著者
関口 敦 曾田 治男 大木 康則 樺澤 寛二 吉田 譲 森田 高志 笹川 繁 佐藤 智明 見目 恭一
出版者
The Japanese Society of Extra-Corporeal Technology in Medicine
雑誌
体外循環技術 (ISSN:09122664)
巻号頁・発行日
vol.25, no.1, pp.53-56, 1998

当院における過去4年間の機器トラブル1,409件を検討した。機器は心電図モニター190台,輸液ポンプ140台,シリンジポンプ150台,パルスオキシメータ61台。修理内容の内訳は,非故障が303件(21.5%),院内修理が689件(48.9%),メーカー修理が417件(29.6%)であった。年別のメーカー修理の比率は,1994年度48.6%,1995年度34.2%,1996年度20.0%,1997年度27.6%であった。修理1件当たりの平均ダウンタイム日数は,心電図モニター13.1日,輸液ポンプ37.6日,シリンジポンプ34.4日,パルスオキシメータ17 .4日で,ダウンタイム率2.9%であった。トラブルの約46%が現場スタッフの不適切な使用方法に由来していた。看護婦への機器教育に力を入れているが,不適切な使用方法に由来するトラブルが減少せず,操作未熟が16.0%,破損・紛失が30.5%あった。トラブルを起こさないための対策として,注意喚起だけでなくFool proof的な対策を講じることが今後重要と考えられた。
著者
小林 史枝 武田 正則 佐藤 正暢 山下 好史 杉山 賢司 森田 雅教
出版者
The Japanese Society of Extra-Corporeal Technology in Medicine
雑誌
体外循環技術 (ISSN:09122664)
巻号頁・発行日
vol.24, no.1, pp.59-63, 1997

近年の膜型人工肺は,ハードシェルめ静脈貯血槽との一体型が多く,簡素化されている。しかし,最低貯血量の必要性などにより,人工心肺回路の充填量軽減には限界がある。そこで我々は,低充填量を目的に,静脈血液が貯血槽を経ない遠心ポンプと落差の併用脱血方式の回路を試作し,臨床使用した。脱血回路は,貯血槽から遠心ポンプへの回路の中間へ接続し,主な静脈血は直接遠心ポンプへ流入し,灌流量以外の静脈血は貯血槽の流出口から自然落差により逆流し貯血する。灌流量が不足の場合は,貯血槽から補う方式とした。また,脱血回路にはエアーフィルタを装着し,遠心ポンプへの空気混入を回避した。エアーフィルタは100μmに織ったポリエステルのスクリリーンタイプで,充填量が40mlのものを使用した。このフィルタの性能試験を牛血(Ht=20%)で1分間5mlの空気を4回注入し,フィルタの出口で気泡を検知した結果,40μm以上の気泡は18個で,その内17個が60μm以内で,1個だけ70μmが検知された。この微小気泡は,人工肺出口でも同量が検知されたが,遠心ポンプの拍出には影響なく,最終的には動脈フィルタにおいて全て遮断された。試作回路は充填液量が1,000mlと少なく,脱血回路への空気混入は,エアーフィルタで除去され,弁疾患などの開心術症例にも支障なく使用でき,有用な人工心肺回路であった。
著者
神谷 典男 北本 憲永 西條 幸志 高岡 伸次 鈴木 克尚 鈴木 智代 高柳 綾子 小出 昌秋 野地 智 打田 俊司 石橋 信之
出版者
The Japanese Society of Extra-Corporeal Technology in Medicine
雑誌
体外循環技術 = The journal of extra-corporeal technology (ISSN:09122664)
巻号頁・発行日
vol.29, no.1, pp.65-68, 2002-03-01
被引用文献数
2

【要旨】近年,無輸血開心術は広く行われ,体外循環の血液希釈の影響を最小限に努めるために,各施設では様々な試みがなされている。今回我々は,回路径を可能な限り細くし,回路長の見直しと当施設で考案した体外循環回路組み込みシート(衛生シート)を成人用回路にも応用し,開放および閉鎖型の両回路の低充填化を試みた。その結果,2000年7月までの開放型回路充填量はリザーバレベル200mlの時56kg以上で1,100ml,55kg以下で985mlであったのが,開放型回路では56kg以上で722ml,55kg以下で635mlとなり,症例によっては更に術野側回路を短くすることで565mlとなった。また,閉鎖型回路の充填量はリザーバレベル100mlで780mlとなった。低充填化には閉鎖型の方が理想的と考えていたが,実際は気泡除去能力の高い材料が必要で選択が限られてしまい,結果的に開放型の方が低充填量となった。現段階において低充填化には開放型の方が最適と考えられた。
著者
原 和信 広瀬 聡 上田 彰 栗原 大典 竹井 沙緒梨
出版者
The Japanese Society of Extra-Corporeal Technology in Medicine
雑誌
体外循環技術 = The journal of extra-corporeal technology (ISSN:09122664)
巻号頁・発行日
vol.30, no.1, pp.19-21, 2003-03-01
参考文献数
4
被引用文献数
9

