縦列する、生鮮時の体の地色は黄色系である、第1 背鰭に暗色斑はない、尾鰭に暗色の横点列かジグザグ横線が並ぶ、雌の尾鰭基底に垂直に並ぶ1 対の暗色の短い棒状斑があるなどの特徴で同属の他種階級タクソン(種及び亜種)から区別できる。Rhinogobius aonumai ishigakiensis (新標準和名イシガキパイヌキバラヨシノボリ)は石垣島のみに分布し、背鰭前方鱗数10–14、縦列鱗数33–38、脊椎骨数10+16–18==26–28(モードは27)、第2 背鰭前端の2 個の坦鰭骨は第9 脊椎骨の神経棘をまたぐ、腹鰭第5 軟条は最初に2 または3 分岐(ふつう2 分岐)する、頬の孔器列は縦列する、生鮮時の体の地色は黄色系である、第1 背鰭に暗色斑はない、尾鰭に暗色のジグザグ横線が並ぶ、雌の尾鰭基底に垂直に並ぶ1 対の暗色の短い棒状斑があるなどの特徴で同属の他種階級タクソン(種及び亜種)から区別できる。
著者
鈴木 寿之 大迫 尚晴 木村 清志 渋川 浩一
出版者
Kanagawa Prefectural Museum of Natural History (Kanagawa Prefectural Museum)
雑誌
神奈川県立博物館研究報告(自然科学) (ISSN:04531906)
巻号頁・発行日
vol.2020, no.49, pp.7-28, 2020 (Released:2020-03-31)
被引用文献数
2

琉球列島の河川急流域に生息するハゼ科ヨシノボリ属魚類2 新種、Rhinogobius yaima と R. yonezawai を記載した。Rhinogobius yaima(ヤイマヒラヨシノボリ:新称)は縦列鱗数40–43、脊椎骨数26、第1 背鰭棘数6、頭部はよく縦偏し、体と尾柄は細長い、雄の第1 背鰭低く後端は倒しても第2 背鰭起部に達しない、腹鰭第5 軟条は普通最初に5 分岐する、胸鰭基底、腹鰭起部前方、腹部腹中線周辺は無鱗である、生時もしくは生鮮時に側頭部から第2 背鰭起部にかけての背面に橙色または赤色の2 縦線がある、胸鰭基底に1 暗色楕円形斑がある、雄の尾鰭に橙色の4 横点列がある、雌の尾鰭基底に垂直に並んだ1 対の長方形または円形の黒色斑があるなどの特徴で同属他種から区別できる。Rhinogobius yonezawai(ケンムンヒラヨシノボリ:新称)は縦列鱗数35–39、脊椎骨数26、雄の第1 背鰭は高く烏帽子形、その第2・3 棘が最長で糸状に伸長しないものの倒すと第2 背鰭第1 から第4 軟条基部に達する、腹鰭第5 軟条は最初に4 分岐する、胸鰭基底、腹鰭起部前方、腹部腹中線周辺もしくは腹部腹中線前半周辺は無鱗である、胸鰭基底に黒色楕円形斑がある、生時もしくは生鮮時に側頭部から第1 背鰭下方にかけての背面に橙色または赤色の2 縦線がある、胸鰭基底に1 暗色楕円形斑がある、雄の尾鰭に橙色または赤色の6–8 垂線がある、雌の尾鰭基底に横Y 字形の1 黒色斑があるなどの特徴で同属他種から区別できる。
著者
菅原 弘貴 藤谷 武史 瀬口 翔太 澤畠 拓夫 永野 昌博
出版者
Kanagawa Prefectural Museum of Natural History (Kanagawa Prefectural Museum)
雑誌
神奈川県立博物館研究報告(自然科学) (ISSN:04531906)
巻号頁・発行日
vol.2022, no.51, pp.47-59, 2022 (Released:2022-03-29)

