著者
平井 晃一 佐々木 章史 近藤 武 秋山 知宏 金内 昭憲 天田 望 斉藤 祐二 中野 清治 高瀬 真一
出版者
一般社団法人 日本体外循環技術医学会
雑誌
体外循環技術 = The journal of extra-corporeal technology (ISSN:09122664)
巻号頁・発行日
vol.40, no.2, pp.149-154, 2013-06-01
参考文献数
19
被引用文献数
1

開心術体外循環中に生じた高カリウム血症(K=5.5mmol/L以上)を補正する手段として、体外循環中でも簡便に施行できる落差灌流式血液透析濾過法を考案した。体外循環中に高カリウム血症を呈し本法を施行した連続11症例(男:女=2:9、平均年齢63.6&pm;12.9歳)を対象とした。本法では輸血セット(内径3.0mm)を用い、血液濾過用補充液(サブラッド<sup>&reg;</sup>BSG)を落差により血液と向流になるように血液濃縮器(MAQUET BC140plus<sup>&reg;</sup>)ホローファイバー外側を灌流させた。総落差は150cm、血液流量は400mL/minとした。体外循環中の心筋保護液注入によるカリウム負荷量は69.0&pm;33.1mmolで、照射赤血球濃厚液輸血量は5.5&pm;3.6単位であった。血中カリウム濃度の最高値は6.41&pm;0.76mmol/Lであったが、本法の施行により体外循環離脱までに4.82&pm;0.22mmol/Lと有意に(p<0.0001)低下した。また体外循環開始直後と離脱直前ではナトリウム、カリウム、水素イオン濃度指数、重炭酸イオン濃度に有意差を認めなかった。本法は体外循環中に生じた高カリウム血症の補正に有用であった。
著者
神谷 典男 北本 憲永 西條 幸志 高岡 伸次 鈴木 克尚 鈴木 智代 高柳 綾子 小出 昌秋 野地 智 打田 俊司 石橋 信之
出版者
The Japanese Society of Extra-Corporeal Technology in Medicine
雑誌
体外循環技術 = The journal of extra-corporeal technology (ISSN:09122664)
巻号頁・発行日
vol.29, no.1, pp.65-68, 2002-03-01
被引用文献数
2

【要旨】近年,無輸血開心術は広く行われ,体外循環の血液希釈の影響を最小限に努めるために,各施設では様々な試みがなされている。今回我々は,回路径を可能な限り細くし,回路長の見直しと当施設で考案した体外循環回路組み込みシート(衛生シート)を成人用回路にも応用し,開放および閉鎖型の両回路の低充填化を試みた。その結果,2000年7月までの開放型回路充填量はリザーバレベル200mlの時56kg以上で1,100ml,55kg以下で985mlであったのが,開放型回路では56kg以上で722ml,55kg以下で635mlとなり,症例によっては更に術野側回路を短くすることで565mlとなった。また,閉鎖型回路の充填量はリザーバレベル100mlで780mlとなった。低充填化には閉鎖型の方が理想的と考えていたが,実際は気泡除去能力の高い材料が必要で選択が限られてしまい,結果的に開放型の方が低充填量となった。現段階において低充填化には開放型の方が最適と考えられた。
著者
和田 英喜 宇井 雄一 田中 佑佳 山本 英樹 丸山 仁実 林 哲也 尾嶋 良恵 木下 昌樹 新田 功児 西分 和也 石原 均
出版者
一般社団法人 日本体外循環技術医学会
雑誌
体外循環技術 = The journal of extra-corporeal technology (ISSN:09122664)
巻号頁・発行日
vol.29, no.1, pp.56-58, 2002-03-01
被引用文献数
3