【要旨】CAPIOX-RXの気泡除去能について,生理食塩水または牛血を充填した模擬回路を使用し,一定条件下にて規定量のエアーを注入し,人工肺出口における気泡のサイズ別数量について実験を行い,臨床上危険とされる40μmを中心に検討を行った。生理食塩水では50mL注入も100mL注入も40μmを超える気泡はカウントされず,30μm以下がほとんどであり,カウント数もほぼ同じ結果となった。牛血では30~40μmでは50mL注入が,また10~30μmでは30mL注入のほうが明らかに多くカウントされていた。CAPIOX-RXは50mL注入のエアーに対しても,人工肺内部で微小気泡化しているが,大きな要因として熱交換器との接触,中空糸内で流速度が急激に落ちる,中空糸のレイアウトが編み込み式で中空糸間の隙間が小さいなど,この3点が関与しているものと考えられた。しかし,気泡の大きさは生体への影響が少ないとされる40μm以ドではあるが,その量は大量であり微小気泡であっても血流のうっ滞する場所などではそれが互いに結合し大きな気泡となり得る可能性もある。
著者
神倉 和見 杉浦 辰美 齋藤 康孝 吉田 博明
出版者
The Japanese Society of Extra-Corporeal Technology in Medicine
雑誌
体外循環技術 = The journal of extra-corporeal technology (ISSN:09122664)
巻号頁・発行日
vol.32, no.1, pp.88-89, 2005-03-01

乳児領域で使用可能なプレコネクト回路を使用する機会を得たので報告する。以前より使用していた人工肺(Baby-RX),ハードシェルリザーバー(CX-RR10),動脈フィルター(CXAFO2),器械側,術野側をXコーティング回路6.4mmでプレコネクトし,滅菌されたシールドで術野側と器械側を仕切り,術野に密着することで回路を短くし,初期充填量を少なくすることができた。接続箇所を少なくすることで,体外循環準備時間の短縮,誤接続防止,感染リスクの低減が期待できた。梱包が小さくなり,器材庫の省スペース化,ごみの削減,在庫管理の効率化に有効であった。しかし,器械側シールド内の空間が狭く,操作性向上のためには改良が必要と考えられた。またシールド内の術野回路の位置,取り出し方法にも改良の必要性を認めた。プレコネクト回路シールドパックは待機手術だけでなく,一刻を争う緊急時にも有用であると考えられる。回路径を変更することで乳児だけでなく新生児にも対応できる回路である。
著者
山崎 隆文 菱沼 浩孝 齊藤 建 河瀬 勇 外山 雅章
出版者
The Japanese Society of Extra-Corporeal Technology in Medicine
雑誌
体外循環技術 = The journal of extra-corporeal technology (ISSN:09122664)
巻号頁・発行日
vol.29, no.4, pp.383-386, 2002-12-01
被引用文献数
3

【要旨】All in one system回路(AOS回路)の臨床使用経験と,従来の回路との比較と問題点について報告する。2000年7月~2001年6月までに使用したAOS回路,19例を対象とした。各種データの平均は,年齢66(27~78)歳,体外循環時間148(98~191)分,大動脈遮断時間95(35~163)分,静脈脱血法は陰圧-5~-40mmHg(VAVD)で,陽陰圧に対する安全対策を行った。この回路を使用することにより,各回路の包装状態確認時間,回路接続時間を10~15分短縮できた。また,回路接続に対する煩雑性の改善,操作性向上に繋がり,手術終了後の血液処理,回路破棄が容易になった。問題点としては,Pre connectのため,後付けで脳分離回路が接続不可能であり拡張性が失われた。また,不良回路が発生した場合,高額な負債となる場合もある。回路作製時には,製造会社と密に連絡を取り,回路接続方向,製品の安定供給を求めなければならない。AOS回路は,臨床使用上問題なく,患者の状態に合わせ迅速かつ短時間に回路を作製することが可能である。今後,回路の柔軟性,安全性の確保を考慮し,より効率のよい回路を作製して行くことが今後の課題である。
著者
鈴木 克尚 神谷 典男 西條 幸志 高岡 伸次 栗田 智代 大野 雄三 北本 憲永
出版者
The Japanese Society of Extra-Corporeal Technology in Medicine
雑誌
体外循環技術 = The journal of extra-corporeal technology (ISSN:09122664)
巻号頁・発行日
vol.28, no.4, pp.22-25, 2001-12-01
被引用文献数
7