サンショウウオ属の1 新種を、日本の愛知県西部から記載した。分子遺伝学的および形態学的解析の結果、ヤマトサンショウウオは愛知グループと近畿グループの二つに分けられることが示唆された。このため、ヤマトサンショウウオの愛知グループを、新種Hynobius owariensis sp. nov.(和名:オワリサンショウウオ)として記載した。形態比較の結果、調査した雄個体において、ヤマトサンショウウオが尾の上下縁に明瞭かつ鮮明な黄色線をもつのに対して、本新種ではこの形質が確認できなかった。さらに、雄個体において、体側に沿って前肢と後肢を伸ばした時、本新種は多くの個体が肋皺1 個分よりも離れるが、ヤマトサンショウウオでは多くの個体が肋皺1 個分以内(個体によっては重複する)に収まっていた。その他、両種間には有意に異なる形質が複数存在していることに加えて、判別分析の結果においても、雌雄共に形態的に区別可能であることが示唆された。本新種は愛知県の西部(知多半島から名古屋市周辺部)に固有であるが、既に絶滅したと考えられる集団も複数存在し、現在も開発や乾田化によって、絶滅の危機に瀕している。
著者
渡辺 恭平
出版者
Kanagawa Prefectural Museum of Natural History (Kanagawa Prefectural Museum)
雑誌
神奈川県立博物館研究報告(自然科学) (ISSN:04531906)
巻号頁・発行日
vol.2023, no.52, pp.7-44, 2023-03-28 (Released:2023-03-28)

日本産のハエヒメバチ亜科Orthocentrinaeの9 属22 種について、分類学的および動物地理学的研究をおこなった。Apoclima Förster, 1869と亜属Dicolus Förster, 1869をそれぞれ日本新産属および亜属として記録した。4 新種、エゾチビハエヒメバチApoclima brevicauda sp. nov.、オナガチビハエヒメバチApo. longicauda sp. nov.、ニッポンヒラタハエヒメバチHemiphanes japonicum sp. nov.、ムナコブオナガハエヒメバチProclitus tuberculatus sp. nov.を記載し、学名と標準和名を命名した。8日本新産種、バイカルハエヒメバチAniseres baikalensis Humala, 2007、クボミヒラタハエヒメバチH. gravator Förster, 1871、オオクシアシナガハエヒメバチMegastylus (Dicolus) excubitor (Förster, 1871)、フタヒダアシナガハエヒメバチM. (Dic.) impressor Schiødte, 1838、スネボソアシナガハエヒメバチM. (Dic.) pectoralis (Förster, 1871)、キョクトウアシナガハエヒメバチM. (Megastylus) kuslitzkii Humala, 2007、モトグロオナガハエヒメバチProclitus ganicus Sheng & Sun, 2013、ミヤマオナガハエヒメバチPr. praetor (Haliday, 1838)を記録し、標準和名を命名した。これらに加えて、既知の10種、タイリクツヤハエヒメバチ(標準和名新称)Aperileptus albipalpus (Gravenhorst, 1829)、ムネヒダツヤハエヒメバチ(標準和名新称)Ape. vanus Förster, 1871、クナシリハエヒメバチ(標準和名新称)Eusterinx (Divinatrix) kurilensis Humala, 2004、ジュズヒゲハエヒメバチE. (Holomeristus) tenuicincta (Förster, 1871)、トゲスジハエヒメバチ(標準和名新称)E. (Ischyracis) bispinosa (Strobl, 1901)、ムネツヤヒラタハエヒメバチ(標準和名新称)H. erratum Humala, 2007、モモボソアシナガハエヒメバチ(標準和名新称)M. (M.) cruentator Schiødte, 1838、モモブトアシナガハエヒメバチ(標準和名新称)M. (M.) orbitator Schiødte, 1838、ハラボソハエヒメバチNeurateles asiaticus Watanabe, 2016、ツヤハラコハエヒメバチ(標準和名新称)Pantisarthrus lubricus (Förster, 1871) についても新分布記録を報告した。旧北区東部産Apoclimaと全世界産のHemiphanesの種への検索表を提供した。
著者
ブレイクモア ロバート J. Shawn MILLER Shu Yong LIM
出版者
Kanagawa Prefectural Museum of Natural History (Kanagawa Prefectural Museum)
雑誌
神奈川県立博物館研究報告(自然科学) (ISSN:04531906)
巻号頁・発行日
vol.2022, no.51, pp.95-104, 2022 (Released:2022-03-29)