【要旨】新たに開発された,アイシン社製IABP装置,CORART BP21(BP21)を使用する機会を得たので,当院で使用しているデータスコープ社製System97e(97e),System98(98)との比較も含め,シミュレーション回路による,応答性・不整脈への追従性の実験および臨床使用で総合的に評価した。BP21は98と同様に拡張・収縮に要する時間が短く,高心拍への追従性が良く,R波デフレーションを選択するのにも十分な性能を有していると考えられた。カテ先センサー付のP1バルーンを使用した際は,センサーオート機能で優れた不整脈への追従性を示した。また搬送時の移動性に優れ,新しく開発されたバックアップモードは臨床上の有効性も示唆された。
著者
山崎 隆文 菱沼 浩孝 齊藤 建
出版者
一般社団法人 日本体外循環技術医学会
雑誌
体外循環技術 = The journal of extra-corporeal technology (ISSN:09122664)
巻号頁・発行日
vol.29, no.3, pp.298-303, 2002-09-01
参考文献数
6
被引用文献数
1

今回,小型軽量の血液ガス電解質アナライザーラジオメーター社製ABL77(ABL77)を使用する機会を得た。2001年2~4月までの心臓血管手術19例を対象に, ABL77とバイエル社製850と各種実測値データ(pH, PO2, PCO2, Na+, K+, Ca2+)を比較検討した。 Hctは, Sysmex社製K-4500と遠心分離器KUBOTA KH-120 IIで比較した。その結果, pHはy=0.92x+0.61, r=0.96, PCO2はy=0.91x+3.51, r=0.92, PO2はy=0.92x+6.18, r=0.94, Na+はy=0.78x+29.06, r=0.71, K+はy=0.90x+29.06, r=0.97, Ca2+はy=0.92x+0.14, r=0.93, Hctはy=1.06x+2.06, r=0.97, y=1.11x-3.35, r=0.97であった。 ABL77は,センサー部分がカートリッジ形式になっており,血液流路サーキットが短く,1検体の測定時間が短いうえに連続測定が可能である。この電極およびキャルパックを交換する場合には,バーコード認識で,使用期限などの機器認識が簡便である。欠点としては,センサー不良が生じた場合に,センサー電極が個々にメンテナンスができないため,センサーカートリッジをすべて交換しなければならない。使用期限があるため,その期限までに使用されなければ無駄となる。 ABL77を臨床使用し各測定データの結果, Na+で若干低値であったが,各項目高い相関を示した。小型軽量のため,人工心肺中の血液ガス,電解質分析装置として十分に活用できると考えられる。今後の課題として,センサーカートリッジの更なる安定性が求められる。
著者
吉田 譲 小塚 アユ子 佐藤 智明 見目 恭一 許 俊鋭
出版者
一般社団法人 日本体外循環技術医学会
雑誌
体外循環技術 = The journal of extra-corporeal technology (ISSN:09122664)
巻号頁・発行日
vol.32, no.1, pp.29-36, 2005-03-01
参考文献数
10
被引用文献数
2

JMS社製ターボ血液ポンプMixflow(JMF)と大日本インキ化学工業-Edwards Lifesciences社製人工肺Platinum Cube NCVC6000(DEPC)の組み合わせにより,新たに長期間安定使用できる流量補助循環(PCPS)システムを構築するため,PCPSでの導入前に,開心術にてヘパリンコート回路と組み合わせて使用した。JMFの高回転仕様,DEPCの非対称膜それぞれの特性の確認を中心に評価した結果,血液データにおける術前/術後の血小板の減少率が少ない傾向を示した以外に差はなく,エア抜きも炭酸ガス置換と落差充填により差はなかった。それらの結果を基に,充填時間短縮のためにエア抜き用の取り外し式フィルタを回路内に設けて作製した新システムをPCPSで臨床使用した。その結果,従来に比し,同一ポンプまたは人工肺での長期使用(最長19日)が可能であった。交換したJMF,DEPC双方に血栓がみられたが,肺のプラズマリークもなく長期補助に有用であると考えられた。血栓発生時期や酸素加調整法の把握がより重要で,同時にポンプヘッド固定の安全性やバッテリ消耗回路の改善が望まれる。
著者
原 和信 広瀬 聡 上田 彰 栗原 大典 竹井 沙緒梨
出版者
The Japanese Society of Extra-Corporeal Technology in Medicine
雑誌
体外循環技術 = The journal of extra-corporeal technology (ISSN:09122664)
巻号頁・発行日
vol.30, no.1, pp.19-21, 2003-03-01
参考文献数
4
被引用文献数
9