【要旨】今回,MUF終了後に再循環を行い20分経過した頃,人工肺入口側の圧が上昇し,回路接続が突然はずれた症例を経験した。人工肺の入口部は血液塊で詰まり,静脈リザーバのフィルタ表面および液面と動脈フィルタにも血液塊が大量に形成されていた。MUF終了後から待機循環中の血液塊形成が起こるまで,どのように変化するかヘパリン濃度,使用材料・構造,置換液,血液塊の解析,残血の成分より凝固系,蛋白,血液ガスについて検証した。再現実験を行った結果,血液塊はechinocyte化した赤血球の凝集であった。ヘパリンやヘパリンコーティング材料の使用は無効であった。MUFの残血は赤血球が減少しており,緩衝作用が弱まっていることに加え置換液にアルカリ化剤の含まれたものを使用したことなどから,人工肺によるガス交換で容易にpHの上昇を来したと推測された。MUF施行後の残血成分は通常と異なり,pHが上昇しやすい環境にあり,ガス流量を戻し忘れた際など,容易に凝集することが明らかとなった。
著者
吉田 譲 小塚 アユ子 角田 卓哉 松本 貴澄 関口 敦 石田 徹 新浪 博
出版者
The Japanese Society of Extra-Corporeal Technology in Medicine
雑誌
体外循環技術 = The journal of extra-corporeal technology (ISSN:09122664)
巻号頁・発行日
vol.35, no.2, pp.116-119, 2008-06-01
被引用文献数
2

メインローラーポンプと別ローラーポンプで分離送血を施行した場合に、メイン流量と関係なく、人工肺から空気を引き込まず安全に施行するために、メインポンプを短絡し、リザーバから人工肺に連続的に流量が確保できるシャント回路2種類(1.弁入りシャント;6mmφチューブにディスク型一方向弁を組み入れた回路、2.2本掛けシャント:6mmφチューブのシャント回路と、6mmφチューブにダックビル型一方向弁を組み入れた分離送血回路を、同時に2本掛けした回路)を試作し、空気引き込みの可能性について実験的に検討した。メインポンプを停止し、分離送血ポンプ流量を300~700mL/minと変化させたときの空気引き込みの有無を確認したところ、両シャントとも空気引き込みは認めなかった。弁入りシャントではディスク弁の開放運動が容易で吸引負荷が少ないこと、2本掛けシャントでは流入抵抗のあるダックビル弁を回路内抵抗として組み入れたことで適度な陽圧となり空気引き込みが防げた。シャントに適正な一方向弁を組み入れることで空気の引き込みはなく、臨床で使用できる可能性を認めた。
著者
原田 智昭 小林 広樹 高平 真
出版者
The Japanese Society of Extra-Corporeal Technology in Medicine
雑誌
体外循環技術 = The journal of extra-corporeal technology (ISSN:09122664)
巻号頁・発行日
vol.34, no.1, pp.19-22, 2007-03-01
被引用文献数
1

当院では開心術による空気塞栓低減を目的に心嚢内へ炭酸ガスを吹送している。そこで,模擬胸腔での基礎実験および2006年1月から4月までの成人開心術10症例において,1)炭酸ガスの心嚢内吹送方法,2)心嚢内炭酸ガス濃度測定,3)吹送された炭酸ガスの体外循環への影響を検討した。炭酸ガス吹送方法は,吹送チューブの先端流速を低下させる必要があり心嚢内の炭酸ガス濃度を維持できる十分な吹送流量が必要であると考えられた。炭酸ガス濃度は幾つかの因子によって大きな影響を受けることが確認された。吹送された炭酸ガスの影響を受け,炭酸ガス分圧はベント・サッカー回収血が著しく高値を示し,静脈血よりも人工肺入口血において高値となった。上昇した血中炭酸ガス分圧を補正するためには,人工肺への混合ガス付加量を増加させなければならず,炭酸ガス除去能力の低い人工肺を使用した場合に高炭酸ガス血症を引き起こす危険が示唆された。