著者
中村 浩二
出版者
The Society of Exploration Geophysicists of Japan
雑誌
物理探査 (ISSN:09127984)
巻号頁・発行日
vol.60, no.5, pp.367-374, 2007

緊急地震速報は,震源の近くの観測点のデータを用いて,震源とマグニチュードを高速で決定し,強震動の分布を推定し,その情報を利用者へ即座に伝える。震源からある程度はなれたところにいる人には,強い揺れが来る前にある程度の時間的余裕(数秒から数十秒)をもって警報することが可能である。震源の即時決定のためには,利用できる観測点の数によってB-Δ法,テリトリー法(1~2点),グリッドサーチ法(3~5点)などの方法を使う一方で,防災科学研究所が開発した着未着法も活用している。地震のマグニチュードは,P波段階でマグニチュードが推定できるようにP波マグニチュードの式を使い,時間とともに全ての波を使ったマグニチュードの式に切り替える方式になっている。各地の最大震度の推定には,震源とマグニチュードから基準基盤の最大速度振幅を求める経験式を使い,それから,地表面の最大速度振幅と最大震度を推定する経験式を使用する。<br> 緊急地震速報の一部の地域で試験的な運用が始まった平成16年2月25日から平成19年4月30日までに,1449例の緊急地震速報が提供された。このうち,雷や人工ノイズなどによる誤報は29例あったが,2観測点以上を使った緊急地震速報では誤報はなかった。緊急地震速報で最大予測震度5弱以上を報じた地震(28例)について,最大震度5弱以上を観測したものが15例,その他の9例については最大震度4 ,4例については最大震度3を観測している。<br>
著者
朴 進午 鶴 哲郎 野 徹雄 瀧渾 薫 佐藤 壮 金田 義行
出版者
The Society of Exploration Geophysicists of Japan
雑誌
物理探査 (ISSN:09127984)
巻号頁・発行日
vol.61, no.3, pp.231-241, 2008
被引用文献数
8

IODP南海トラフ地震発生帯掘削計画として紀伊半島沖東南海地震(マグニチュード8.1)の震源域掘削が2007年秋頃から始まる。それに先立ち,我々は2006年3月,紀伊半島南東沖南海トラフ付近における地殻構造の高精度イメージングのため,深海調査研究船「かいれい」のマルチチャンネル反射法地震探査システムを用いた高分解能3次元反射法地震探査を行った(KR06-02航海)。「かいれい」3次元探査域は3ヶ所の掘削サイトをカバーしており,本調査には長さ約5kmのストリーマーケーブル(204チャンネル)と,約100 m 離れた2式の震源アレイを用いた。高分解能調査のため用いた各々の震源アレイはGガン2基とGIガン1基の組合せである。特に,ストリーマーケーブル1本のみを曳航する本調査では,左右震源アレイを交互に発震するFlip-flop方式を導入することで,1 sail line につき2 CMP line のデータ取得が可能となり,データ取得作業の効率が倍増した。最終的な3次元データ取得範囲は3.5×52 km となった。データ記録長は10秒,サンプリング間隔は1 msec である。また,震源アレイとストリーマーケーブルの曳航深度は,それぞれ5mと8mに制御した。発震点および受振点の測位のため, SPECTRAとREFLEXを使用した。調査期間中に船上QCなどの結果,良好なデータ取得が確認できた。調査終了後,陸上での3次元ビンニングなどの前処理を終えたCMPデータを用い,3次元重合前深度マイグレーション処理を行った。最終的に,3次元区間速度モデルと高分解能の地殻構造イメージが得られた。速度不確定性を推定するために行った3D PSDM速度テストの結果より,最終速度モデルは,約6kmの深度において最大±5%の速度不確定性を持つことがわかった。得られた3次元地殻構造の解釈の結果,南海トラフ底で沈み込んでいる,3つの音響ユニットから成る四国海盆堆積層の層厚変化が明らかとなった。特に,最上位のユニットCは,トラフ底から陸側への有意義な層厚増加や背斜構造によって特徴付けられ,また,ユニットCの中央には強振幅の反射面Rの存在が認められる。この反射面Rは斜めスリップ断層面として解釈され,このスラスト断層運動によって,ユニットCが重なり,陸側へ厚くなっていることが考えられる。<br>
著者
中塚 正 大熊 茂雄
出版者
The Society of Exploration Geophysicists of Japan
雑誌
物理探査 = BUTSURI-TANSA Geophysical Exploration (ISSN:09127984)
巻号頁・発行日
vol.58, no.5, pp.451-459, 2005-10-01
参考文献数
4
被引用文献数
3 1

A helicopter-borne magnetic survey system was developed in use of a nose boom magnetic sensor, which enables safe and practical operation of low-altitude high-resolution survey even in mountainous regions of very steep topography and high elevation. The system consists mainly of airborne Cesium magnetometer, 3-axis fluxgate magnetometer, GPS receiver, navigation unit, data-acquisition PC, etc., incorporating with other equipment on the ground including base station magnetometer and reference station GPS receiver.<br>The nose boom magnetic sensor is situated rather near the helicopter body and cannot be free from its magnetic noise, though the boom itself is made non-magnetic. The 3-axis fluxgate magnetometer is the equipment to compensate aircraft's magnetic noise field. Theoretical consideration for passive magnetic compensation and the method of actual data processing for it are discussed. Then the software for magnetic compensation was developed and applied to the data of actual verification survey, and the procedure was proven to accomplish post-flight magnetic compensation properly.
著者
半田 駿 板井 秀典 吉田 雄司
出版者
The Society of Exploration Geophysicists of Japan
雑誌
物理探査 (ISSN:09127984)
巻号頁・発行日
vol.61, no.3, pp.191-199, 2008

電磁探査では地下空洞は探査困難な対象の一つであるが,鹿児島県では,崩壊の恐れがあるにもかかわらず位置や構造が正確には把握できていない地下壕が多数存在する。我々は,周波数1k~100kHzの高周波CSMT装置を用いて,これらの調査を実施している。その際,水平ループアンテナを用いて,ニアフィールド遷移域で探査を実施したところ,空洞の直上で,MT法で予測される値より大きな見掛比抵抗値が観測された。本研究ではこの現象を確認し,その原因を明らかにするために,差分法を用いた水平ループアンテナ(鉛直双極子磁場)による地下空洞(トンネル)の3次元電磁応答を計算した。得られた結果は次の通りである。<br>  1.トンネルによるニアフィールド遷移域での最大見掛比抵抗増加率は,ファーフィールド域に比べて大きくなる。<br>  2.遷移域での最大見掛比抵抗増加率は,トンネルの深さ(土被深度)によって決定され,土被深度がスキンデプス以下では周波数,大地の比抵抗値にほとんど依存しない。<br>  3.この増加率は土被深度がスキンデプス程度以上になると減少するが,ファーフィールド域に比べると緩やかである。そのため,ニアフィールド遷移域では広帯域で,トンネルによる高い見掛比抵抗値が観測できる。<br>  このような現象は,ニアフィールド遷移域で見掛比抵抗の増大がない鉛直ループアンテナ(水平双極子磁場)では生じず,水平ループアンテナ特有のものである。また,水平ループアンテナのこのような性質は,電磁探査では困難とされる地下空洞検出に効果的である。<br>