【要旨】CAPIOX-RXの気泡除去能について,生理食塩水または牛血を充填した模擬回路を使用し,一定条件下にて規定量のエアーを注入し,人工肺出口における気泡のサイズ別数量について実験を行い,臨床上危険とされる40μmを中心に検討を行った。生理食塩水では50mL注入も100mL注入も40μmを超える気泡はカウントされず,30μm以下がほとんどであり,カウント数もほぼ同じ結果となった。牛血では30~40μmでは50mL注入が,また10~30μmでは30mL注入のほうが明らかに多くカウントされていた。CAPIOX-RXは50mL注入のエアーに対しても,人工肺内部で微小気泡化しているが,大きな要因として熱交換器との接触,中空糸内で流速度が急激に落ちる,中空糸のレイアウトが編み込み式で中空糸間の隙間が小さいなど,この3点が関与しているものと考えられた。しかし,気泡の大きさは生体への影響が少ないとされる40μm以ドではあるが,その量は大量であり微小気泡であっても血流のうっ滞する場所などではそれが互いに結合し大きな気泡となり得る可能性もある。
著者
神倉 和見 杉浦 辰美 齋藤 康孝 吉田 博明
出版者
The Japanese Society of Extra-Corporeal Technology in Medicine
雑誌
体外循環技術 = The journal of extra-corporeal technology (ISSN:09122664)
巻号頁・発行日
vol.32, no.1, pp.88-89, 2005-03-01

乳児領域で使用可能なプレコネクト回路を使用する機会を得たので報告する。以前より使用していた人工肺(Baby-RX),ハードシェルリザーバー(CX-RR10),動脈フィルター(CXAFO2),器械側,術野側をXコーティング回路6.4mmでプレコネクトし,滅菌されたシールドで術野側と器械側を仕切り,術野に密着することで回路を短くし,初期充填量を少なくすることができた。接続箇所を少なくすることで,体外循環準備時間の短縮,誤接続防止,感染リスクの低減が期待できた。梱包が小さくなり,器材庫の省スペース化,ごみの削減,在庫管理の効率化に有効であった。しかし,器械側シールド内の空間が狭く,操作性向上のためには改良が必要と考えられた。またシールド内の術野回路の位置,取り出し方法にも改良の必要性を認めた。プレコネクト回路シールドパックは待機手術だけでなく,一刻を争う緊急時にも有用であると考えられる。回路径を変更することで乳児だけでなく新生児にも対応できる回路である。
著者
山崎 隆文 菱沼 浩孝 齊藤 建 河瀬 勇 外山 雅章
出版者
The Japanese Society of Extra-Corporeal Technology in Medicine
雑誌
体外循環技術 = The journal of extra-corporeal technology (ISSN:09122664)
巻号頁・発行日
vol.29, no.4, pp.383-386, 2002-12-01
被引用文献数
3

【要旨】All in one system回路(AOS回路)の臨床使用経験と,従来の回路との比較と問題点について報告する。2000年7月~2001年6月までに使用したAOS回路,19例を対象とした。各種データの平均は,年齢66(27~78)歳,体外循環時間148(98~191)分,大動脈遮断時間95(35~163)分,静脈脱血法は陰圧-5~-40mmHg(VAVD)で,陽陰圧に対する安全対策を行った。この回路を使用することにより,各回路の包装状態確認時間,回路接続時間を10~15分短縮できた。また,回路接続に対する煩雑性の改善,操作性向上に繋がり,手術終了後の血液処理,回路破棄が容易になった。問題点としては,Pre connectのため,後付けで脳分離回路が接続不可能であり拡張性が失われた。また,不良回路が発生した場合,高額な負債となる場合もある。回路作製時には,製造会社と密に連絡を取り,回路接続方向,製品の安定供給を求めなければならない。AOS回路は,臨床使用上問題なく,患者の状態に合わせ迅速かつ短時間に回路を作製することが可能である。今後,回路の柔軟性,安全性の確保を考慮し,より効率のよい回路を作製して行くことが今後の課題である。
著者
鈴木 克尚 神谷 典男 西條 幸志 高岡 伸次 栗田 智代 大野 雄三 北本 憲永
出版者
The Japanese Society of Extra-Corporeal Technology in Medicine
雑誌
体外循環技術 = The journal of extra-corporeal technology (ISSN:09122664)
巻号頁・発行日
vol.28, no.4, pp.22-25, 2001-12-01
被引用文献数
7