形態学的特徴およびmtDNA のCOI バーコーディングに基づき、沖縄県久米島産のアズマフトミミズ属の新種と、滋賀県琵琶湖産のフクロフトミミズ属の新種を記載した。また、2016 年に採集された標本に基づき、アメリカ原産のフクロナシツリミミズ Bimastos parvus (Eisen, 1874) と東南アジア原産のフィリピンミミズ Pithemera bicincta (Perrier, 1875) を沖縄県からの初記録として報告した。
著者
ブレクモア ロバート J
出版者
Kanagawa Prefectural Museum of Natural History (Kanagawa Prefectural Museum)
雑誌
神奈川県立博物館研究報告(自然科学) (ISSN:04531906)
巻号頁・発行日
vol.2019, no.48, pp.55-60, 2019 (Released:2019-09-01)

ヤマトミミズ Amynthas japonicus (Horst, 1883) は、1820 年代収集されたシーボルトのコレクションに基づき記載された日本在来のミミズ3 種のうちの1 種である。ヤマトミミズ以外の2種は比較的よく知られていて、現在の分布もよく判っているのに対して、ヤマトミミズは初出以降、全く記録されていない。タイプ産地と考えられる長崎で採集を試みたが、ヤマトミミズを採集することはできなかった。これに加えて既存の調査結果を精査した結果、ヤマトミミズはほぼ200 年もの間にわたって記録がなく、非常に珍しい種類であるかあるいはおそらく絶滅してしまったということが示唆された。現在、ヤマトミミズはIUCN レッドリストでは「DD データ不足」(“絶滅した可能性あり”)と位置づけられているが、これは「EX 絶滅」と再位置づけするべきと考えられる。本種は、記録に基づけば、日本からの最初のミミズの絶滅種であり、無脊椎動物としても2 番目の絶滅種と考えられる。本稿では、最新の情報に基づく現在の日本のミミズの分類のチェックリストを付記した。
著者
渡辺 恭平
出版者
Kanagawa Prefectural Museum of Natural History (Kanagawa Prefectural Museum)
雑誌
神奈川県立博物館研究報告(自然科学) (ISSN:04531906)
巻号頁・発行日
vol.2020, no.49, pp.29-66, 2020 (Released:2020-03-31)

日本産トガリヒメバチ亜科の12 属について、分類学的および動物地理学的記録を報告した。12 新種、ヤマトクロトガリヒメバチAritranis kuro sp. nov.、アナアキトガリヒメバチBuathra nipponica sp. nov.、ダイダイトガリヒメバチCryptus daidaigaster sp. nov.、オオツヤトガリヒメバチGlabridorsum japonicum sp. nov.、アマノトガリヒメバチGotra elegans sp. nov.、アショロトガリヒメバチHoplocryptus ashoroensis sp. nov.、キタトガリヒメバチH. ezoensis sp. nov.、セマルトガリヒメバチH. intermedius sp. nov.、ホクリクトガリヒメバチH. japonicus sp. nov.、ハネモントガリヒメバチH. maculatus sp. nov.、イズトガリヒメバチH. toshimensis sp. nov.、ヒゲジロマルムネトガリヒメバチTrychosis breviterebratus sp. nov. を記載し、学名と標準和名を命名した。ユウヤケトガリヒメバチHylophasma luica Sheng, Li & Wang, 2019 とツシマトガリヒメバチPicardiella melanoleuca (Gravenhorst, 1829) を日本から新たに記録した。前者は属レベルでも日本新産である。チャハマキトガリヒメバチIschnus homonae (Sonan, 1930) の属を記載時の所属であるGambrus に戻し、未知であったオスも含めて再記載を行い、本州と伊豆大島、八丈島、対馬から新たに記録した。九州からのみ知られていたミノウスバトガリヒメバチAgrothereutes minousubae Nakanishi, 1965 を本州と四国から新たに記録した。キスジトガリヒメバチCaenocryptoides convergens Momoi, 1966 のオスを新たに記載した。国内では北海道からのみ知られていたダイアナトガリヒメバチCr. dianae を本州から新たに記録した。ムネアカトガリヒメバチHo. pini の色彩変異を整理し、未知であったオスと併せて再記載を行い、三宅島、四国、九州および屋久島から新たに記録した。従来奄美大島で得られたホロタイプしか知られていなかったスミヨウトガリヒメバチHoplocryptus sumiyona Uchida, 1956 の2 個体目となる個体を徳之島から発見して報告した。Caenocryptoides、Cryptus、Gambrus、Gotra、Hoplocryptus、Picardiella、Trychosis の7 属について日本産種への検索表を提供した。