著者
池亀 和博
出版者
The Japan Society for Hematopoietic Stem Cell Transplantation
雑誌
日本造血細胞移植学会雑誌 (ISSN:21865612)
巻号頁・発行日
vol.2, no.4, pp.94-100, 2013 (Released:2013-10-29)
参考文献数
34

HLA不適合移植(ハプロ移植)は,そのレジメンによって移植の様相は異なってくる。まず海外のハプロ移植として,1)in vitroでのT細胞除去,2)high dose ATG,3)post-transplant cyclophosphamide を紹介する。報告によればGVHDは十分にコントロールされ,今後一般臨床として普及することが期待される一方,GVL効果は未知数であり,主たる適応は寛解期の疾患である。一方本邦では,非寛解期や移植後再発に対して,ハプロ移植に期待する傾向がある。我々が行っているステロイドを用いたハプロ移植もその一つであり,最近はケモカイン阻害をrationaleとしている。またハプロ移植ではGVHDが重篤化しやすいため,様々なGVHD治療を試みる機会は多い。本稿ではサイモグロブリン,mycophenolate mofetil,infliximab,経口Beclomethasone dipropionate,mesenchimal stromal cellについて,自らの印象を含めて記載した。
著者
高見 昭良
出版者
The Japan Society for Hematopoietic Stem Cell Transplantation
雑誌
日本造血細胞移植学会雑誌 (ISSN:21865612)
巻号頁・発行日
vol.2, no.3, pp.61-69, 2013 (Released:2013-07-19)
参考文献数
66
被引用文献数
2 2

同種造血幹細胞移植後ドナー血液細胞の生着不全は稀ながら重大合併症であり,早期に致死的経過をたどる恐れがある。サルベージ療法として,前処置後の再移植に加え,単純幹細胞輸注や造血因子,免疫抑制の調整,ドナーリンパ球輸注などの治療が試みられてきたが,治療成績は芳しくなかった。最近安全で効果的な再移植法が開発され,注目を集めている。本項では,生着不全の診断,予後,治療法を中心にこれまでの報告をまとめた。
著者
金 成元
出版者
The Japan Society for Hematopoietic Stem Cell Transplantation
雑誌
日本造血細胞移植学会雑誌 (ISSN:21865612)
巻号頁・発行日
vol.3, no.4, pp.105-113, 2014 (Released:2014-10-15)
参考文献数
50
被引用文献数
1 1

造血幹細胞移植患者は骨髄抑制,免疫抑制に加え,消化管毒性・合併症による経口摂取制限や腸管からの吸収障害を来し,異化が亢進するため,適切な栄養管理を受けなければ,容易に低栄養となり,感染症や臓器障害などの合併症を招く。各移植施設の栄養サポートの基本方針のもと,全ての移植患者に対し,栄養アセスメントと個別の栄養サポートを実施すべきである。Bacterial translocationに関連した敗血症を防ぎ,消化管機能を早期に回復させるため,安易に禁食にせず,低微生物食による経口栄養サポートをなるべく続けるべきである。経口摂取量の不足を経静脈栄養によって補うことが基本的な栄養学的介入となる。近年,経腸栄養の導入も増加している。いずれにせよ,抗酸化物質,グルタミン,脂肪酸,グルコースといった重要な栄養素を適切に利用すべきである。栄養アセスメントと栄養学的介入は,移植を成功に導く重要な要素である。
著者
前川 隆彰 武 純也 河村 俊邦 堀内 俊克 加藤 章一郎 彦田 玲奈 山村 武史 渡邉 純一 小林 彩香 小林 真一 佐藤 謙 木村 文彦
出版者
The Japan Society for Hematopoietic Stem Cell Transplantation
雑誌
日本造血細胞移植学会雑誌 (ISSN:21865612)
巻号頁・発行日
vol.3, no.4, pp.114-119, 2014 (Released:2014-10-15)
参考文献数
15

HLA一致非血縁ドナーより同種骨髄移植を受けた46歳の原発性骨髄線維症の男性。移植後の血小板数は3×104/μl台で安定していたが,移植後199日目に感染や慢性移植片対宿主病(GVHD)を伴わず,急性の経過で0.7×104/μlまで低下した。好中球減少や貧血は認めず,末梢血のキメリズム解析では完全ドナー型を維持しており,二次性の生着不全は否定された。脾腫の増大も認めなかった。血小板輸血に反応せず,抗HLA抗体は陰性であったが,抗GPIIb/IIIa抗体が検出された。PAIgGの上昇も認め,免疫性血小板減少症(ITP)と診断した。prednisolone 1mg/kgで治療を開始し,治療開始7日目より血小板数が増加した。同種移植後のITPの多くはGVHD等が関与しており,しばしば治療抵抗性である。本症例は他の免疫反応を伴わず治療反応性も良好であった。病態を検討する上で重要な症例と考えたため,文献的考察を加え報告する。