【要旨】今回,MUF終了後に再循環を行い20分経過した頃,人工肺入口側の圧が上昇し,回路接続が突然はずれた症例を経験した。人工肺の入口部は血液塊で詰まり,静脈リザーバのフィルタ表面および液面と動脈フィルタにも血液塊が大量に形成されていた。MUF終了後から待機循環中の血液塊形成が起こるまで,どのように変化するかヘパリン濃度,使用材料・構造,置換液,血液塊の解析,残血の成分より凝固系,蛋白,血液ガスについて検証した。再現実験を行った結果,血液塊はechinocyte化した赤血球の凝集であった。ヘパリンやヘパリンコーティング材料の使用は無効であった。MUFの残血は赤血球が減少しており,緩衝作用が弱まっていることに加え置換液にアルカリ化剤の含まれたものを使用したことなどから,人工肺によるガス交換で容易にpHの上昇を来したと推測された。MUF施行後の残血成分は通常と異なり,pHが上昇しやすい環境にあり,ガス流量を戻し忘れた際など,容易に凝集することが明らかとなった。
著者
吉田 譲 小塚 アユ子 角田 卓哉 松本 貴澄 関口 敦 石田 徹 新浪 博
出版者
The Japanese Society of Extra-Corporeal Technology in Medicine
雑誌
体外循環技術 = The journal of extra-corporeal technology (ISSN:09122664)
巻号頁・発行日
vol.35, no.2, pp.116-119, 2008-06-01
被引用文献数
2

メインローラーポンプと別ローラーポンプで分離送血を施行した場合に、メイン流量と関係なく、人工肺から空気を引き込まず安全に施行するために、メインポンプを短絡し、リザーバから人工肺に連続的に流量が確保できるシャント回路2種類(1.弁入りシャント;6mmφチューブにディスク型一方向弁を組み入れた回路、2.2本掛けシャント:6mmφチューブのシャント回路と、6mmφチューブにダックビル型一方向弁を組み入れた分離送血回路を、同時に2本掛けした回路)を試作し、空気引き込みの可能性について実験的に検討した。メインポンプを停止し、分離送血ポンプ流量を300~700mL/minと変化させたときの空気引き込みの有無を確認したところ、両シャントとも空気引き込みは認めなかった。弁入りシャントではディスク弁の開放運動が容易で吸引負荷が少ないこと、2本掛けシャントでは流入抵抗のあるダックビル弁を回路内抵抗として組み入れたことで適度な陽圧となり空気引き込みが防げた。シャントに適正な一方向弁を組み入れることで空気の引き込みはなく、臨床で使用できる可能性を認めた。
著者
原田 智昭 小林 広樹 高平 真
出版者
The Japanese Society of Extra-Corporeal Technology in Medicine
雑誌
体外循環技術 = The journal of extra-corporeal technology (ISSN:09122664)
巻号頁・発行日
vol.34, no.1, pp.19-22, 2007-03-01
被引用文献数
1

当院では開心術による空気塞栓低減を目的に心嚢内へ炭酸ガスを吹送している。そこで,模擬胸腔での基礎実験および2006年1月から4月までの成人開心術10症例において,1)炭酸ガスの心嚢内吹送方法,2)心嚢内炭酸ガス濃度測定,3)吹送された炭酸ガスの体外循環への影響を検討した。炭酸ガス吹送方法は,吹送チューブの先端流速を低下させる必要があり心嚢内の炭酸ガス濃度を維持できる十分な吹送流量が必要であると考えられた。炭酸ガス濃度は幾つかの因子によって大きな影響を受けることが確認された。吹送された炭酸ガスの影響を受け,炭酸ガス分圧はベント・サッカー回収血が著しく高値を示し,静脈血よりも人工肺入口血において高値となった。上昇した血中炭酸ガス分圧を補正するためには,人工肺への混合ガス付加量を増加させなければならず,炭酸ガス除去能力の低い人工肺を使用した場合に高炭酸ガス血症を引き起こす危険が示唆された。